2002年8月2日イギリスで一人の少年がその犯した罪により、12年以上の不定期刑の判決を下されました。17歳の少年が起こした老女殺害事件は、きわめて特異な理由によるものでした。
「吸血鬼」ヴァンパイアの伝説は、少年にとって魅惑的なものだったのでしょう。人の血を飲めば、永遠の命が得られると信じたのです…。
[The Guardian : Helen Carter記者の記事より~]
モールドクラウン裁判所の被告席でさめざめと泣く17歳の少年の件で、陪審は評決に達するまで3時間も協議しました。裁判官はすべての証拠は、少年が吸血鬼を信じて、老女の血を飲めば永遠に生きられると思ったことをしめしていると言いました。
昨年2001年11月24日、イギリス・ウェールズ北部のアングルシー島 the island of Anglesey(ロンドンの北西方面、チェスターやリバプールから西、アイルランド首都ダブリンのほぼ真東)で、90歳の老女が自宅でテレビを見ていたところ、少年が裏口のガラスを破って侵入。22回も刺して殺害。その後、心臓を取りだして新聞紙で包みキッチンから持ってきたほうろうの鍋に入れて遺体の横に置き、脚の切り口から血を流し出し、その鍋に入れて、それを飲んだというものです。また、そばに火かき棒を十字に置き、ロウソクも添え「黒ミサ」の用意をしていました。
老女は耳が遠く目もあまり見えなかったのですが、活動的な人だったといいます。
裁判官は「君がなぜこんなことをしたのか、理解に苦しむが、「吸血鬼伝説」にとりつかれ、他人の血を飲めば永遠の命が得られると信じたということ、その思いにとらわれ抵抗できなかったということだろう」そして「君は永遠の命を望んだ。しかし、君がやったことは、他人の命を奪うという残虐な結末と、自分自身も服役することになったということだ」と彼に話しました。
弁護側は2人の心理学者が、少年にはなんらおかしなところはないと法廷で話しましたが、裁判官は表に出ない精神的疾患が残されている可能性があると言いました。
公判中、検察は、少年は昨年秋から「吸血鬼」に魅せられ、犯行の2ヶ月前にはドイツの交換留学生(当時16歳)の生徒をヴァンパイアだと思い、彼女に彼の首を噛むようにと迫ったことがあった事実を述べました。警察が呼ばれ、彼は逮捕されながらも「俺の首を噛んでくれ」と繰り返していたということです。
証言をした17歳の少女は、判決が出た後、涙にくれて法廷を去りました。少年はのちに、その町ランフェアプゥルは老人がたくさん住んでいて、もし誰かが死んでも誰も気にしないから、吸血鬼にとって完璧な場所だと言っていました。法廷で彼は、「マリファナをやっていたから何も覚えていない」と言いました。
検察は法廷で、殺害現場で見つかった血液と少年のDNAが一致したこと、足跡が少年のものと一致したこと、また、少年の部屋にあったナイフに老女の血がついていたことも明らかにしました。