高齢者人口は2043年にピークとなります
総務省統計局のデータ(2023年)によると65歳以上の高齢者人口は3622万7000人であり、日本における総人口の29.1%を占めています。また国立社会保障・人口問題研究所が出している人口推計によると、高齢者人口は2043年にピークを迎え3952万9000人(総人口の35.8%)まで増加したのち減少に転じますが、一方で出生率の低下もあり比率としては36~38%台のまま推移すると考えられています。
このような現状を踏まえ、国は高齢者が活躍できるよう働きやすい制度を整える一方で、年金についてもさまざまな見直しを行っています。
《参考》
総務省統計局/人口推計
国立社会保障・人口問題研究所
70歳までの就業確保措置の導入
働く意欲のある高齢者がいつまでも活躍できるよう、政府は企業の努力義務として2021年4月より、70歳までの「高年齢者就業確保措置」を求めています。それまでも「定年制の廃止」「65歳までの定年引き上げ」「希望者全員の65歳までの継続雇用制度の導入」いずれかの「高年齢者就業確保措置」は企業の義務でしたが、2021年4月から新たに「創業支援等措置」を含めた70歳までの措置を取るよう求めたわけです。
●創業支援等措置●
・フリーランスや自営業となる社員との業務委託契約を結ぶ
・社会貢献事業へ従事することへの支援 「創業支援等措置」を新たに加えた「高年齢者就業確保措置」は、65歳以降の高齢者にとっては働き方の多様性を広げるとともに、企業にとっても雇用契約によらない働き方を結ぶことが可能になるため、社会保険面などのコストを抑えることができるのではないでしょうか。
《参考》厚生労働省/高年齢者雇用安定法の改正
在職老齢年金制度の緩和
老齢厚生年金をもらいながら働く場合、年金額と賃金の月額合計が一定額を超えると、その超えた全部または一部の年金が減らされる制度を「在職老齢年金制度」といいます。在職老齢年金制度の基準額は2024年4月からは50万円に緩和されています。まだ気力も体力も十分なシニア層にとって、働くと年金がカットされてしまうのではモチベーションが下がるとの意見がありましたが、この緩和で60代前半の方も賃金をあまり気にせずに働くことが可能となっています。在職定時改定の導入
2022年3月までは、65歳以上で老齢厚生年金をもらいながら働く方は、退職し厚生年金を脱退しなければ年金額の改定が行われませんでした。これが2022年4月以降は退職せずとも65歳以降に払い込んだ保険料が毎年10月分からの年金額に反映されています。 働きながら老齢厚生年金を受給する一方で年金保険料も払っている方にとっては、払い込んだ保険料が毎年の年金額に反映することは、働く上でのモチベーションアップにつながります。年金受給開始年齢の拡大
年金受給開始年齢は本来65歳ですが、本人が希望すれば60~65歳の間で受給を開始できる「繰り上げ受給」や、66歳以降に受給を開始できる「繰り下げ受給」を選ぶことができます(注1)。「繰り下げ受給」の場合、2022年3月までは70歳までしか繰り下げすることができませんでしたが、2022年4月以降は繰り下げ可能年齢が75歳までに引き上げられています。
なお2022年3月までは、「繰り上げ受給」の場合、1カ月あたりの年金額は0.5%減額、「繰り下げ受給」の場合、1カ月あたりの年金額が0.7%増額される仕組みでした。 2022年4月以降は、繰り上げによる減額率が0.5%→0.4%(注2)と引き下げられた一方、繰り下げの増額率は0.7%と変わりませんが、受給開始可能年齢が75歳(注3)までに広がっています。
老後の働き方や資金状況などにあわせて、より受給の繰り上げ、繰り下げの選択肢が広がったといえるでしょう。
(注1)65歳0カ月~65歳11カ月までの間は繰り下げできないことに注意が必要
(注2)2022年4月以降に60歳になる方から適用、現在繰り上げ受給者の減額率の変更はない
(注3)2022年4月以降に70歳になる方から選択可能
《参考》厚生労働省 年金制度改革法(令和2年法律第40号)
まとめ
いかがでしたでしょうか。将来的に65歳以上の高齢者が人口の4割になることを踏まえ、国は高齢者に対する各種の制度改革を行っています。今後も高齢者が増えていくにつれ、高齢者を対象とした施策はより拡充していくと思われます。それを踏まえた上で、現役時代から老後のライフプランを考え準備しておけば、より充実した老後が送れるようになるのではないでしょうか。
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