北米・中米のおすすめ世界遺産
メキシコの世界遺産「古代都市チチェン・イッツァ」のエル・カスティーヨ。春分と秋分の日の年2回、羽を持つ蛇の神ククルカンがこのピラミッドに舞い降りる ©牧哲雄
パナマからメキシコ南部、カリブ海地域は緯度が低く、熱帯・亜熱帯でジャングルやサバンナと呼ばれる熱帯性の草原が広がっている。ジャングルの世界遺産としてはパナマの「ダリエン国立公園」、サバンナの世界遺産にはコスタリカの「グアナカステ保全地域」などがある。
アメリカの世界遺産「イエローストーン国立公園」の鉱泉。カラフルな色彩はバクテリアによって作り出されている
大陸北部は冷帯から寒帯で、カナダの国土の多くが北極圏だ。氷河や雪原の世界遺産としてはアメリカ、カナダ両国に広がる「クルアーニー/ランゲル - セント・イライアス/グレーシャー・ベイ/タッチェンシニー - アルセク」などがある。
人類が北米に達したのは15,000~20,000年前。氷河時代氷期には海面は現在より100mほど低く、ユーラシア大陸と北米大陸の間にあるベーリング海は陸地だった。アラスカは氷河に閉ざされていたが、温暖化すると次第に氷が溶け出して、陸続きでありつつ無氷回廊が現れた絶妙なタイミングで、アジア系のモンゴロイドが北米に入ったようだ。
独特の楕円形をした、メキシコの世界遺産「古代都市ウシュマル」の魔法使いのピラミッド
16世紀になるとスペインが侵略を開始する。1521年にアステカが滅び、1697年にはすべてのマヤ都市国家が消滅した。世界遺産となった植民都市には、コロンブスが切り拓いたドミニカの「サント・ドミンゴ植民都市」、奴隷貿易の拠点となったキューバの「トリニダードとロス・インヘニオス渓谷」、メソ・アメリカ支配の拠点となったメキシコの「メキシコシティ歴史地区とソチミルコ」などがある。
では、北米の代表的な15件の世界遺産を紹介しよう。なお、アメリカの世界遺産「ハワイ火山国立公園」については記事「オセアニアの世界遺産」で紹介する。
メサ・ヴェルデ国立公園
メサ・ヴェルデ最大の住居跡、クリフ・パレス。遺跡は14世紀に突然放棄されており、その理由も謎に包まれている
メサは台地、ヴェルデは緑を意味するスペイン語。コロラド州南西部、標高2,600mに位置する台地状の断崖絶壁を掘り込むようにして、約600もの住居跡が残されている。岩窟集落は12世紀前後からアナサジ族によって造られたもので、彼らは台地の上でなく、わざわざ絶壁の中で暮らしていたようだ。理由は諸説考えられているが、台地上に農地を確保するため、敵から身を隠すため、岩窟内の方が気候的に暮らしやすかったためなどといわれている。