トム・クルーズが過去作品の中で最も愛した一つと名を挙げる『ザ・エージェント』。これが出世作となったレニー・ゼルウィガーの初々しい演技をはじめ、スーパーハイテンションな男を演じたキューバ・グッディングJrや、その誇り高き妻を演じたレジーナ・キングの際立つ存在感も作品のみどころですが、後の映画やテレビドラマでも引用されるほどの名セリフを数々生み出した名作としても見逃せない一作です。

金を見せろ!

「利益を追うだけが仕事ではない」と気づいたスポーツエージェント、ジェリー・マグワイア。思いの丈を綴った提案書を会社に提出したジェリーでしたが、利益重視の会社からは「戦力外」と見なされ、あっけなく解雇されてしまいます。
Jerry Maguire(96)
ザ・エージェント
独立を決意し、一分一秒を争う中で会社とスポーツ選手の契約争奪戦を繰り広げるジェリー。ところが、とある選手にかけた電話が長引き、業を煮やします。
電話の相手は、アメリカン・フットボール選手のロッド。「What can I do for you?」というジェリーの問いに、彼の愛する言葉を叫べば契約を続けると条件を出します。その言葉は、ご存知…

Show me the money!
金を見せろ!

あからさまな表現に戸惑うジェリーをよそに、ビートに乗せて何度も「Show me the money!」を連呼するロッド。「もっと心を込めて!」、「もっと大きな声で!」と何度もダメだしを食らって一線を越えたジェリーは、オフィスの一画で同僚の白い目に囲まれながら「金を見せろ!」と叫び続けるのでした。

君が僕を完全にする

在籍選手はロッド一人―。最悪のかたちでスタートをきったジェリーの新エージェンシー。ついてきたのは、ジェリーの提案書に心をうたれた女性社員ドロシーだけでした。
不安定な職務環境でリスクを冒してまでも自分の信念を信じてくれるドロシー。彼女になら生涯の信頼を寄せることができると思ったジェリーは、彼女との結婚を決意します。ところが、結婚生活がはじまってみると、ジェリーは彼女を守るという責任感から結婚したのではないかという疑問が2人の間を阻む壁となり、心の距離を広げていくのでした。

互いの気持ちを確かめるため、別離を決意したジェリーとドロシー。社運を左右するロッドの試合を見守るため、ジェリーは一人旅立ちます。試合開始後、ロッドがタッチダウンを決めた喜びも束の間、地面に頭を強くぶつけて意識を失うロッド。静寂に包まれるフィールドで、意識を取り戻したロッドは、ジェリーの心配をよそに、これまでにない注目を浴びたことに浮かれて、愛想を振りまいてグラウンド中を練り歩きます。

カメラを通じて全米にロッドの名が知れ渡ったこの日は、ジェリーたちの未来が開けた記念すべき日となりました。でも、会社の成功を喜ぶためには、妻ドロシーの存在が欠かせないということにジェリーはようやく気づいたのです。試合終了後、一目散にドロシーの元へ帰ったジェリーは、迷いなく彼女を見つめてつぶやきます。

I love you. You complete me.
愛してる 君が僕を完全にするんだ

そしてドロシーが出した答えは、「You had me at hello」=「(ジェリーが家に戻り)helloとあいさつした時点で私の心は決まっていたわ」。

挫折と失敗を重ねても、理想に向かってまっすぐ生きるジェリーたち。彼らの生き様がnot complete(不完全)だからこそ、人間味溢れるドラマがいつまでも私たちの胸を打ち、名作として語り継がれているのです。

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