防犯/防犯小説

女子大生が見たリアルで恐ろしい夢 窓からの恐い夢~前編(2ページ目)

夏の夜、侵入被害を受けた“夢”を見た女子大生。生々しい感覚は現実と夢との境がわからない。身も凍るような恐ろしい夢の全貌、そして驚愕の事実が待ち受けている…

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

刃 物!

夢? それとも?
夢? それとも?
A菜は、

(財布を盗まれると困る!)

と、思っていた。男がバッグを床に戻した。財布を抜き取ったのだろうか。もうA菜には現実と夢との区別がつかなくなっていた。

動悸が激しくなり、恐怖心が高まる。背中を向けているが、男の気配はある。男がまた数歩進んでベッドに近寄ってきた。突然、肩に手が掛かった。

(声を出さなくちゃ、大きな声を! でも、声が出ない!!)

全身の力を込めて体を硬くして、肩に掛かった手に抵抗する。すると、いきなり、のど元をつかむように男の手がのびた。実際にのどを締め上げられるように感じる。余計に声は出せない。苦しいのに、目を開けることができない。耳元で

「騒ぐな。騒ぐと顔に傷が付くぞ」

と、男の押し殺したような声が聞こえた。

頬に冷たいとがったものが押しつけられた。カッターナイフか果物ナイフだろうか。その冷たい感触が、ますます心臓の鼓動を早くした。

(殺されたくない!) 

夢と現実がごっちゃになって、しかし、激しい恐怖で声は出せないし、目を開けることもできない。身動きもできないのだが、頭の中では

(これは夢だっ)

と、思っていた。

壁を叩く音

(声を出さないと。体を動かしたい! 殺されてしまう!!)

必死に手を伸ばして、壁を叩こうとした。

ドンッ

と、壁に何かがぶつかったような音がした。

しかし、自分の手は動いていない。確かに壁をこぶしで叩くか、肘がぶつかったような低い音がした気がしたのだが、自分が叩いたのではない。気がつくと首に掛かったはずの男の手もない。頬に当たっていた冷たい何かの感触もいつのまにかなくなっている。

ようやくなんとか目を開けたが暗闇である。人の気配はない。だが、窓から男が


→→夢だった?/現実…3p

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