使い勝手最高&エコなお掃除アイテム「セスキ炭酸ソーダ」
セスキ炭酸ソーダを使ってウキウキ大掃除
それでなくても、どんどん忙しくなる年の瀬。クリスマス近辺では人寄せごとの計画がある方だって、少なくないことでしょう(ガイド記事『「ホームパーティー向き」な住まいの作り方』はこちらから)。前もってお掃除しておくに越したことありませんよね?
そこで今回は、「プレ大掃除」に大活躍間違いナシの助っ人「セスキ炭酸ソーダ」をピックアップし、ご紹介したいと思います。
え? セスキ……何その化学薬品くさいネーミングは。怖くない? そんなの使うの面倒くさくない? NO、NO、NO! 「セスキ炭酸ソーダ」は使い勝手最高、めちゃくちゃラクかつエコ! ガイドは愛用してもう5年以上になります。しかも、ガイド提唱のゆるゆる「ロハそうじ」における、伝家の宝刀的存在なんですよ。ずばり使って驚け!です。
「セスキ炭酸ソーダ」にまつわるうんちくから使い勝手まで、【基礎編】【応用編】の2回に分けて、キッチリご説明したいと思います。
1:「セスキ炭酸ソーダ」って何?
セスキ炭酸ソーダ=Na2CO3・NaHCO3・2H2Osodium sesquicarbonate
一般的に「セスキ炭酸ソーダ」といわれているのは炭酸水素ナトリウムと炭酸塩の複塩で、「セスキ炭酸ナトリウム」「トロナ」「ウラオ」という呼ばれ方をされることもあるものです。
……なんて小難しい説明を「『セスキ炭酸ソーダ』なんて初めて聞いた!」という方が聞いたら、即、意識が遠くなって「もういいです」なんて言いたくなってしまいますよね。私もです。
ですので、ものすごーく平たく説明してしまいますと「重曹に似ているけど、もうちょっとアルカリ性の強い物質」。友達に説明するときには「重曹モドキの白い粉」と言ってしまうこともあります。「あ、重曹モドキなの?」と思えば、少しはとっつきやすく感じられるのでは?いかがでしょうか?(この「重曹に似ている、けど」の部分の詳細は次項に譲ります)
この「セスキ炭酸ソーダ」、水溶液のpHは9.8で、弱アルカリ性です。特徴は「水に溶けやすい」こと。比較的冷たい水にもサッと溶けます。
そして粉(白い結晶)状でも、水溶液でも、あまり臭いは感じません。結晶はサラサラしていて、扱いやすく、長い間保管していても揮発したり変色するなどの変質もしにくいのです。
2:「セスキ炭酸ソーダ」と「重曹」の違いって?
「重曹」。最近ではいろいろなメーカーから、さまざまなグレードのものが売り出されています。ヘビーユーザーは10キロ、20キロという単位で購入! 手軽に試しに使ってみたいなら100均ショップで調達しても。※この商品は「ダイソー」で購入。※クリックすると「ダイソー」公式HPにジャンプします
・「重曹」NaHCO3
sodium bicarbonate, baking soda
化学名を炭酸水素ナトリウムという。
別名:重炭酸ソーダ
・「セスキ炭酸ソーダ」Na2CO3・NaHCO3・2H2O
sodium sesquicarbonate
化学名をセスキ炭酸ナトリウムという。
・「炭酸塩」Na2CO3
sodium carbonate, washing soda
化学名を炭酸ナトリウムという。別名:炭酸ソーダ
※状態によって呼び名が異なる
※水溶液のpHは11.2で、やや強いアルカリ性を示す
先ほど「『セスキ炭酸ソーダ』は、炭酸水素ナトリウムと炭酸塩の複塩」という説明を読んでクラリとした方は、もう一度上の説明をあわせて読んでみて下さい。何かちょっと、違和感を覚えられた方。その感覚は正解です。
「重曹、セスキ炭酸ソーダ、炭酸塩」と呼び習わすことの多いこれらの物質は、時と場合によって(商品になったところでや、このコラムのような説明文などなどにおいて)、通称で呼ばれたり化学名で呼ばれたり、どうもその基準はまちまちのよう。実のところ、説明している私ですら、ときどきどれがどれだか、ごちゃごちゃと混乱してしまうくらいなのです。
ですので「『セスキ炭酸ソーダ』は、炭酸水素ナトリウムと炭酸塩の複塩」という一文も、ちょっとだけ分かりやすく言い換えると、「『セスキ炭酸ソーダ』は重曹と炭酸塩の複塩」となり、イメージしやすくなりますよね。
「塩」といってもお料理に使う「おシオ」ではありませんので念のため!
