【連載第1回】少女にとって恐ろしい日々の始まり「出会い系サイト~少女の誤算」
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てれん【手練】 人を思うままに操りだます技巧。手管(てくだ)。
てれん-てくだ【手練手管】 〔同義の語を重ねて意味を強めた語〕「てれん(手練)」に同じ。
(しゅれん【手練】 (1)熟練した、みごとな手並み。(2)練習して練れること。)「大辞林 第二版」より
車中にて
タクシーに乗り込んで、男が行く先を聞いた。少女は少し考えて、自宅から徒歩で10分ほどの最寄り駅を告げた。(歩いて10分の距離があるから、駅なら大丈夫)と思ったのだ。「運転手さん、じゃ、○○駅のほうまで頼むよ」
「承知しました」
少女は窓の外を見て、男のほうを見ないようにしていた。とくに手を握ってくるとか、ベタベタしてくるわけでもない。さすがに運転手の手前、見苦しい真似はできないと男は思ったのか。しかし、普通に考えたらどういう関係の二人に見えるのか。
孫と祖父の年齢差だが、肉親のような親しげな感じでもない。バックミラー越しにチラリと二人を見やった運転手の視線が少し気になる。男は何気ない風を装って、少女に話しかけた。
〈車内での会話〉
「○○駅というと、学校は○○高校かな。それとも△○高校?」
タクシーの中での世間話風であり、あまりにも普通にさりげなく聞かれたので、少女はウソをつくことができなかった。
「○○高校」
「そう! それはとても優秀だねぇ。そうか、頭のいいお嬢さんなんだなぁ」
本当に優秀で頭がよければこんなことはしないのではないか?
優秀、頭がいい、お嬢さんなどと言われて、悪い気はしなかった。つい、学校名を明かしてしまったが(学校がわかったところで、名前を教えなければ大丈夫。だって女子生徒は何百人もいるもん)と軽く考えて、話に乗ることにした。まだ道のりも長いのだ。また狭いタクシーの車内で気まずさを感じているよりは、適当に話をしていた方がまぎれる。そして、押し黙ったり、無視したりすることもできない、やはり真面目な少女だった。
「そんなことないですよ」
「いやいや、優秀だよ。そうか。勉強もできる方なんでしょ?」
「普通です」
「学科は何が得意なの?」
「英語が好きかな」
「ああ、それはいいことだね。これからは英語ができないと。将来は外国に行って仕事をしたりもできるだろうね。夢はキャリアウーマンかな」
「まだ考えてないですけど。でも、海外には行ってみたいたいです」
「たいしたもんだ。頭も良くて、器量も良くて。ご両親は自慢だろうね」
そのご両親だって自分の子どもの年代である。そのご両親の自慢の娘に何をしたのか? まったく罪の意識も自覚もないのだろう。
最後のページで「ストーカー/心理と対策プチ講座Vol.1」もあわせてご覧下さい♪