防犯/詐欺を防ぐ

ぼったくり被害にはどうして遭うの? カモはウマイ話がお好き(3ページ目)

ぼったくりの被害に遭うことは、経済的な打撃だけでなくときには暴力行為を受けることもあります。おいしい話を持ちかけられて真に受けてしまえば、あとにはコワイ結果が待っています。

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

クレジットカード!

「クレジットカードでもいいんですよ」

と、その男がT橋さんのカードをひらひらさせました。

「銀行のキャッシュカードはないのか」

「入ってないですね」


人の財布を勝手に探りながら男が言いました。銀行のカードは妻が持っているのです。少しホッとしたT橋さんでしたが、

「じゃあ、カードで支払ってもらおうか。おい、サインしていただけ」

はい、はいと痩せた男がカードを持って部屋をいったん出ていきました。伝票を持って戻ってくると、手回しよくボールペンも持っています。

「ちゃんとサインしてくださいね、あ、ここですよ」

痩せた男は低姿勢で、サインする場所を指示しました。

(サインなんかしたくない。でも、そうしないとここを出られない。どうしよう。Y田は大丈夫かな)

いっそのこと、走って逃げようかと思いましたが、部下のY田さんのことが気がかりです。

ひとりだけ残して逃げるというのも、先輩としては申し訳ないし、怪我をさせられたり、まさか殺されでもしたら大変です。いやいやながらもサインしましたが、カードを返してくれたので少し安心しました。

服を返されて急いで着込みました。気がつくと女の姿はありません。Y田さんはどうなっているのでしょう。部屋を出ると誰もいません。店を出て周囲を見回しても先ほどの客引きの姿は見えません。Y田さんが心配で、しばらく待っていると、がっくりとうなだれたY田さんが出てきました。

「大丈夫か」

「T橋さんこそ」


二人で、歩き出しながら事情を話し合いました。Y田さんも同じような手口でしたが、銀行のキャッシュカードを持っていたので、暗証番号を言わされて、男がどこかのATMで現金を引き出してきたというのです。

「いくら払わされたんだ」

「まけてやるって言われて、10万円ちょうどだって。T橋さんは?」

「おれ? おれは…おれはいくらなんだろう? クレジットカードで払わされたんだ」

「明細書は?」

「くれなかったよ」

「じゃあ、いくら取られるかわからないんですね」

「そうだな…でも、君が10万円ならこっちもそうだろ」

「どうしましょう。警察に行きますか?」


→高い勉強代

  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます