料理界最大の迷信?
私が常々、料理レシピを作るうえで最大の迷信だと思っていたのが、「まず肉は表面を強火で焼き固めて、旨味の流出を防ぐ」というものです。いまでも本やウェブサイトの様々なレシピにそう書いてあります。これは日々料理を作っている人間にとっては実感として、違和感を持つはずだと思います。なぜなら、フライパンの中の肉を見ていれば、表面が焼けても、中から肉汁は流出しますし、強く焼いた表面の肉が固くぽそぽそになったものは決しておいしくはありません。
また、バーベキューなどで、ちょっと生焼けの肉を食べたときに実感できると思いますが、旨味が強いのは、むしろ表面に近いよく焼けた部分で、(旨味が閉じ込められているはずの)内部の生の部分には旨味はあまり感じないはずです。
わたしが読んだ本で、この迷信を否定していたのは、フランスの物理化学者エリヴェ・ティスが書いた『フランス料理の「なぜ」に答える』という本でした。この迷信は、世界中でスタンダードなものらしいですね。
しかし、ティスさんの本では、このことには簡単に触れられているだけ。一方の水島氏のこの本では、迷信を否定した上で、「弱い中火」で確実においしく作る方法を、明確に提示してくれています。
この「最大の迷信」以外にも、前述した「切り方」や「火のルール」も、一般的に言われている「料理の常識」を覆すようなものですよね。他にも卵は水を沸騰させてから入れる(欧米ではそうやって茹でることが多いですね。お米の「湯炊き」と同じで、そのほうが正確に茹で上げることができるそうです)方法とか、煮込み料理は長時間煮なくてもよい、とか、ルーを作る際に小麦粉をふるう必要はないとか、ハンバーグはフタをして蒸し焼きにしてはいけないとか(私のレシピでは思いっきりフタしてます(汗))、常識を覆す調理法がいっぱい出ています。また、フライパンと足つき網を使った、ステーキのミディアム、レアの焼き方やチーズオムレツの作り方なども意外で、目からウロコでした。
料理好きには、とにかく面白く読めるはずです。それに加えて、私はこの本にだいぶ勇気付けられもしました。 >どんな風に勇気付けられたかは、次ページへ