夫婦の会話
「あ、パパ。お帰りなさい。先に食べちゃったけど、食事は?」「食べる。お、翔太。元気か」
「パパ、お帰りなさーい。じゃ、ぼくお風呂に入りまーす」
「よく洗えよ」
「はーい、はいはい、はーい」
「なんちゅう返事だ。まったく」
「パパ、ビール?」
ワインは合図 |
「うーん。今日はワインかな」
「ワイン?」
言いながら、麻季子は考えた。春彦との間でいつの間にかワインを飲むときは、夜の約束という意味合いになっていた。
「パパ。悪いけど今日はビールにして。ちょっと考えることがあるから気分になれないの」
「なんだよ~。考えるって、何を」
「それがさ、横山さんの奥さんから相談持ちかけられたのよ。で、まだ話は途中なの。もうじき彼女から電話も来ることになってるのよ。だからごめん」
「あー、はいはい、はーい、だ」
「なんちゅう返事。翔太と同じじゃない。子どもみたいに」
テキパキと食事を用意して、ダイニングテーブルの春彦の向い側に座った。麻季子はふと、思い出してプッと吹き出してしまった。春彦がいぶかしげに麻季子を見た。
「ねえ、横山さんのご主人が浮気なんて、考えられる?」
「えっ? 嘘だろ? 横山さんってあの男の子ばかり3人いる」
「だから、考えられないでしょっての。すっごいかかあ天下だから」
「いやー、分からんよ。人は見かけによらないから。まあでも、女房怖けりゃ浮気もできないもんさ」
「そうよねぇ」
「うちもたまのワインも飲ませてもらえないしな」
「なに言ってんのよ。あ、メール来た、ごめん、ひとりで食べてね」
「ああ」
春彦を残して固定電話のそばに行き、携帯電話のメールをチェックしてから「いつでもOKです」と絵里に返信した。それからすぐに家の電話が鳴った。
「もしもし? 横山ですけど」
ナンバーディスプレーで絵里からとは分かっていはいたが、麻季子はかけてきた相手が声を出してから返事をするようにしている。
「あ、はい。私。さっきはどうも」
「ああ、さっきはごめんなさい。わざわざ来てもらって。それで、雅斗もここにいるんだけど」
「それじゃちょっと雅斗クンに代わってくれる?」
「待ってね、マー君、翔太クンのママとお話して」
電話口に雅斗が出てから、麻季子はあることを試そうと思っていた。
■麻季子が試して分かること、そして問題の年賀状と電話の相手を捜す…
連載第3回「ミセスの危機管理ナビ~推理から見えたもの」
■【全4回】連載
第1回「ミセスの危機管理ナビ~切り裂かれた年賀状」
第2回「ミセスの危機管理ナビ~聞き戻せない電話」
第3回「ミセスの危機管理ナビ~推理から見えたもの」
第4回「ミセスの危機管理ナビ~揺れ動く心のありか」
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