防犯/防犯小説

女フリーランサー、身の危険

フリーランスで仕事をする女性も増えています。女ならではの危険はつきもの。まだまだ勘違いしている男性も多いでしょう。こんな事態になったら、どうしたらいいのでしょうか?

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

女一人、フリーで生きる

名刺は営業の要
名刺は営業の要
フリーで編集の仕事をしている洋美(28歳)は、かつて勤めていた出版社から回される仕事だけでなく、クオリティの高い内容を評価されて仕事の幅を広げていた。フリーになって1年にしては順調だといえる。仕事は締切に追われたり、作業が深夜に及ぶなど、普通の会社員とはまったく生活時間が違うが、自分ですべてを組み立てて完成に導くことが好きなので、夜が遅くても気にならない。

むしろ、就業時間が決まった仕事に就くことはもう考えることもできない。複雑な人間関係や見たくもない会社の裏側を見ることもいやだった。自分に求められる仕事を一人で一生懸命することが楽しく、職人的なところが気に入っているし、フリーランスの仕事のスタイルが自分の性分に合っているとつくづく思っている。

学生時代に親元を離れて一人暮らしを始めてから10年、何度か引越しを繰り返して、今は都心からはやや離れているが、便利な路線に居を構えている。といっても、まあごく普通の賃貸マンションの一室である。デスクトップのパソコンと持ち運び用のノート型パソコンが命で、ブランド品にも高価なアクセサリー等にも興味がないので、あっさりとした女っ気のない部屋だ。

人からも色気がないといわれている。余計なお世話だと言いつつ、それが自分の個性だし、仕事には男女の差がないと思っているので、むしろ女を売りにしないことがいいほうに働いていると信じている。そもそも群れることがきらいなので、それだけでも女っぽくないといえるかもしれない。だからといって人付き合いが悪いわけでもない。

打ち合わせや共同作業が必要な仕事のときに、どこかの会社や事務所に出向くこともあるが、基本的には下請けなので、電話やウェブ上でやり取りするだけで仕事が成立することも多い。それでも初めての仕事先とは必ず対面して挨拶をする。やはり人と会うことは営業面からいっても大切なのだ。初めて会うときには、いつでも笑顔を心掛けている。

フリーで仕事をする以上は、名刺は営業の要だ。オリジナルの名刺をデザインから考えて用紙を選び、さりげなくかつ目立つように作った。91×55ミリの長方形の限られたわずかな紙面に必要事項を残さず書き入れた。個人事務所として自宅の住所を名刺に載せている。初対面の相手とは、オフィスがどこかということは必ず話題になる。ほとんど仕事相手が自分のところに来る必要はないので、「駅は○○線の△△です」とか、「図書館が近所にあるので便利なんですよ」といった程度の話くらいで終わる。相手もそれ以上は突っ込んでくることはない。

それほど古くもないオートロックタイプのマンションだし、宅配ボックスもあるので便利だ。近くにコンビニや郵便局もあるので何かと都合がいいのだ。個人情報が気にならないと言えば嘘になるが、実際に自宅を仕事場にしており、フリーランスである以上、自宅の住所を載せるしかなかった。都心から離れているからわざわざ誰かが来ることもないだろうという安心感もあった。SOHO…つまり、スモールオフィス/ホームオフィスということになる。
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