防犯/防犯小説

【最終回】男の欲望の全容が明らかに。そして終止符。 出会い系サイト~欲望の終末(3ページ目)

[6/6]盗撮と淫行で逮捕、起訴された男。その手口は想像を超えていた。悪質、卑劣な男のしたことのすべて。

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

人は悪いことをしようとするときに偽名を使おうとします。姓名それぞれのどちらか一文字だけを他の字にするとか一部だけを変えたりすることが多いといいます。「ゴトウ」と「マエカワ」ですが、「後」と「前」で二重性、裏と表、といったことを表現したかったんです。あと「サトシ」は職業から「教諭」というか、「教え諭す」ということで、やはりサヤカに教える、仕込む、といったことでしょうか。


――学校の教頭先生なのに、会社の副社長だと言ったりして。


これは、単純に学校とか教職にあるとは言えないから、企業の管理職だということにしたということです。いずれ校長になるための試験も受けるつもりだったでしょうから、いずれ社長、つまり校長にならなければ…という気持ちがあっただろうと。それに会社の副社長といえば信頼度も違うでしょう。ただサヤカはそういうことを言われても疑うことをしていない。

大人がそれらしく言えば、子どもは簡単に信用してしまうのでしょう。子どもはだまされるということにあまり慣れていないというか、大人ならあやしいと思っても、子どもは本当かどうか疑うことも確かめるすべも知らない。まぁ、逮捕されて事実を知らされるまでは疑っていなかったわけですから、そのまま終わっていたら、ずーっとそう思っていたのでしょう。きっと、そのまま現実を知らないでいたかったと思ったのではないでしょうか。



窃視症

――それにしても、サトシと偽ってサヤカに近づいたという点が理解できないです。目的というか、どういうつもりだったのでしょうか? 直接、自分が会ってしまえば簡単なのに。


これはあくまでも私見ですが、この男は盗撮歴10年といういわばその道をきわめた、というとおかしな言い方ですが、もう盗撮つまり盗み見る側としてはある意味しつくしていた、のではないかと思います。これは“窃視症”という病的なものだということはこれまでに説明してきていますが――もちろん病気だから許されるというものではありません――私が考えるには、その道をきわめたがために、今度は逆の立場の心理になってみたかったんじゃないかなということです。


――見られる側ということですか?


盗撮が常習であったということは、世界保健機構の設定した分類における“窃視症”にあたると思われます。

世界保健機構の設定した『国際疾患分類』改定第10版のGIDの分類基準(訳)

F65.3 窃視症  Voyeurism
衣服を脱ぐというような性的あるいは私的な行動をしている人びとを熟視する、反復的あるいは持続的な傾向。このことによって通常、性的興奮および自慰にいたるが、それは見られている人に気づかれることなく遂行される。


露出症

窃視症に対して、「露出症」というものがあります。

F65.2 露出症  Exhibitionism
親密な接触を求めたり、あるいはそう意図することなく、(通常異性の)未知の人あるいは公衆の面前で生殖器を露出してみせる反復的あるいは持続的な傾向。必ずではないが、通常露出時には性的興奮があり、ふつう自慰がそれにつづく。この傾向は、このような明らかな行動が長い期間みられないで、情緒的なストレスや危機のときのみ、現れることがある。

この男は、“窃視”をきわめたので、次に“露出”をしてみたかったのではないでしょうか。逆の立場になってみたかったのではないかと。しかし、社会的立場もありますから、いわゆる“露出魔”として実際にそのへんで露出するということは初めから選択にない。自分の立場は大事ですからね。


→出会い系の危険性
→→援助交際/親子関係

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