防犯/防犯小説

ミセスの危機管理ナビ~男の本性、見たり!

【連載第3回】泉とリョウ君とその友だちが会うことになり、麻季子も分からないように見に行くことにした。リョウ君を見て、麻季子はある人によく似ていると思った。そばで聞いた会話と電話から男の本性に気づく。

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

連載第1回「ミセスの危機管理ナビ~独身美女の仕事と男」
連載第2回「ミセスの危機管理ナビ~男と女の間のウソ」
を先にご覧ください。【全4回】

《前回までのあらすじ》泉がリョウ君に対して思いのほか、入れ込んでいることに驚いた麻季子。大金を貸して欲しいという彼の要望に、目を覚ますように泉に迫るが、なぜかあいまいな泉。友だちと会うときに麻季子もそばにいることにした。

下準備

二人で打ち合わせ
二人で打ち合わせ
泉は、リョウ君が一緒に会社を興そうとしている友人も来るからということで会う約束をした。できればそのときに、出資金を持ってきてもらえると助かるという話だったが、さすがに泉は、その友人と会って、もっといろいろと詳しい話を聞いてから、とお金を出すことについて確約はしなかった。麻季子は泉からそのことを聞いて、事前にしっかりと打ち合わせをしておくことにした。

「だから、絶対にその場ではお金を出すなんて言っちゃダメよ」
「うん。大丈夫。もうお金を出すとは考えていないから。明日、電話して場所を指定するの。私の仕事が終わってからということで。どこがいいかなぁ」
「携帯電話がかけられるような場所がいいと思う。地階はダメだし、隣の席に私がいて話が聞こえるところじゃないと。そうだ。カフェSの外の座席は? 電話もしやすいでしょう?」
「そうね、あのカフェなら外にテーブルがあるから。早めに行って、隣のテーブルを確保して」
「それから、もしリョウ君がこんなことを言い出したら……」

考えられるあらゆるケースに備えて、麻季子は家に泉を招いてシミュレーションを行った。相手がこう言ったらこう切り返す、といったようなことを繰り返した。もちろん、どんなことがあっても、すぐにATMに行ったり、二人だけで別の場所に移動することもしない。状況によっては、麻季子が救いの手を出す。隠しマイクで録音しようかという話も出たが、互いにそんな道具も持っていないし、値段が幾らするかも、どこで買ったらいいのかも分からず、やめにした。

「テレビドラマのようには行かないわね」
「ほんとね。じゃあ、今日はこれで。遅くまでごめんなさいね」
「いいのよ。主人は部下と飲み会とかでたまたま遅いし」
「管理職は大変よね。でも、明日、翔太クンは?」
「明日は私の母が泊まりにくるのよ。明後日、歌舞伎を観に行くことになっているから。だからちょうどよかったの」
「よかったわ。助かる。ごめんね、本当に。じゃ、明日、時間が決まったら電話する」
「うん。じゃ、明日ね」

翌日、麻季子は早めに街に出ていた。夕方の5時過ぎに泉から携帯に電話が来て、6時にカフェでということを知らせてきた。早めに行って席を確保しておかなくてはならない。書店でインテリア雑誌を買い、カフェでは店の外に並んでいるいくつかのテーブルのうち、隅の席に座ることができた。隣のテーブルには人が座っているが、飲み物がほとんどなくなっている。じきに席を立っていったので、ほかの客が来ないように麻季子はさりげなく雑誌をテーブルに置いた。

  • →リョウ君、登場……p.2
  • →→食い下がる男………p.3
  • →→→男の本性/あなたの一票/関連防犯ガイド記事……p.4
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