誘われてフラフラ…
給料日の夜、44歳の男性T橋さんは同僚や部下たちと飲んで、いい気持ちになって歓楽街を歩いていました。風俗関連の店が立ち並び、通りはそこそこにぎわっています。呼び込みの声もあちらこちらで聞こえます。あらわな姿の女性の写真が張り付けられた立て看板があり、ついニヤニヤとしてしまいます。
「お客さん、いい女の子がいますよ」
と声をかけられても、
「いやぁ、いいよ、おれは」
などと、言いながら一緒に歩いていた気の合う若い部下のY田さんに笑いかけました。
「君は若いから、行けば?」
「いや、T橋さんだってまだお若いじゃないですか」
「おれか? いや、おれもそりゃあ、まだ若いけどな」
と、二人でじゃれあうようにぶらぶらと歩いていました。
「そこのお二人さん、いかがですか」
ビルの間の小道から、男が近づいて来ました。
「かわいい女が待ってますよ、頼みますよ」
と、両手をすり合わせるようにしました。
「すぐそこです。ちょっと引っ込んでいるんで、今日はダメなんですよ。女の子がかわいそうなんで、寄ってくださいよ。頼みます」
「いやあ、ダメだよ、金ないよ」
「そんなこといわないで。安くしときますから」
「安くって、どれぐらい安くしてくれるの?」
と、Y田さんが男に問いかけました。
「お二人で来てくれるなら、勉強しますよ」
二人で、といわれたのでT橋さんは
「なんだ、おれも一緒か? でも、いくらなんだ」
と、まんざらでもない様子です。
「ウチはね、明朗会計が売りなんですよ。120分で一万五千円です。それだけです」
「高いなあ」
「いや、ですから、お二人ご一緒なら、お一人様90分で1万円ポッキリにしておきます」
(1時間半で1万円か。悪くないな)
「本当にいい子がいるの?」
「もう、かわいい子だらけ。今ちょうど二人、ナンバー2と3があいてます。いい子たちですよ、顔を見てやってくださいよ」
Y田さんはというと、鼻の穴をふくらましてかなりその気のようです。
「T橋さん、行きましょうよ」
T橋さんも
「そうかぁ」
などと言いながら、男についていきました。
→待ちかまえているもの
→→クレジットカード!
→→→高い勉強代