生まれて初めて味わう食感に感動
原田シェフはストウブに惚れこんでいる |
そして、「次に店を開くなら、このストウブの鍋を中心に据えようと、ほとんどすぐに心に決めた」ということです。
それから、様々な大きさのストウブのココットを集め、2005年、新たに開いたレストラン、カーザ・ヴィニタリアの厨房ではストウブが大活躍しています。
調理するだけでなく、サーブする際にも使われ、ココットのまま提供される料理の数々は見た目が美しくかつかっこよく、またワクワク感があり、とても楽しい気持ちにさせてくれます。
「まずは野菜を蒸し焼きにしてみて!」
タマネギは皮をむかずにラードを載せ、フタをしてオーブンで焼く。ココット20cm径 YELLOWを使用 |
シェフの野菜の蒸し焼きは、ちょっと変わっていて、一つの鍋に一種類の野菜しか入れません。蓮根なら蓮根だけ、カリフラワーならカリフラワーだけ、という具合です。 「レシピ本や雑誌、宣伝用パンフレットなどには、いくつもの野菜を一緒に煮ている写真がよく載っていますが、本来それぞれの野菜はまったく違う個性を持っていて、必要な火加減や加熱時間は全然違うはず。それぞれの野菜の良さを出すには一つの鍋には一つの野菜だけを入れて調理したほうがおいしくできるんです」
もちろん、ただ野菜を一つだけにすればいいわけではありません。野菜によって、フタを開けて加熱するのか、フタをして蒸すのか、それともフタをしてオーブンに入れるのかなど加熱のパターンを使い分けます。さらには使う油脂も変えます。カリフラワーはバター、タマネギはラード、タケノコはオリーブオイルなど、野菜の特性や調理方法に合った選択するのです。
加えて一部の野菜にはチーズやスパイスなどを加えるのですが、その絶妙さにはため息がでるほどです。個人的なことですが、わが家の菜園で採れたての野菜を原田シェフのレシピで蒸し焼きにしたらさぞおいしいだろうと、今からわくわくしています。
さて、こんなふうに書くと、「ストウブで野菜を蒸し焼きにするのって結構難しいのでは?」と思う方もいるかも知れませんが、決してそんなことはありません。実際にレシピ本にしたがってやってみると、大抵美味しく仕上がるはずです。そのうえ加熱してゆく過程でストウブの鍋としての特性がわかり、扱い方もわかってくるわけです。
原田シェフは「同じ種類の野菜でも、一つ一つの状態を見極めて、例えば水分が多いものなら途中でフタをずらして蒸気を飛ばすなど、細かく対応する」ということでしたが、家庭で作るわれわれも、野菜の蒸し焼きを作りながら鍋と真摯に対話すれば、微妙な加減がわかってくるのではないかと思います。
ゆっくりじっくり楽しもう
じっくり弱火で火を入れる。鍋の中はトリッパの煮込み ココット32cm BLACKを使用 |
基本的に弱火でじっくり素材に火を入れることで美味しい料理に仕上がるのがストウブ鍋の特徴です。ただし、「ストウブを使うと他の鍋を使うより煮込み時間は短くて済む」そうなので、ストウブは料理時間短縮にも効果があります。しかしそれでも、調理時間を短くしたいがためにストウブを使うのではなく、ゆっくりと火を入れて、素材や鍋と対話しながら美味しい料理を仕上げていく悦びと楽しみを、ストウブという素晴らしい鍋とともに味わって欲しい、というのが、原田シェフからメッセージなのです。
ちなみこのパーティ当日、あるお客さんが、「なんでカリフラワーをただバターで炒めただけなのにこんなにホクホクしておいしいんだ!?」と原田シェフに抗議(?)していました。ストウブでの野菜調理は、優れた鍋とそれを生かす優れた料理人が生み出したシンプルで美味な一皿の極みといえるのではないでしょうか。
>次ページでは煮込みの味の違い、ストウブが活躍する厨房の様子などについてです