フォーラム・フィナーレと今後の方向性
各社プレゼンの後は、長沼氏による総括が行われました。さらには、今回のフォーラムの発案者でもある、早稲田大学教授の原田康也教授より、開催の意図の一つとして、学習者が能力の向上を「実感できる」テスト開発の意義と、さらには、試験方法に左右されない、コアとなる学習法の開発の必要性が訴えられました。会を締めくくる帝京Study Abroad Center長・遠藤誉氏 |
その後、会場を移して、参加者のための交流会が模様されました。今回プレゼンを行った各社のブースが設けられ、活発な交流と質問が受け付けられていました。事務局長浜地道雄氏:文教大学(国際学部)非常勤講師のコーディネートにより、英語教育に様々な形でかかわる人たちの熱心な交流が行われていました。
事務局長浜地道雄氏(右から2番目)と参加者たち-交流会会場にて |
今後の方向性
今回、参加して、英語試験を実施している主要各社のプレゼンを一同に拝見できるまたとない機会となったことは、大変有意義であったと感じました。ちょうど、TOEICや、TOEFLにスピーキングが導入される時期でもあり、スピーキング試験と、「仕事で使える英語とは何か?」という、魅力的なテーマが同時に取り上げられている点で、これまでにない意欲的な企画であったと感じました。本会の企画者である早稲田大学教授の原田康也氏は、本来、英語能力検定試験というものは、受験勉強のごとく、点数を取ることが目的のような日本のテストのやり方、またそのための英語教育ではなく、身体検査のように考えるべきであると指摘していました。「体温、温度、距離、重さのような測定数字を我々は生活感として直ちに理解する。それに応じた営みをする。さて、英語学習者はテストの数字を体感として瞬時に受けとめられるか? それがまさに「(使える)英語力」に直結するはずだ。」とのご意見を述べられ、現在の英語教育のあり方と検定試験のあり方に一石を投じておられました。
また、スピーキングテストに関しては、受験者の増加に伴う、評価精度の問題と、評価の質を高めるうえでのコンピュータ化が進んでいくであろう、という印象を強く持ちました。質疑応答でも参加者からも、スピーキングテストを評価する際の採点者による評価の違いを心配する声や、採点者確保の問題が指摘されていました。質問に立った、神奈川大学;平井通宏特任教授
の、多くの専門家も指摘している「スピーキングテスト」の評価について「大量に人間が採点する場合、どのようにしてその客観性、中立性、信頼性を確保するのか?」とのご質問は、スピーキングテストの一番のポイントをつく質問で、今回のフォーラムの真骨頂であったといえます。ちなみに、この質問を受けてのTOEIC担当者の答えは「ETSにて資格のあるRaterの養成を図る」とのことでした。
さらに最も興味深かった点は、仕事で使える英語の評価にあたっては、EGP:English for General Purposeから、ESP:English for Specific Purposeへの移行が進むのではないかという方向性が見出せたことです。早稲田大学の原田康也教授のご指摘のとおり、いかに形式の異なる試験であっても、その実力が実感を伴って評価され得る、コアとなる英語力育成のカリキュラムの必要性も強く感じました。プレゼンの中でも言及されていたように、仕事で使える英語力の育成は、おそらくは学生時代からの弛まぬトレーニングによってより培われるものであり、そのための正しい評価方法が今後も検討されていくことでしょう。
今回が第1回目となるようですが、今後も引き続きスピーキングをテーマとした意欲的な開催を是非とも期待したいところです。
関連リンク
英語スピーキングテストフォーラム2006のご案内