超アナログ管理だった出退勤と経費精算をkintoneで管理
筆者は、他の企業の導入事例を多数取材し、失敗する原因や成功するコツを知っているのに、見えている落とし穴にことごとく足を突っ込んで行きました。しかし、原因が分かっている分、短時間で足を引き抜き、少しずつ歩みを進めました。結局、「原価BAR」の既存店はすべてクローズし、田町・三田駅の近くに新店舗をオープンし、戦力を集結させることにしました。2021年1月オープンの予定が、なんと2回目の緊急事態宣言です。目の前が真っ暗になります。しかし、これはもう一度、DXを進めるチャンスなのではないかと考え、社内で超長時間の会議を開き、基幹システムをすべてkintoneで構築し、がっつり活用していこうということになりました。
参考記事:「また時短要請か……」コロナ禍で苦境に陥ったBARがDXと新店オープンにチャレンジする話
そこでもう一度、鈴木君を口説きました。「kintone hive」というユーザーズイベントでは、大きな舞台で企業のkintone活用事例を発表し、優勝者を決めます。ここに出てみないか、と持ちかけたのです。そうしたら、興味を持ってくれたので、ほぼ丸投げすることにしました。 実は、その少し前に、鈴木君は筆者が書いた記事を参考に、kintoneに画像をアップロードすると撮影場所の地図が表示されるというカスタムアプリを作成してみたと言うのです。半日くらいかかりましたが、地図が表示されたときは感動したそうです。
まずは超アナログ管理だった出退勤と経費精算をkintoneで管理します。そのために「kincone」という連携サービスを導入しました。今まで紙で行っていた作業をデジタル化することで、作業時間の大幅な短縮とミスの軽減が実現します。 オーダーを取るのも紙のメモではなく、iPhoneを使ったオーダーシステムを導入し、キャッシュレス対応のPOSレジも導入しました。その際、もっとも重視したのがkintoneとの連携で、検討の結果採用したのが「スマレジ」です。
これまで30分~1時間かかっていた毎日の締め作業が5分で終わるようになりました。計算ミスもないので、ずれもありません。売り上げの情報はすべてkintoneに記録できます。
今まで実現できなかった顧客管理と会員システムにもチャレンジすることになりました。顧客自身がウェブページで会員番号とポイント管理だけでなく、「スマレジ」から吸い上げた購入履歴すべてを管理し、閲覧できるシステムを目指しています。ニーズがあるかどうかも分かりません。面白そうだからやってみるというわけです。
実際、ゼロベースでこんなシステムを発注したら、1000万円でも実現できるかどうか分かりません。kintoneでも標準機能だけでは無理です。しかし、連携サービスをいくつも組み合わせることで、β版が完成しました。近いうちにお披露目できると思います。 現在は、リアルタイムに経営指標を確認できるグラフアプリの作成も進行中です。相当に難しいようで、四苦八苦しています。複数のアプリから欲しいデータだけを引っ張ってきて、ダッシュボードを作成するのに手間取っているようです。集計すべき指標や利用すると便利なツールを教えて、今のところは見守っています。
先日、鈴木君から相談がありました。「取引先から届いた紙の納品書をスマホで撮影して、その情報をレコードとしてkintoneに登録したい」と言うのです。
筆者はもちろん最新のAI OCR企業を何度も取材しています。納品書のテキストを認識して取り込むことは可能ではあるのですが、飲食店が受け取る枚数で投資効果が出るほどは安くなっていません。返答に窮してしまいましたが、そんな要望が出てくるのはとてもありがたいところです。今後に期待が持てます。
飲食企業はそもそも利益率が低い傾向にあります。そんな業界こそ、デジタル化、IT化を推進し、DXを実現しなければ生き残ることはできません。少子高齢化やコロナ禍の影響で、損益分岐ラインで営業していたお店は廃業を余儀なくされていくでしょう。我々もお金のない中小企業だからこそ、本気でDXに挑んでいこうと思います。
原価BAR三田本店は2021年3月8日にオープンしました
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