日本では、業務独占資格といえば医師・弁護士のようなホワイトカラー職種を思い浮かべますが、ドイツでは、時計・家具製造・煙突掃除・石材加工などさまざまな職種に「マイスター」という資格制度があります。この資格を持っていないとその仕事が出来ないという点で「業務独占資格」なのですが、これが職人にとっても消費者にとっても硬直的だと言われているのです。

【マイスター制度が無くなる業種と残る業種】

2004年1月に施行された新手工業法では、開業に資格が必要な業種はそれまでの94業種から41業種と半分以下に減らされました。ちなみに、資格不要とされたのは時計製造・金銀細工・靴製造・ビール醸造・バイオリン製造など。確かに専門的な職人芸が必要とされそうな仕事ばかりですが、これらについてはもうマイスターの資格なしでも開業可能となったのです。
残るマイスター41業種には、大工・食肉加工・ベーカリー・家具製造・眼鏡技師・理髪師などがあります。これらは、技術の習得が困難、第三者の健康や生命に危険を及ぼす恐れがある等の理由から残されました。
中世以来の長い伝統を持ち、近代に入ってからは法制化されてドイツ製品の高い品質への信頼を保つ原動力でもあったマイスター制度は、ここへ来て大きな転換を迫られたのです。背景には10%を超える高い失業率があります。失業者が個人として開業しようとしてもマイスター資格を持っていないがためにそれが出来ない状況を打開するために、多くの職種を開放することにしたのです。

【マイスター制度はどこへ行く?】
新しい手工業法をよく見ると、無くなった業種の中には楽器製造や模型製造などマイナーな職種が多いのが分かります。大工や左官のように就労人口が多い職種については制度が残ることになっているのです。職種の数では、半分以下になるため大幅な制度縮小に見えるのですが、実際に影響を受ける職人の人口から見ると大きな影響は無かったと言えるかも知れません。それでも街中の時計職人などは大きな打撃を受けたのではないでしょうか?せっかく大枚をはたいてマイスター資格を取得したのに、いまやその資格無しでも開業できることになったのですから。
しかし、日本では、これらの職種の大半にはもともと資格すら必要無いものがほとんどです。そういう意味では日本ではすでにマイスター制度による保護が無い、競争状態が保てていたともいえます。ドイツも国内で閉鎖した状態はすでに保てなくなったという事だと思います。まだ賛否両論分かれているようですが、これがドイツの競争力向上のひとつのきっかけになるのは確かでしょう。
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