【連載第1回】少女にとって恐ろしい日々の始まり「出会い系サイト~少女の誤算」
【連載第2回】大人のテクニックにはかなわない「出会い系サイト~男の手練」
【連載第3回】拒絶は、男の気持ちに火をつけた「出会い系サイト~少女の拒絶」
【連載第4回】男は、ついに少女の身元を割り出した「出会い系サイト~男の執念」
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後悔
季節は移り変わり、受験勉強にも本腰を入れて真剣になってきたある日、件名が「N川K美さんへ」というメールが届いた。(誰かなー、こんな書き方するの。誰か友だちがふざけてるのかな)「N川K美さんへ。もう一度会うことを希望します。返事を待っています」
このときの衝撃、ショックを少女はいつまでも忘れられなかった。
(なんで、私の名前がわかったの!?)
いったいどうやって、自分の名前を知ったのか。頭から血の気の引く音が聞こえたように感じた。自分の鼓動が耳にズキズキと響く。
(どうして? 私をどこかで見つけたの? それとも知らない間につけられたの? 恐い!)
初めて、恐怖という感覚がわき上がった。
(つけられたのだったとしたら、住所もバレてる? ヤバイよ、これ。マジでヤバイかも)
といって為すすべもなくとりあえず、いつものようにメールを削除した。しかし、何度も、同様のメールが届く。その度に削除していた。少女はほかにどうにもしようがなかったのだ。
すでにこの時点でかなり危険な状況です。届いたメールは重要な証拠となりますし、発信人を特定するのに役立ちます。削除しないで、「ストーカー被害」として警察に相談すべきでした。しかし、「援助交際」が原因とわかっている十代の少女としては、相談するなど考えもつかなかったのでしょうね。
学校の行き帰りも気になって、周囲をよく見回すようになった。受験を控えているので、ほとんど遊びにも行かず、まっすぐ家に帰り、勉強に専念した。自宅で家族に囲まれているときが一番、安心できるのだ。それでも、メールの着信音に敏感になってしまった。携帯電話は必要最低限しか利用しないようにした。少女は激しく後悔していたのである。
後悔先に立たず。
絶望
ある日、帰宅すると母親の様子がおかしかった。自分の顔を見ないようにしている。(何かあったのかな?)母の様子が気にはなったが、その夜もいつものように、予習復習のほかに、受験勉強にも熱心に取り組んだ。翌朝、朝食を終えてから、登校する準備をしていると母親が声をかけてきた。妹はクラブの朝練があるので、早めに家を出ていた。
「おねえちゃん、ちょっと」
「なーに? どうしたの?」
「あのね、今日、ちょっと学校お休みしてくれる?」
「ええ? どうして? 何があったの?」
「ちょっと、あなたに話があるから。私が学校に電話するわ。待ってて」
学校へ「軽い風邪をひいたようなので休ませる」と電話連絡を終えると、リビングルームのソファに座るように言って、ドアを閉めた。手に封筒を持っている。
「そこに座って」
「……」
無言でソファに座ると、隣りに母が座った。
「おねえちゃん、正直に言って欲しいことがあるの」
「なーに?」
「あなた、援助交際って、したことある?」
こんなことを自分の娘に聞かねばならない親って、辛い…。
突然の母の言葉に、少女は息が止まった。
「まさか、そんなことしてないわよね?」
「……」
答えようがないので、沈黙を続けた。世界が一気に色を失って、そのままフリーズドライしてしまったように感じられた。のどがカラカラに渇いた。
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