フランス/フランスの観光・世界遺産

やっと来ましたシャルトルーズ。後編はカーヴ潜入 早春、リキュール蔵元を訪ねる(3ページ目)

霧、そして雪。さんざん迷ったあげくやっと着きましたシャルトルーズ。いよいよ地中深くカーヴに潜入、神秘のベールに隠されたその門外不出の製法を垣間見ます。え、カメラも持ち込み禁止なのか!

執筆者:赤木 滋生

ベースはブランデー、そして秘密の薬草


こちらはさらに大きい、高さ5メートルはありそうなバット(桶)。ワイン発酵用に使われる。ここでブランデーのベースになるワインが仕込まれ、さらに蒸留によってシャルトルーズのボディが出来上がる。
樽一つ一つにはボードが貼ってあり、樽の中の情報が記されている。Vとあるのはヴェール(緑)アルコール度数は55°と書き込まれている。Jはジョーヌ(黄)ほぼ41°。一般的にはきついヴェールはカクテルや食後酒に、少しマイルドなジョーヌは食前酒に適しているが好みでどのような飲み方もOKだそうだ。この樽でのエージング(熟成)が最後の工程。永い眠りから目ざめたシャルトルーズはビンに詰められ世界中に出荷される。

シャルトルーズそもそもの成り立ちは薬用酒であり、消化器の薬や食欲増進剤としての効用がある。がぶがぶ飲むのではなく食事と共にゆったりたしなみたいものだ。ベースになるのはブドウを発酵させてワインを作り、蒸留器(ポットスチル)で濃縮させて造られたブランデー
樽に表示されたVはヴェール(緑)。55がアルコール度数。94は容量を表すヘクトリットル(9400リットル、うわ10トン近い!)。これはまだ若い方。
一方で130種類に及ぶさまざまな薬草や香草からアルコールや蒸気で抽出した薬効成分を造る。両者をブレンドして出来上がるのがあの独特な色と香り、味わいだ。深くて複雑なリキュールが生まれるまでにはとんでもない手間と時間がかかっているのが良く分かった。

貯蔵所の一角には樽ではない、見上げるような大きさの桶が集められている。これはアルコール発酵させるための器。ブドウの実をつぶせば皮についた酵母が糖分を分解発酵してアルコールたっぷりのワインになる。シャルトルーズが生まれるまでの第一歩がここから始まる。この大きな工場の大部分はこの最初と最後の工程に占められている。

さて見学の仕上げはいよいよ門外不出の蒸留、ブレンド工程。意外と小さなこの棟の中にはぎっしりと機械道具が詰め込まれている。中はまさに錬金術のシステムをスケールアップしたかのようなスチルやタンク、タワーがパイプやホースでつながれている。物陰から黒い僧衣に包まれた人々がフードの奥から目を光らせて出てきそうな錯覚に襲われそうだ。
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