今回は住む場所によって住民税に違いはあるのか、あるのであれば安い自治体はどこかを解説いたします。
《目次》
・住民税はどこに住んでもほぼ同じです
・標準税率と異なる税率の自治体は?
・神奈川県民税率が市によっては異なるのはなぜ?
・住民税の均等割にも違いはある?
・住民税の安い自治体は?
・まとめ
住民税はどこに住んでもほぼ同じです
住民税はその方の所得に応じて金額が決まる「所得割」と、所得に関係なく負担する「均等割」があります。「所得割」については標準税率10%(道府県民税率4%+市区町村民税6%)と定められており、各自治体は通常この標準税率を用いています。そのため基本的に住む地域で住民税額が変わることはありません。しかしながら標準税率を用いるかは各自治体で決めることができ、まれに税率の異なる自治体があるのも事実です。とはいえ、一般に思われているほど大きな差があるわけではありません。
標準税率と異なる税率の自治体は?
例えば道府県民税率4%に対し神奈川県では4.025%、市区町村民税率6%に対し豊岡市は6.1%、名古屋市の5.7%(財源移譲加味後は7.7%)が知られています。名古屋市は標準税率より低い住民税率を用いています
神奈川県民税率が市によっては異なるのはなぜ?
神奈川県民の中には「自分の住む市では県民税率2.025%となっているけど?」と思われた方もおられるのではないでしょうか。実は平成30年度から政令指定都市(*)では、教職員の給与の負担を県ではなく市がすることとなり財源移譲が行われているため、道府県民税2%+市民税8%が標準税率となっています(合計10%は変わりません)。ですので例えば政令指定都市の横浜市や川崎市、相模原市では「県民税2.025%」「市民税8%」であり、神奈川県の他の市では「県民税4.025%」「市民税6%」となっているのです。
前項で紹介の名古屋市も政令指定都市であり「財源移譲加味後は7.7%」の記述もそのためです。
なお神奈川県に限らず全ての政令指定都市は、上述のように財源移譲が行われていますので道府県民税2%+市民税8%、合計10%が標準税率です。
*人口50万人以上の政令で指定されている市であり、現在20市が指定されています。
《参考》
横浜市ホームページ
川崎市ホームページ
福岡市ホームページ
住民税の均等割にも違いはある?
住民税には所得に関係なく負担しなければならない「均等割」があることは前述の通りです。この「均等割」についても、標準税率は5000円(道府県民税1500円+市区町村民税3500円)*と決められています。*復興財源確保のため令和5年度まで1000円(道府県民税500円、市区町村民税500円)引き上げられた額です。
なお「均等割」にしても自治体により異なる税額を決めることが認められており、例えば道府県民税1500円に対し1800円(神奈川県)~2700円(宮城県)、市区町村民税3500円に対し3300円(名古屋市)~4400円(横浜市)など自治体によって幅があります。詳しくはお住まいの自治体のホームページで確認してみてください。
住民税の安い自治体は?
それでは住民税の安い自治体はどこになるのでしょうか。筆者の調べでは所得割、均等割のそれぞれに関して以下が最も住民税の安い自治体になるかと思います。所得割:名古屋市9.7%(県民税率2%+市民税率7.7%)
均等割:標準税率5000円(道府県民税1500円+市区長村民税3500円)の以下にあげる自治体
北海道、青森県、埼玉県、千葉県、東京都、新潟県、福井県、京都府、大阪府、徳島県、香川県、沖縄県の各市区町村
まとめ
いかがでしたでしょうか。住民税が高い安いと話題に上ることは多く、それ自体間違いではないのですが、実際は所得割では標準税率10%の自治体が大半であり、均等割にしても年額での話のため、会社員が毎月の給料を見てびっくりするほどの違いがあるものではありません。年末調整や一部の方では確定申告などで所得税については触れる機会があるものの、住民税は何もせずとも前年の所得をもとに6月から改定され給与から天引きされます。住民税の改定のタイミングが6月と、春の転勤シーズンと重なるため、「引っ越ししたら住民税が高くなった」「安くなった」という都市伝説のような誤解が、いつまでも生じているのではないでしょうか。
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