ところが、金木犀の香りを嗅ぐとトイレを連想する人もいます。その理由とともに、金木犀の名前の由来や花言葉、楽しみ方などもご紹介します。
Q.「金木犀はトイレの香り」と言う人がいて驚きました。何か理由があるのですか?
その理由を詳しく説明します。【回答】トイレの臭い隠しに金木犀の香りを活用していた時代が長く、昭和世代には「金木犀はトイレの香り」という記憶が残っているからです。
金木犀とトイレの関係
金木犀の強く持続する香りは、トイレの臭いを隠すのに大変適していました。とりわけ、「汲み取り式」トイレ(便器の下に設置された便槽に排泄物を溜めて定期的に汲み取る仕組みのトイレ)が主流だった頃は、ひどい悪臭でした。江戸時代には金木犀の花を吊るしていたので、「雪隠(せっちん=便所)に吊るす花」、明治~昭和初期にかけては「便所花」と俗に呼ばれるほど定着していました。昭和初期にはトイレの防臭・消臭剤が登場しましたが、当初は機能性が求められていたのでツーンとする化学臭が強いタイプ。昭和50年代に香りも楽しめるタイプの芳香剤が普及すると、金木犀の香りがスタンダードとなり、「金木犀=トイレの香り」という印象が定着。また街路樹や公園の植栽として人気があった金木犀は、公衆トイレの近くに植えられることも多かったため、「トイレの香り」というイメージがさらに強化されました。
それが平成になると、トイレの消臭技術が発達したことや、トイレの芳香剤の種類が多様化したことにより、次第に「金木犀はトイレの香り」というイメージは薄れていきました。
しかし、人間の嗅覚は記憶と強く結びついており、とくに子どもの頃に嗅いだ香りが記憶の中に残る傾向があります。昭和世代には、金木犀の香りをトイレで経験した人が多いため、「金木犀=トイレの香り」というイメージが根付いているのでしょう。
金木犀の香りはリラックス効果が高く、不安感やイライラを鎮めてくれるそうです。最近では香水やアロマとして人気があり、昭和世代の間でも「金木犀=トイレの香り」というイメージは薄れつつあります。
金木犀の名前の由来と花言葉
「金木犀」という名前の由来は、樹皮が動物のサイ(犀)の皮に似ていて、金色っぽいオレンジ系の花を咲かせるからだといわれています。同じモクセイ科の仲間には、白い花をつける「銀木犀(ギンモクセイ)」や、薄い黄色の花をつける「薄黄木犀(ウスギモクセイ)」もあります。 代表的な花言葉も紹介しましょう。- 香りのすばらしさに比べて花が控えめなところから「謙虚」
- 一度嗅いだら忘れられない心に残る香りなので「初恋」
- 金木犀の香りに酔いしれるから「陶酔」
- 隠すことのできない金木犀の強い香りから「真実」
- 中国で位の高い女性の香水に使われていたことから「気高い人」
金木犀の花は古くから食用として利用
金木犀は中国原産で、中国ではモクセイの花を「桂花(けいか)」と呼びます。桂花は食べ物や飲み物にも使われており、たとえば金木犀の花を砂糖で煮たジャム「桂花醤」、花をシロップ漬けにした「糖桂花」、白ワインに漬け込んで熟成させた「桂花陳酒」、お茶とブレンドした「桂花茶」などがあります。
その香りは「千里先まで届く」と言われるほど、かぐわしい金木犀。可憐な花は、風に吹かれて落下するとまるで花の絨毯(じゅうたん)のよう。道行く人に秋の訪れを知らせてくれる金木犀を、この秋も楽しんでくださいね。