がんばってレベル
フランス語翻訳の授業風景 画像協力:高野優フランス語翻訳教室 |
越智:高野先生、ちゃんと文法復習してきました。「il y en a une qui dit à l'autre 」のenは前出の名詞で「il y a」の目的語になるものを考えると「une puce」、quiは関係代名詞でいいですよね。こんなんでどうでしょうか?
訳文2:(1)2人の博識なチビがサーカスでエキジビジョンをする。(2)ある日、別のものに言うものがいる。(3)「人々は悪くないお金を稼いでいる。(4)人々はもうじき、自分のために犬を買える」
高野:はい、これで文法的にはまちがいがなくなりました。翻訳をするにはまず語学的にきちんと理解することが大切ですから、ちょっと面倒でも文法書などで確かめてくださいね。特にその部分の意味がわからない時は……。
越智:はい。でも、先生、私、文法苦手で、勉強しているうちに人生が終わってしまいそうなんですけど……。やっぱ、翻訳なんてムリでしょうか?「文法書」のカンニングなんてやっぱりダメなんでしょうね。
高野:カンニング、もちろんOKですよ。100%文法が頭に入っている必要はありません。そんなことは不可能ですから……。ある程度まで語学が身についたら、それで翻訳は始められますので、あとは翻訳をしながら文法的な知識を身につけていってください。
越智:ふぅ。よかった。
まずは常識をあてはめ、さらにもう一歩踏み込んで考えよう!
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高野:さて、そこで訳文に戻ると……。正解から言うと、このpucesは「背の低い男」や「チビ」ではなく「ノミ」です。
越智:ちょ、ちょっと待ってくださいよ!だって、さっき先生は「ノミ」は普通しゃべらないからこういう考え方はいいってほめてくださったじゃないですか……。
高野:ええ。解釈はまず常識をあてはめる必要がありますからね。訳文の中で、あまりに常識にはずれた事態が起こったら、解釈をまちがえている可能性が強いからです。でも、ここは常識をあてはめて「背の低い男」、さらに表現を工夫して「チビ」にしても(工夫したところはいいですよ)、意味は通じません。そしたら、やっぱりまちがえている可能性が強いのです。ここは「表現」ではなく「解釈」の問題。
最初に言ったように、この原文はフランスのジョーク。きちんと読解すれば、意味が通って笑えるものになっています。これがジョークだということを頭に入れて、もう一度、読解に挑戦してみてください。具体的には「別のものに言うもの」って誰? その「別のもの」って誰? それから、「人々」って誰?「どうして急に犬が出てくるの?」。そんなあたりを考えるとよいと思います。がんばって!
越智:う~、この先生、実はとっても意地悪な人かもしれない……。
高野:そんなこと、ありませんよ。教室では優しい先生だと評判なんですから……。たぶん……。そうだといいんだけど……。
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