孫子の兵法
薩摩切子で冷酒を |
「トラブルとかないのかな」
「なに、浅丘さんが出会い系サイトで何かあったの?」
「ううん。彼女の友だちがね。ちょっと危なかったらしくて」
夫婦の間とはいえ、さすがに泉が利用したとは言わなかった。
「まあ、たいていの男はヤリたい一心だろうからな。男が誰でもってことじゃなくて、そういう輩が多いってのは言えるんじゃない。みんな仕事してたら出会いがないって言うし。ところで、トラブルってなに?」
「なんかお金を巻き上げられそうになったとかで。結局、無事だったらしいけど。会ったその日にホテルに行ったらしいわ」
「ふん。じゃあ、お互い様だろうね。目的が一致したんだろ」
「でも、その先で適当な理由を作ってお金を出させようとするなんて、やっぱり男が悪いよね」
「どうかねえ。だいたい男と女の出会いなんて、きっかけは何であれ、そこから先はそれぞれだろ。互いにヤッただけでそれきりってのもあるだろうし。その女はいかにも金を持ってそうなの」
「うーん、そう見えたのかも」
「見た目だけじゃそこまで話は行かないだろうから、女にも原因があったんだろうな。要するに出会った男女の化学反応だからさ。五分五分っていうか、そういう流れにしか行かない出会いだったんじゃないの」
「化学反応ねぇ。どっちかだけが悪いってわけじゃないんだ」
「人間関係って、ふたり以上の人間が作るドラマというか、作品みたいなものでもあるな。作り手の人生観が全部出るものだと思うね。悪い方向に行ってしまう関係は、どちらかだけの問題というより、相性が悪いということだろう。悪い相乗効果が出ちゃうんだろうなあ、きっと」
「相手の人生観なんて最初から分かるわけもないし。予測できないからこそ面白くもあり、恐ろしくもあり、か」
「さすが、あなた」「茶化すなよ」 |
「ことわざで、聞いたことがあるような」
「敵のことは分かっているつもりでも、案外、自分のことを分かっていないで負け戦になることが多いらしいぞ」
「あっ! なるほど。自分のことが分かっていないために、トラブルになることがあるってわけね。う~ん。まさに今回のケースもそうだったんだわ。さすが、あなた!」
「はは、茶化すなよ。それより、オレの部下もなんかトラブル抱えててさ。今度ゆっくり相談させてください、なんて言ってきたよ」
「部下の男の人? へえ~、気になるわね。どんなことかしら」
「分からん。ま、来週あたり、話を聞いてくるよ」
「私も知りた~い」
いつものように話がはずんで、つい冷酒を飲みすぎてしまいそうになった二人だった。
【全4回】
連載第1回「ミセスの危機管理ナビ~独身美女の仕事と男」
連載第2回「ミセスの危機管理ナビ~男と女の間のウソ」
連載第3回「ミセスの危機管理ナビ~男の本性、見たり!」
連載第4回「ミセスの危機管理ナビ~男と女の化学反応」
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