※この記事は、最近起きた事件をヒントにした創作です。【全6回】

・愛と故意のラビリンス~第1回
・愛と故意のラビリンス~第2回
・愛と故意のラビリンス~第3回
・愛と故意のラビリンス~第4回
・愛と故意のラビリンス~第5回を先にご覧ください。

<これまでのお話>
いやいや喫茶店で逸美と会った謙一。噛み合わない会話の果てになんとか別れを告げた。しかし、その後、逸美からはメールや着信が絶えない。謙一はついに逸美からの着信を拒否した。

逸美の行動

連絡を待っているのに
連絡を待っているのに
携帯電話に残る逸美からの着信記録に怯え、多数のメールを見ることもなく削除していた謙一だが、ついに逸美からの着信を拒否設定にした。確かに、それで逸美からの連絡は受けることはなくなった。だが、逸美は別の方法でアプローチを試みた。

逸美からすれば、謙一は一時的な気の迷いで自分を避けていると思っていた。あまりにもうまく行きすぎて立ち止まってみたくなったのかもしれない。男というものはいざ結婚となると尻込みするものなのだろう。喫茶店で話したときも、自分のことを素晴らしい女性と言っていたし、自分にはもったいないなどとも言っていた。

(バカね。そんなに自分を卑下することないのに。私たちうまく行っていたのだから、気持ちを楽にして私に任せてくれればいいのよ。仕事のストレスか何かでイライラしていたんじゃないかしら。私はちゃんと受け止めてあげられるわ。妻になるのだから、何でも言ってくれればいいのに)

逸美は、謙一の言葉をそのまま受け取っていた。別れの宣告以外は。(こんなに条件が合って、ピッタリなカップルもめずらしいくらいだと思う。私の結婚、私の未来は謙一さんとだけなのよ。もう一度、楽しかったことを思い出して欲しい)

着信拒否にされたことで、逸美はさすがにだんだん、謙一の別れの意思に気づかざるを得ないようになった。だが、自分が描いてきた将来が覆されることは納得いかない。二人の結婚式、二人の新婚生活、二人の子どもの姿まで想像できるのに、これといった理由もなくそれを否定されるなんておかしい。

(とにかく、もう一度話し合わなくちゃ。会って話して、もう一度前みたいにつき合うのよ)そのためには、とにかく連絡を取らなくてはならない。だが、携帯電話へのメールも電話も拒否されたら? 大事に取ってある謙一の名刺を取り出した。そして、一度だけ電話をかけたことのある番号に電話を掛けた。

「白崎と申しますが、高井さんをお願いします」
「お待ち下さい……。あ、あのう、恐れ入ります。高井は本日は終日外回りでして、直帰することになっておりますが」
「そうですか。では白崎から電話があったことをお伝えいただけますか? ご連絡お待ちしておりますと」
「お伝えいたします」
謙一は会社で逸美から電話があることを予感していたので、とりあえず不在を装った。

(いくら何でも、勤務先に電話を掛けてくるなんて。勘弁してくれよぉ。もう掛けてこないでくれ)と、祈るような気持ちだった。だが、毎日、逸美から電話が会社に掛かってきた。その度に居留守を使った。社内でも好奇の目で見られるようになり、居心地が悪かった。すると、今度は謙一宛に会社のファクスに手紙が届いた。いきなり個人宛のファクスを女性社員から手渡されて、文面を見た謙一は血の気が引く思いだった。

→・刑事罰……p.2
→→・罪はどちらに?……p.3
→→→・迷宮に閉ざされる……p.4