【連載第1回】少女にとって恐ろしい日々の始まり「出会い系サイト~少女の誤算」
【連載第2回】大人のテクニックにはかなわない「出会い系サイト~男の手練」
【連載第3回】拒絶は、男の気持ちに火をつけた「出会い系サイト~少女の拒絶」
【連載第4回】男は、ついに少女の身元を割り出した「出会い系サイト~男の執念」
【連載第5回】名前を知られた少女の衝撃と絶望「出会い系サイト~少女の後悔」
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事情聴取
地元の警察署に母娘は出向いた。母がストーカー被害の相談をしたいと申し出ると、別室に案内された。母と同年輩らしき女性と二十代の女性の警察官の二人が対応してくれた。女性の警察官であることは少女をホッとさせた。いきさつをざっと話して、男から届いた手紙を出した。警察官は無言で便箋の文字を追うと、表情が厳しくなった。
「娘さんのほうにだけ、お訊きしたいことがありますので、おかあさんはちょっと」外で待つように言われ、通路のベンチを示された。少女は「大丈夫」と、小さな声でニッコリと母に微笑んだ。
何でも答えるつもりでいた少女だったが、男と会ったときのいきさつや一部始終を具体的に訊かれて、返答に困った。(ええ、そんなことまで?)と、とまどい、絶句した。とても他人には話せないようなことを尋ねられて、少女は顔を赤らめ、居心地の悪さを隠せなかった。
事実を把握するためには、恥ずかしかろうが、言いたくなかろうが、訊かなくてはならないのです。
警察官はどちらもやさしかったが、訊かれることに答えられなくなってきた。言葉が出ず、若い警察官に救いを求めるような目を向けると、(がんばって、大丈夫よ)というように励ましの視線を送ってくれた。
しかし、(そんなこと恥ずかしくて言えない、言いたくない)ということを何度も訊かれて、少女は口をつぐむようになった。何も答えないとなると、話は進まない。中断して、もう一度母が呼ばれた。
その後の対応について、メールが来たら削除しないでそのままにして警察に来るようにという指示の他、通学途中の気をつけかたや何かあったときにはすぐに連絡するようにといった注意事項を伝えられた。
責 任
警察署からの帰り道、少女は自分が犯罪者のような気分になり落ち込んだ。(来なければよかった…)と心の中で思ったが、もう後戻りはできない。母は娘の気持ちを知ってか知らずか、「つらいこともあるだろうけど、がんばらなくちゃダメよ。私たちだけでどうにかできることじゃないんだから」と、励ました。ほかにどうにもしようがないのだった。
(私は未成年なんだから、許してくれればいいのに…。ダメなのかなー)
都合の悪いときだけ、子どもになろうとしても…
たしかに未成年であり子どもなのだが、したことは大人の行為だった。そしてそれはしてはいけないことだった。17歳は未成年だが、女性は結婚もできる年頃である。していいこととしてはいけないことの区別はついているべきなのだ。