慣用句「いずれ菖蒲か杜若」とは? 菖蒲湯に入れるのは何?
「いずれ菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)」の意味や語源は?(この写真はアヤメです)
<目次>
「いずれ菖蒲か杜若」とは? 意味・語源・由来
「いずれ菖蒲か杜若」とは、いずれも優れていて優劣がつけにくいことのたとえです。語源は、源頼政が鵺(ぬえ)という怪しい鳥を退治した褒美として菖蒲前(あやめのまえ)という美女を宮中から賜る際、十二人の美女の中から選び出してみよと命じられて詠んだ歌にあります。
ここから、美しいアヤメとカキツバタは非常によく似ていて区別がつきにくいため、いずれも優れていて優劣がつかず選択に迷うことのたとえとして「いずれ菖蒲か杜若」というようになりました。「五月雨に沢辺の真薦水越えていづれ菖蒲と引きぞ煩ふ」
五月雨で沢辺の水かさが増したため、マコモも水中に隠れてどれがアヤメかわからず、引き抜くのをためらっている<太平記・二一>
アヤメとカキツバタの違い・見分け方
「いずれ菖蒲か杜若」という通り、アヤメとカキツバタは大変よく似ています。細かな違いは幾つかありますが、簡単に見分けるポイントは、花の模様と育つ場所です。■アヤメ科「アヤメ」(菖蒲/綾目/文目)
- 外側の花びらに黄色い斑紋があり網目模様になっている。
- 湿地ではなく、乾いたところで育つ。
アヤメは、外側の花びらに黄色い斑紋があり網目模様になっている
■アヤメ科「カキツバタ」(杜若/燕子花)
- 外側の花びらに白い斑紋がある。
- 水の中や湿ったところで育つ。
カキツバタは、外側の花びらに白い斑紋がある
端午の節句に菖蒲湯に入れるショウブと、花がきれいなアヤメ科の花菖蒲は別物
端午の節句は、別名「菖蒲(しょうぶ)の節句」といい、菖蒲を用いて邪気を払い、菖蒲湯に入って無病息災を願います。この時に使うのは花がきれいなアヤメ科の花菖蒲ではなく、ショウブ科の菖蒲です。ショウブ科の菖蒲にも花は咲きますが、ガマの穂のような地味な花です。いずれも葉がそっくりなので、菖蒲湯に花菖蒲の葉を使いたくなりますが、全く別物なのでご注意ください。
■ショウブ科「ショウブ」(菖蒲)
- 別名「アヤメ草」。ガマの穂のような花が咲く。根茎が生薬になる。
- 端午の節句では、菖蒲湯、菖蒲酒、菖蒲枕などの風習に用いる。
- 水の中や湿ったところで育つ。
ショウブ科の「ショウブ」はガマの穂のような地味な花です
■アヤメ科「ハナショウブ」(花菖蒲)
- 別名「花アヤメ」。美しい花が咲く。外側の花びらに黄色い斑紋がある。
- 端午の節句の花として飾る。
- 水の中や湿ったところで育つ。
アヤメ科の「ハナショウブ」は、外側の花びらに黄色い斑紋がある
アヤメ科の総称として「アヤメ」「ショウブ」と呼ぶことも
いろいろな色があるハナショウブ。端午の節句に飾られるが、菖蒲湯に使っても効果はない
また、ショウブ科のショウブ以外はアヤメ科です。いずれも花がよく似ているうえ、アヤメ科の総称として「アヤメ」「ショウブ」と呼ぶこともあるので混乱しますが、ご紹介したポイントを押さえて花を見分けてみてください。
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