内気さは人生の大きなハンディキャップ
例えパンは盗まずとも……。 |
越智:日本のテストはたいてい筆記のみで合格できますから、それは厳しいですね……。
Bodin:自分のopinionを述べない人、イコールbêtise(おろかさ)あるいはinculture(無教養)という公式が成り立ちます。
越智:それじゃあフランス人の前では日本人のプライドをかけて黙っていられません!!
Bodin:だからこそフランスの親たちは子供のtimiditéを治すためにあらゆる手をつくします。社会において自分を表明する機会をできるかぎり子供に与えるわけです。
フランスの親たちは子供の内気をどう克服させる?
内気さを克服するために様々な努力がなされる |
Bodin:例えば、舞台で仲間に囲まれて話す喜びを実感させるためにclub de théâtre(演劇クラブ)に加入させたり、音楽やスポーツなど子供たちが好きな活動を行っている場所に参加させたりします。こうした場合はcommunicationがその活動の中心というわけではありませんが、やはりcommuniquer(意思疎通を図る)機会となりうるでしょう。定められた環境で遊びを通して友人をつくることを学ぶためにvacances中はcolonie de vacances(林間・臨海学校)に参加させたりします。
越智:以前にフランスの小学校を訪問させていただいたことがあるのですが、théâtre(演劇)がきっちりとカリキュラムに組み込まれているので楽しいなと思いました。colonie de vacancesも、働く母親の負担軽減だけがメインの理由ではないんですね。とはいえ、日本人がそのまま真似るとなると難しいこともあります。家庭で意識的に行われていることはありますか?
Bodin:両親の友人を招いた際にみんなの前で子供が得意な歌を歌わせたり、poème(詩)の暗唱をさせたりします。大人たちがほめたたえ拍手喝采してくれるので子供は勇気づけられるでしょう。あるいは、子供の友人を家に招かせ子供自身におもてなしさせたり、子供にあまり友人がいない場合には、同い年くらいの子をもつ家族を招待し、自然にコミュニケーションがとれるよう子供たちだけにしたりします。
フランス人は「○○する、ゆえに我あり!」
あなたは何ゆえに存在する? |
Bodin:「Je pense donc je suis.(我思う、ゆえに我あり)」というDescartes(デカルト)の有名なフレーズがあります。これを私流にconversationにあてはめると、「J'exprime une opinion personnelle, donc j'existe.(私は自分の意見を述べるからこそ存在している。)」ということになります。
フランス人にとってのconversationは、exister(存在する)ための紛れもない方法の一つであり、だからこそpersonnalité(パーソナリティー)の欠如を意味するbanalitésのうちに留まることができないのです。
なんの苦もなくすらすら意見を述べるイメージが強いフランス人だってしっかり努力しているというこの事実こそが、一般的にコミュニケーションが苦手とされる日本人の私たちに勇気を与えるものでしょう。記事続編では「フランス人と語るための黄金律」をご紹介しますのでお楽しみに!