また、水溶液のpH(ペーハー:水溶液の性質を表す単位。水溶液中の水素イオン濃度を示す)も、
・「重曹」pH8.2
・「セスキ炭酸ソーダ」pH9.8
と異なり、「セスキ炭酸ソーダ」のほうがアルカリが強いのです。
「でも異なるっていったって、たかが1違うだけでしょう?」と思うかもしれませんね。でも、pHの数字が1違うと水素イオン濃度が10倍変わってきます。2違うと10の2乗=100倍の差になるのです。軽視できません。
つまり、つまり……「セスキ炭酸ソーダ」と「重曹」の違いとは?
・「セスキ炭酸ソーダ」には、「重曹」にはない「炭酸塩」の性質が加わっている(そこが違う)
・「セスキ炭酸ソーダ」の方がアルカリ性が10倍ほど強い=汚れ落とし効果が強い
ということができるのです。
3:「セスキ炭酸ソーダ」の、どこがすごいの?
以上のように「セスキ炭酸ソーダ」について説明すると、よく言われるのが「重曹よりちょっとpHが高いだけなら、重曹を使えばいいんじゃないの?」ということ。そうですね。結論から言いますと、お掃除に「研磨」を多く取り入れたい方、「煮洗い」派な方、手肌が弱めで、ゴム手袋などが苦手な方などは、お掃除には「重曹」で良いと思います。充分だと思います。
そもそも、なぜ「石けん」でも「洗剤」でもない「重曹」や「セスキ炭酸ソーダ」が汚れ落としに役立つのかといううんちくは、ガイド記事「酢と重曹で大そうじ!」に詳しいのですが、ざっくり説明しますと、
・「重曹」「セスキ炭酸ソーダ」の性質であるアルカリ性には、汚れの主成分にある脂肪酸(油脂が分解されたもの。皮脂・垢や台所の油汚れも)やタンパク質(台所汚れに多く含まれる。血液などにも)を溶かす効果があること。
・汚れ落としの際に、「重曹」「セスキ炭酸ソーダ」(アルカリ)と汚れの油(酸)とが化学反応して微量に石けん成分が合成されること。
がその理由になります。もっと詳しく知りたい方は、上の記事にも目を通してみてくださいね。
「炭酸塩」。ソーダ灰という呼び方もされます。水に溶けやすく湿気やすく、強アルカリで腐食性があり、一般家庭ではあまり使わないほうが安全です。中華麺やコンニャクに食品添加物として使われます。粉石けんに配合されることも多いです。※クリックすると「ケンコーコム」商品ページにジャンプします
ここで気をつけなければならないのは、「重曹」の水溶液(重曹水)でも加熱するとアルカリ性が強くなるので、扱いには注意が必要だということです(目安としては50度を超えるともう危険。扱う際には必ずゴム手袋をしましょう! 「セスキ炭酸ソーダ」溶液を加熱しても同様です)。
また「セスキ炭酸ソーダ」の特徴として「水に溶けやすい」という点が挙げられます。裏を返せば、「重曹」のように穏やかなクレンザーとしての効果は期待できないということになります(『重曹ペースト』のような使用法もちょっとできません)。
けれども、ここでもう一度裏を返しますと、「重曹」はいささか水に溶けにくいのです(8%の濃度で飽和水溶液になってしまうよう。実際に水に溶かして試してみると自明です)。溶かす水の温度にもよりますが、水溶液を作ろうとしても溶け残りが気になったり、スプレーボトルなどの場合「詰まり」が起きることがあります。
けれども「セスキ炭酸ソーダ」はきわめて水に溶けやすい性質を持っていますので、「水溶液スプレー」として活用する分には「セスキ炭酸ソーダ」のほうが扱いやすいといえるでしょう。
同じ文脈で、洗濯に使う場合(布ナプキンに付いた血液を落とすのに「セスキ炭酸ソーダ」を愛用している人は多いはず)も、溶け残りをほとんど心配する必要がありません。
また、水に溶けやすく溶け残りが無いとはいえ、「重曹」よりアルカリ性が強い分、お掃除などに使う量はごく少量で済みます。
もともと「重曹」「セスキ炭酸ソーダ」のような「アルカリ(洗浄)剤」は、環境負荷の小さい無機塩類(正確ではありませんが、ざっくり言えばいわゆるミネラルのこと)なので、通常使うような量であれば一般的な石けんや合成洗剤よりも、心置きなく使うことができるのです。
「セスキ炭酸ソーダ」でおよそ1%の水溶液を作るなら、水500ccに小さじ1杯が目安になります。本当に微量です(汚れに応じて濃度は加減しても良いと思います。ちなみにガイドは台所用の水溶液スプレーは5%で作っています。人によっては手荒れするので気をつけたほうが良いと思いますが……などなど、詳細な使い方は次の記事で!)。
「大掃除!!セスキ炭酸ソーダ使いこなし術【応用編】」に続く
【参考サイト】
・生活と科学社「石けん百科」
・京都大学理学部化学教室 吉村洋介のホームページ内「セスキ炭酸ナトリウム(トロナ)について」
【参考文献】
『暮らしの中の洗浄』(辻薦著/地人書館/1994年)
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