防犯/防犯小説

女フリーランサー、身の危険(2ページ目)

フリーランスで仕事をする女性も増えています。女ならではの危険はつきもの。まだまだ勘違いしている男性も多いでしょう。こんな事態になったら、どうしたらいいのでしょうか?

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

いやな感じの相手

フリーで仕事を
フリーで仕事を
自分はそれほど男にモテるというタイプではないと自覚しているし、自分がいいなと思う相手はたいてい既婚者だった。恋人はいない歴2年で、前の会社に勤めているときから時間が不規則だったので、すれ違いが多くなり、自然消滅のように別れていた。恋人がいなくても不便はないし、今は一人が快適で仕事が最優先だった。仕事の間にできるエアポケットのような時間は平日でも自由な行動ができるので貴重だった。

一人で好きな映画を観たりもする。誰かと一緒でなければ映画も観られないような依存的な性格ではないのだ。要するに、フリーで仕事をするのが合っていた。仕事で多くの人と会い名刺を交換するが、これまで一度もトラブルなどはなかった。これまでは――。実は、つい先日、仕事で会った相手がちょっといやな感じがしている。担当者の中年男性にメガネの奥からジロリと見られたのも気に障ったが、名刺を見て「これは自宅ですか?」とわざわざ訊かれたのだ。違うとも言えず、「はい」と答えたが、男性からそう尋ねられることはあまりうれしいことではない。

フリーなのだから仕方がないと思ったが、普通はそういうことは訊かないものだった。普段はパンツスタイルが多いのだが、めずらしくソフトなスカートで行ったのがまずかったとも思った。髪型を少し前にゆるいウェーブのかかったスタイルにしていたので、少しいつもよりしっかり化粧もしていた。年頃の女性なので、色気はないと言われていてもそれなりに見えたのかもしれない。初対面だったので、笑顔で挨拶をしたことももしかしたらマイナスだったのか。

だが、誰とだって笑顔で挨拶をするし、女なのだからスカートだって履く。化粧は自分より濃い人のほうが多いし、はっきり言って女を強調したつもりはなかった。だが、相手の視線が胸元を見ているような気がした。別に普通のカットソーだったが、特に胸が大きいとかのアピールポイントもない。打ち合わせの最中に相手がボールペンを床に落としたときに、それを拾おうとしてこちらの脚を見られたような気がした。自分も釣られて体を倒して床を見ようとしたときに、相手の視線がこちらの脚を見ていたと感じたのだ。

どちらかといえば細身なので、脚も太くない。キレイな脚をしていると言われたこともあったが、久しぶりに脚を見せる服装だったことが過敏に意識した理由かもしれない。知人の紹介で仕事を受注できそうだったので尋ねた会社だったが、全体的にいやな感じがしたので、できれば断りたかった。だが、話は順調に進み、まあまあの料金の仕事を受注できた。固定給のないフリーの身にはいくらでも仕事は欲しい。

断れない自分がいやだったが、背に腹は変えられない。ありがたく受けた。だが、最初のいやな感じはずっと残っていた。仕事は慣れた内容で特に問題はないが、担当者がいやだった。人の好き嫌いはないほうだと思っていたが、生理的に受け付けないというか、感覚的に嫌いだった。それでも仕事と割り切って愛想よく対応した。いつの間にか、「洋美ちゃん」と呼ばれることになり、いやだが他の仕事仲間からはそう呼ばれているのでそのままにしていた。

仕事の途中経過報告や問い合わせのため、ファクスやメールを送るとすぐに電話がかかってきた。ファクスと兼用の電話だが、在宅中は電話に出る。外出するときは携帯電話を持って出るので番号非通知は受けないのでどこからかかったかすぐに分かるのだが、自宅の固定電話はナンバーディスプレー対応の電話機だがまだ申し込んでいなかった。いなければ留守電か携帯電話にかかってくるし、自宅にいる間はかかってきた電話には出るしかない。
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