【連載第1回】麻季子の学生時代からの友人、浅丘泉は仕事のできる美人のキャリアウーマン。麻季子と正反対の生き方だが、昔から仲がいい。恋多き女、泉の最新の恋人は若い男だという。麻季子はどうしても不安な感じをぬぐえない。(全4回)

独身美女・泉

穏やかな日々
穏やかな日々
横浜市郊外で息子と夫の三人暮らしをしている主婦の加瀬麻季子(38歳)は、穏やかな日々を送っていた。いずれ39歳の誕生日を迎えることになる麻季子だが、ギリギリとはいえまだ30代である。実家の母親は、「あんたも数え年なら40歳になるのよ」と言うが、何も急いで年を取ることもないといつも言い返している。少しでも若く見られることは嬉しいし、できる限り若くありたいと願っている。

女優やタレントは「美」や「若さ」が売り物だから、一般人より若く見えるのは当然だ。自分と近い年齢の女優やタレントをテレビで見るとやはり若いなと思う。だが、一般の女性が年齢を明らかにして出ていると(勝っている)と思うことが多い。クラス会に出ると同じ年齢のはずなのに、だいぶ差があるように思える。何と言っても、結婚せずに働いている女性は若い。子どもができると女は「母親」になってしまい、独身女性とは決定的な差ができてしまうようだ。

仕事をしている友だちとは、主婦とは生活時間やスタイルが違うせいか自然と付き合いも遠のいてしまっている。それでも中には独身の友人もいて、浅丘泉とは高校生のときから馬が合う親友だ。互いに道が違っても仲のいい友だちであることに変わりはない。思い出したように電話をかけては、近況報告をしたり、どうということのない世間話をするときもあれば、悩みを話すようなこともある。まったく状況が違うので話をするのも気楽だし、同じ立場の人とは違う新鮮な意見を言ってくれることもあるのだった。

独身美女
独身美女
20代で一度結婚したがわずか半年で離婚している泉は、「仕事も遊びも男と同じようにする」のが信条で、美人で仕事のできるバリバリのキャリアウーマンだ。何度かの転職の後、今は世間で名の知れているベンチャー企業で幹部として働いている。しゃれたマンションもすでに手に入れており、仕事はやりがいがあり楽しいと常々言っている。連日、帰宅が深夜に及び、「私がお嫁さんを欲しいくらいだわよ」と言うのも、冗談には聞こえない。

「賢い女は家事も上手い」と言われるように、料理の腕前も家事全般にもすぐれている。誰にも頼らず、自分のしたいことをして自由に生きている泉を強いとは思うが、ひとり暮らしが寂しくはないだろうかと問いかけたこともある。泉は、「他人とのわずらわしさとひとりの寂しさを秤に掛けたら、ひとりでいるほうがよほどいい」と笑っていた。夫と息子の3人で暮らしている麻季子にとっては、家の中に話す相手も食事を一緒にする相手もいない生活は考えられない。

高校時代にはこれほど生きる道が変わるとは思ってもみなかったが、生き方も考え方も正反対だから麻季子と泉はぶつかることがない。だから長く友だちでいられるのかもしれない。ある夜遅くに泉から電話がかかってきた。夫の春彦は出張に出ており、息子の翔太はすで寝ている。家事も一段落していたので腰をすえておしゃべりをしようと覚悟を決めた。


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