お金の悩みを解決!マネープランクリニック/家・住まいにかかるお金の悩み

31歳、貯金1200万円。購入した3300万円の新居が住みづらく「うつ」になりそうです……(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、3300万円の新築一戸建てを今年購入した31歳の主婦の方。現在、その新居が原因でうつ気味とのこと。できれば、マンションに買い替えたいと希望していますが……。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 売却額がどの程度かでマネープランが変わる

新居の住みにくさが、実際にどのような状況なのかはここでは不明ですが、それが原因で、うつ気味になるのであれば、買い替えは急いですべきだと思います。健康を害して、働けなくなってしまうのであれば、それこそ大変です。
 
具体的に考えてみましょう。まず、自宅を売却することになります。データでは売却した場合の相場は、条件の近い住宅で2500万~3000万円とのこと。まず、ここがひとつの大きなポイントです。いくら売却できるかで、その後のマネープランが大きく変わるからです。
 
もちろん、高く売却できるかもしれませんが、2500万円を割り込む可能性もあります。また、業者を介しての売却には手数料が発生します。2500万円の売却で、上限額は消費税込みで90万円ほど。一方、住宅ローンの残高ですが、繰上返済を50万円されましたが、それでもローン残高は現時点で2700万円超。したがって、2800万円程度で売却できれば、その時点でローンはほぼ完済されますが、それ以下であれば、当然ローンは残ります。
 
ここではリスク対処も考慮して、2500万円を割り込んで2300万円程度の売却を想定してシミュレーション(便宜上、設定として現時点で売却、すぐに新居購入)をしてみます。結果、残債が500万円とすれば、これを手持ち資金から一括で支払って、貯蓄残高は700万円となります。
 

アドバイス2 65歳までは生活費で赤字を出さない程度に働く

希望物件は3000万円前後のマンション。購入時に頭金300万円、他に諸費用100万円が発生したとします。借入額は2700万円。借入期間は30年(完済時に夫65歳)、金利は全期間固定1.5%とします。これで返済は約月9万3200円。マンションですから、管理費・修繕積立金が発生します。これをやや高めに2万5000円とすると、毎月の住宅コストは約11万8200円となります。
 
その他の生活費が現在と変わらなければ、生活コストは月4万3200円アップ。現在の毎月の貯蓄は10万円+余った分とのことですから、約5万6800円+余った分となります。月で変動もあるでしょうが、平均6万円貯蓄できるとすれば、年間72万円。ボーナスからの貯蓄は、固定資産税(年間10万円程度)が新たなコストとして発生しますが、40万円は貯蓄に回すこととして、計112万円。
 
このペースが維持されれば、ご主人が定年までの25年間で2800万円。これに、今ある貯蓄300万円(頭金と諸費用を差し引いた額)を加算して3100万円。さらに退職金を加えた額が、60歳の時点での手持ち資金=老後資金となります。
 
60~65歳になるまでの5年間。ご主人が再雇用、奥様がパートを継続すれば、貯蓄はできなくても、赤字にはならない程度の家計収支は可能と考えます。
 
65歳以降は公的年金支給となります。このとき住宅ローンは完済していますので、今と他の生活支出が同じなら、月14万円。これにボーナスから捻出している支出を月割りで加算して月17万~18万円。この金額なら、公的年金だけで生活費がカバーできそうです。住宅リフォーム・修繕費、医療費、介護費用を予備費として1000万円を確保しても、2000万円超が余る計算になります。
 
そう考えれば、ポイントとなる売却額がかなり低いと想定しても、老後資金までほぼ心配しないで済むことになります。60歳以降、生活費が赤字となっても、例えば、月3万円赤字でも40年間で1440万円ですから、老後資金でカバーできます。もちろん、途中で繰上返済も可能ですから、それにより、さらに老後の家計に余裕が生まれます。
 

アドバイス3 ローンが残債となっても納得できるかどうか

結論として、希望される物件への買い替えは、売却価格が厳しめのケースでもマネープラン的には十分可能だと思われます。
 
気になる点としては、売却してもまだローンが残った場合、そのことを心情的に納得できるかどうか。1年も住まなかった自宅を手放して、さらに多ければ500万円近くのコストを負担する可能性もあります。それを必要経費と割り切れるかどうか。
 
納得できる金額まで売却しないという方法も当然あります。それで結果的に、売却が長引くとすれば、それだけ奥様が我慢を強いられることになります。そこをどう考えるか。ただし、長引く分、貯蓄は確実に増えます。
 
もうひとつ、新居が決まってから売却となれば、主なコストは引越し費用でしょうが、売却が優先され、条件に合う新居が見つけられないなどの理由で、引越しまで間が空けば、その間、賃貸住宅を利用することになります。そのコストも考慮しなくてはいけません。その意味で、売却と新居購入の時期もポイントになるでしょう。
 
家計は、大変上手に管理されています。ただ、保険について、ご主人の終身保険にあまり必要性はないでしょう。貯蓄代わりとのことですが、月2万円は貯蓄に回し、繰上返済に回した方が効率的だと思います。払済保険にすれば、今まで支払った保険料も無駄にはなりません。
 
ともあれ、奥様の体調もありますので、早めに売却と新居探しについて行動されるといいのではないでしょうか。
 

相談者「引越ししたい」さんから寄せられた感想

いつも拝読しているマネープランクリニックで我が家の家計を診断してもらえてうれしい限りです。まずは、住み替えが可能ということがわかり安心しました。客観的に診断してもらったことで少し冷静になれたような気がします、すぐに引越ししなくてもタイミングを見計らって売却したいと思います。基本の家計はお褒めの言葉をいただいたので、普段の生活をもう少し贅沢して心身ともに豊かに暮らしていきたいです。本当にありがとうございました。貴重な経験ができて本当にうれしいです。

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教えてくれたのは…… 
深野 康彦さん  
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/清水京武

 
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