世界遺産/世界遺産関連情報

あの世界遺産も見納め?消えゆく26遺産 前編(4ページ目)

氷河や凍土が溶け、森林や草原が砂漠化、都市や砂漠を豪雨が襲い、サンゴやマングローブが消え台風が多発……2007年4月にユネスコが発表した気候変動の影響を受ける世界遺産リストとその驚くべき内容を紹介する!

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

3.温暖化の被害を受ける陸上生物の世界遺産

ケルプ
海と陸がお互い影響しあうケープ植物区のケルプ林。
温暖化といっても地球規模で見た場合、寒冷化する地域もあったり、急激な温暖化をする地域もある。こうした気候変動は降水量の変化などをもたらし、環境を変え、生態系を破壊し、生態系の破壊がさらなる環境変化を呼びおこし、負の連鎖を引き起こす。

ケープ植物区保護地域群はアフリカの0.5%のほどの土地にアフリカの20%近くの植物種を抱えるホット・スポットだ。温暖化の影響でここ2万年見られなかったような気温と乾燥を経験しており、2050年までに最大65%のエリアが失われる可能性を指摘している。生態系が変わるのはもちろん、外来種の襲来や水不足、火事なども問題になっている。

火事が多いユーカリの森で名高いグレーター・ブルー・マウンテンズではその火事が異常に多発。ユーカリは火事を利用することで新しいユーカリを育てるが、火事の件数は年々増えており、ユーカリの再生が間に合わないほどになりつつあるという。

地表の10%近くを占め、多様な生物を育むだけでなく、地球の炭素循環に大きな役割りを果たしている湿地帯。イシュケル国立公園では気温上昇と海水面上昇が見られ、そのためか降水量が減り、湿地も減少している。ここはかつてダム建築が降水量の減少をもたらし、それが渡り鳥の減少につながったことが確認されている。同様の影響が懸念されている。

クイーンズランドの湿潤熱帯地域も同様で、あと3.5度の気温上昇で壊滅的な打撃を受けると見積もられており、この50~100年で多くの生物の絶滅が危惧されている。実際グアナカステ保全地域では幾種類かの蛙の絶滅が確認されている。

■温暖化の被害を受ける陸上生物の世界遺産5件
  • イシュケル国立公園(チュニジア):1980年、自然遺産(x)
  • クイーンズランドの湿潤熱帯地域(オーストラリア):1988年、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
  • グアナカステ保全地域(コスタリカ):1999、2004年拡大、自然遺産(ix)(x)
  • グレーター・ブルー・マウンテンズ地域(オーストラリア):2000年、自然遺産(ix)(x)
  • ケープ植物区保護地域群(南アフリカ):2004年、自然遺産(ix)(x)



  • なお、後編では、温暖化の被害を受ける考古学遺跡の世界遺産4件&歴史都市・集落の世界遺産8件、総まとめ、ユネスコやIPCCへのリンクなどをお伝えする。

    【関連記事】
  • あの世界遺産も見納め?消えゆく26遺産 後編
    • 前のページへ
    • 1
    • 2
    • 3
    • 4
    ※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
    ※海外を訪れる際には最新情報の入手に努め、「外務省 海外安全ホームページ」を確認するなど、安全確保に十分注意を払ってください。

    あわせて読みたい

    あなたにオススメ

      表示について

      カテゴリー一覧

      All Aboutサービス・メディア

      All About公式SNS
      日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
      公式SNS一覧
      © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます