「技能検定制度」見直し案浮上の背景とは?
今回の見直し案浮上の大きな要因として、大量退職による「ものづくり」人材の大幅減少と後継者不足という「2007年問題」は欠かせません。したがって、今回の案も「ものづくり」人材育成の視点から構成されていると言えるでしょう。大きく分けて4つの柱があります。■企業などのニーズにマッチした内容への変更
言うまでもなく、日々様々な技術の向上、複合化が行われている産業界では、必要とされる技能もより高度で複雑化しています。しかし、現在の技能検定制度では、こうした変化が的確に反映されているとは言えません。
企業、業界団体などのニーズを踏まえた、より実践的なものにしていくために、検定職種の廃止や統合、新規職種の導入などの必要性が指摘されています。
■技能検定のステータス強化
技能検定制度は、大企業で比較的活用されていますが、中小企業での活用にはまだまだ課題が多いと言われています。また、技能士のキャリア形成や処遇の実態把握が不十分なため、実際にどれくらいのステータス、効果を持つものなのかが明確ではありません。この点が、国家が公証する検定でありながら、知名度、活用度が伸び悩んでいる要因でもあるでしょう。既に建設業界などでは、公共事業の受注に一定の技能士配置を評価対象とする仕組みがありますが、今後は他職種・業界にもこうした動きを広げていくことが提案されています。さらに、いわば「アジア標準」としての展開など、グローバルな観点での制度整備も望まれています。
■多様な労働者への活用促進
技能検定を受検するためには、原則として検定職種に関する実務経験が必要です(等級区分に応じて条件は異なる)。また制度の性質上、企業が正社員の人材育成のために活用するケースがほとんどで、パートや派遣労働者など、多様な働き方がある現代の雇用事情にマッチしておらず、ニートやフリーターなど、キャリア形成を図りたい若年者の活用も事実上難しい状況です。折りしも、新しく誕生した安倍政権では「再チャレンジ」が目玉。今回の見直し案では、現行の受験資格の見直しも含め、受験機会の拡大などの措置が検討されています。
■検定職種設定・試験実施における民間活力の活用
新規成長分野など、新たに公的な職業能力評価制度の整備が求められる職種については、技能検定と実践との乖離を極力少なくすることを目的に、民間の業界団体などが検定化に主体的に取り組めるように、バックアップしていくことが望まれるとしています。その際には、国家検定としての試験の公正な実施および試験問題の質の確保など、試験の権威と信頼が担保される必要があることは言うまでもありません。
今回はやや固めの話題になってしまいましたが、全体を通して感じるのは、やはり現行の「技能検定制度」が、本来の目的のひとつである、「労働者の雇用の安定、円滑な再就職、労働者の社会的な評価の向上に重要な役割」を十分に果たすには、多くの課題を持っているということです。少なくとも「国家検定」というからには、やはりそれなりのステータス、効果を持つものであってほしいのですが、さて、見直し案の行方はどうなるでしょうか?今後も追っていきたいと思います。