カルシウムの働き
カルシウムが体を支えています |
「カルシウム=骨と歯の材料」というのは知らない人がいないほど有名なことですね。でも、この他にもとっても重要な働きを持っていることはあまり知られていません。まずは、カルシウムの働きから解説しましょう。
まず、体内にあるカルシウムのほとんど(約99%)は、骨や歯として私たちの体を支える重要な働きをしています。大人になると骨の成長が止まるからカルシウムはそんなに必要ないって思っていませんか?実は大人になっても私たちの骨は成長しているんです。そして、それと同時に壊されていっているのです。一見矛盾しているような話ですが、常に壊され、新しく作られることによって私たちの骨はゆっくりと生まれ変わっています。大人になっても折れた骨を治すことができるのは、このためです。骨が完全に生まれ変わるのにかかる時間は10年くらいだと言われています。材料となるカルシウムが不足したり、骨を作るスピードより壊すスピードの方が速くなってしまうと、バランスが崩れ、骨は脆くなってしまうのです。
骨や歯として使われていない残りのカルシウムにも、私たちの体を動かすための重要な働きがあります。それは、脳からの命令を筋肉に伝える神経伝達。脳からの電気信号は、カルシウムやナトリウム・カリウムなどのミネラルが微妙に濃度変化することで神経細胞を伝わっていくのです。
そんな繊細な仕事も、がっしり体を支える仕事もこなすカルシウム。不足したり多すぎたりすると、どんなことが起こってしまうのでしょうか。
カルシウム不足・過剰の症状
■ 不足日本人の食生活はカルシウムが不足気味だと言われています。でも、その割にはカルシウム不足で病気になったなんて話しはあまり聞きませんよね。それは、骨がカルシウムの貯蔵庫として不足分を補ってくれているからなのです。骨には大量のカルシウムが蓄えられているので、すぐに底をつくことはありません。でも、そんな食生活をずっと続けていると、子供は骨の成長が遅れ、成人は骨の密度が下がってしまいます。
・骨粗しょう症
骨の密度が下がり、強度を保てず、骨折しやすい状態になる病気です。カルシウム不足や、ホルモンバランスの変化が主な原因です。女性は更年期以降に女性ホルモンが減少することによって起こりやすくなります。骨を作るスピードより壊すスピードが速くなり、骨密度が下がっていきます。
・脳・神経系の異常
神経の電気信号を正しく伝えるためには、血液や細胞の周りのカルシウムの濃度を一定に保つ必要があります。そのため、カルシウムの量が少なくなると、骨から取り出して一定に保つ仕組みになっています。何らかの理由で骨からのカルシウム補助が間に合わなくなったり、小腸でのカルシウム吸収が出来ないとき、ゆっくり時間をかけてカルシウム不足の症状が出てきます。
脳のバランスが崩れ、錯乱・記憶喪失・意識混濁・うつ・幻覚といった神経や心因性の症状が出てきます。また、カルシウム濃度が極端に低くなると、抹消神経の痛み、筋肉痛、けいれん、不整脈が起こります。これらの症状はカルシウム濃度が回復すると元に戻ります。
脳や神経の異常は、骨から供給が間に合わない特殊な状態で起こる症状で、通常の生活の中でカルシウム不足の症状を感じることはほとんどありません。それだけに、病院などで骨量を計り、表面からは見えない骨を育ててあげることが大切なのです。
■ 過剰
通常の食事でカルシウム過剰になることはほとんどありません。ただ、サプリメントやカルシウム添加食品などで摂り過ぎてしまうという可能性はあります。カルシウムが増えすぎると、便秘、吐き気、嘔吐、腹痛、食欲減退、尿量の増加などの症状が現れます。また、カルシウム過剰の生活を続けると、泌尿器系結石やミルクアルカリ症候群などになってしまうことがあります。また、一つのミネラルの過剰摂取は、他のミネラルの吸収を抑制してしまうことも知られていて、体内のミネラルバランスを崩す原因にもなってしまいます。
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