パンタナール保全地域
パンタナールとはポルトガル語で「大湿地」。雨季の域内は川や湖、池、湿地がほとんどで、それ以外は草原が多い
雨季になると大洪水によって総面積の多くが水没してしまう天然水田のような環境で、運ばれてくる豊かな栄養分を背景に数多くの動植物が独自の生態系を築いている。パンタナールは日本の本州ほどの大きさがあるが、その核心地域が世界遺産に登録されている。雨季はパラグアイ川が毎年大氾濫を起こす一方、乾季には極端に降水量が減ると同時に気温が下がり、そのためジャングルになることがない。渡り鳥にとっても貴重な湿地で、ラムサール条約登録地でもある。
カナイマ国立公園
世界一高い滝、エンジェル・フォール。カナイマ国立公園の中心部にあるギアナ高地のテーブルマウンテン、アウヤンテプイから落下する水は風に舞って散ってしまうため、滝壺がない
6億年前、地球上の大陸は超大陸ゴンドワナにまとまっていた。ところがギアナ高地周辺を中心に超大陸は分裂を繰り返し、現在の姿になった。ギアナ高地の地層は約20億年前のもので、隆起した土地が風雨に削られて台地状に残り、テーブルマウンテンが100近くも立ち並ぶすさまじい景観を造り上げた。テーブルマウンテンの山頂と麓の標高差は1,000mにもなり、隔絶された環境のおかげで山頂付近にはゴンドワナの名残を持つ動植物が暮らしている。
クスコ市街
剃刀一枚通さないといわれるサント・ドミンゴ教会の石組み ©牧哲雄
インカの人々は太陽神を祀り、太陽のように輝く金を尊び、首都クスコを金で覆って飾り立てたという。16世紀にエル・ドラド=黄金郷伝説を追ってインカを訪れたスペイン人によって国は滅亡し、多くの黄金がスペインへ運ばれ、神殿や宮殿はカテドラルや教会に建て替えられた。建物は破壊・改築できたが精巧な石組みは壊すに壊せず、そのまま土台として使用された。スペインが建築した建物は大地震によって度々崩れたが、インカの石組みはビクともしなかったという。
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マチュピチュの歴史保護区
ワイナピチュから見たマチュピチュの遺跡。段々はアンデネスと呼ばれる畑で、霧や雨による豊かな水と高度な水利システムのおかげで山上生活が可能になった
周囲を断崖に囲まれた天空の峰、マチュピチュ。山頂付近にインカ時代の都市遺跡が残されており、美しい山岳風景に見事に溶け込んでいる。15世紀に建築されたこの遺跡は4~5世紀も発見されず、ハイラム・ビンガムが1911年にたどり着いて知られるようになってからも、いつ、誰が、なぜこんな場所に建てたのか解明されていない。山頂に水をもたらすアンデスの深い霧が豊かな生態系を育んでおり、文化・自然両面の価値が認められて複合遺産となっている。
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ワスカラン国立公園
ペルー、1985年、自然遺産(vii)(ix)南米第2の高さを誇る標高6,768mのワスカランを頂点に、標高3,000~7,000m近くまでの山々を抱く国立公園で、数百もの氷河や湖を持ち、ペルーの水源となっている。100年に一度しか開花しない植物プーヤ・ライモンディや、宝石にたとえられる世界でもっとも貴重な毛を産出するビクーニャなど、アンデス特有の動植物が数多く見られるほか、コンドルなど絶滅危惧種も多い。近年の温暖化によって氷河の2割以上が後退しているといわれ、溶けた雪や氷河はペルー太平洋岸に洪水被害をもたらし、同時に水源消滅も危惧されている。