ストレス

「五月病」をこじらせないために…注意すべき5つのポイント

【公認心理師が解説】ゴールデンウイーク明けに増える「五月病」。どことなく体調がすぐれなかったり、気持ちが沈みがちになったりします。コロナ禍では五月病をこじらせ、気持ちがふさぎ込んでしまった方も少なくなかったのではないでしょうか。アフターコロナにも気をつけたい「五月病」の対策ポイントを5つお伝えします。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

4月に環境の変化があった人は、「五月病」に要注意!

ゴールデンウイーク明けから調子が悪い……それは「五月病」かもしれません

ゴールデンウイーク明けから調子が悪い……それは「五月病」かもしれません


ゴールデンウイークが明けるころから、やる気が出ない、疲れがとれない……。そんな感じを覚えるなら「五月病」の可能性があるかもしれません。
 
「五月病」は、4月に環境の変化があった人が、ゴールデンウイークの長期休みが終わったころから、心身の不調を感じること。医学的な病名ではありませんが、こじらせると本格的な病気になってしまうこともあります。
 
4月から新しい学校に入学した、上の学年に進級した、新しい会社に入社した、昇進した、部署の異動や転勤があった、引っ越しをした……このように、4月に大きな環境の変化があった場合、ゴールデンウイーク明けは「五月病」に特に注意が必要です。
 

「五月病」によくある悩み、心身の症状

 「五月病」は多くの場合、気分や意欲の低下、だるさや疲れやすさ、といった症状で現れます。
 
  • 4月には「あれもこれも頑張ろう!」と思えていたのに、どれもこれも、どうでもよく思えてしまう
  • 何を見ても、心が動かされない。何をしても疲れてしまい、続けたいと思えない
  • 何時間寝ても、ぐっすりと眠れた気がしない。いくら休んでも、疲れがとれた気がしない
  • 仕事や学業への意義を見出せず、「これをやって何になるんだろう?」と思ってしまう
  • 人と話をするのが億劫。1日中誰とも会わずに、部屋の中で過ごしたい
ゴールデンウイーク明けから上のような状態が続くなら、「五月病」の可能性を考えてみるといいかもしれません。
 

笑いのない環境では「表情フィードバック仮説」の効果を期待できない

「五月病」になると物事を楽しめず、笑う機会も少なくなってしまいます。一般的に「人は、楽しいことがあるから笑う」と思う人が多いようですが、人の心にはその反対、つまり「笑っているから、楽しくなる」という作用もあるのです。
 
みんなが笑っているから、自分まで笑ってしまい、そうしているうちになんだかとても楽しくなった。そんな経験はありませんか? 心理学には「表情フィードバック仮説」という理論があります。笑うと顔の表情筋が動きますが、その刺激が脳にフィードバックされると、「楽しい」という感情が生まれます。これを「表情フィードバック仮説」と呼びます。笑っている人が多い場所いると、自分まで気持ちが楽しくなる。これこそ「表情フィードバック仮説」の効果だと考えられています。

2020年から長く続いたコロナ禍では、この「みんなが笑うから、自分も楽しくなる」という気持ちを味わえなかった方が多かったのではないでしょうか。マスクの常時着用とソーシャルディスタンスが続くなかでは、笑いを交わしあって楽しむことも難しかったと思います。ゴールデンウィーク明けには、ただでさえ日常生活をつらく感じるのに、いつもより笑いのない環境の中で「五月病」を悪化させてしまった方も少なくなかったかもしれません。

やはり、憂うつになりやすい時期だからこそ、人と自然に笑いあえるようなかかわりは必要です。アフターコロナには、ぜひお互いに笑顔を交わしあいながら、「笑っているから、楽しくなる」の「表情フィードバック仮説」効果で、五月病を乗り越えていきたいものですね。
 

「五月病」対策に大切な5つのポイント

多くの方が「五月病」に悩まされてしまうものですが、ぜひ対策はしっかりしておきたいもの。対策のポイントを5つ記しましたので、ぜひ参考にしてみてください。
 
1. 「五月病」は自然によくなる、とおおらかに考えよう
4月に環境の変化があった人なら、誰にでも多少は生じるのが「五月病」。「4月の疲れが出ているんだな」と捉え、「いずれ自然によくなるだろう」とおおらかに考えましょう。
 
2. 今は、目の前の「やるべきこと」ができれば十分
疲れが出ているときには、無理をしないのが鉄則。仕事や学業など、目の前の「やるべきこと」にだけ意識を向け、それ以外のことには“省エネ”でいきましょう。
 
3. 睡眠と食事のリズムは一定にキープ
入眠と起床の時間、1日3食の食事は、一定のリズムをキープするようにしましょう。生活習慣が乱れると、心身の調子はさらに悪化してしまいます。
 
4. グチが湧くのは当然。誰かに聞いてもらう
この時期にネガティブな思いが湧くのは自然なこと。グチを誰かに聞いてもらいましょう。親、きょうだい、友人、先輩、カウンセラーなど、話しやすい人に話すといいでしょう。
 
5. 目標は必ず見えてくる。あせらない、嘆かない
「五月病」の渦中には目標が見いだせず、絶望的な気持ちになってしまうかもしれません。でも、コツコツと歩んでいけば、目標はいずれ必ず見つかります。今はあせらず、日々を淡々と重ねていきましょう。
 

「五月病」が5月で終わらなかったら、専門医に相談を

上の5つのポイントを意識して、5月を過ごしてみてください。きっと6月を迎えるころには不調を少しずつ抜け出し、楽になれることでしょう。
 
6月になっても心身の不調が続くようなら、「五月病」より深刻な心のトラブルに移行している可能性もあるので、一度、心の専門医に相談するのもよい方法です。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます