「リモートワーク手当5000円」「会社の経費で買ったパソコン」は会社員の年収に含まれる?
コロナ禍においてリモートワークや在宅勤務という形態をとる企業が増えてきたのではないでしょうか。一方、これらの状況を税金という観点から見た場合に様々な疑問がでてくると思います。「在宅勤務手当」や「パソコン等を会社から支給していた場合」「レンタルオフィスでリモートワークをする場合」などの経費の扱いについて新たな疑問が生じてきました。
これらは当然、企業からみたら経費になるのは間違いないのですが、会社員の側からみたら、年収に含まれるのかが重要なポイントです。会社員の額面年収が上がることになり、支払う税金などの面でも影響がでてくるからです。
国税庁から発表されている資料を中心に、年収に含まれるケース、含まなくていいケース、あるいは含まなくていいとする場合のポイントや精算方法等を整理していきましょう。
精算のいらない、「渡し切り」の在宅勤務手当は年収に含まれる
在宅勤務という形態をとると、当然ながら、自宅の光熱費や通信費が通常よりかかります。また、人によっては通信環境を整えたという人もいるのではないでしょうか。このようなケースに対応するために勤め先から会社員に対して「在宅勤務手当として5000円上乗せ」といったことを行っている会社もあるでしょう。この金銭が勤め先に返還する必要がない、つまり「渡し切り」の5000円である場合、これは「年収」に含まれます。
企業によって違いますが、「在宅勤務手当」は、役職手当、家族手当、家賃手当等、企業が従業員の個々の実情に応じて支給するものと同じ扱いになるのです。
年収に含まれない在宅勤務手当とは?会社員が経費精算して請求する場合
一方、会社員が在宅勤務に通常必要な費用を会社で経費精算する方法で支給されるお金は、給与として課税されません。上記と一見矛盾するようですが内容をみていきましょう。「年収に含まれるか、含まれないか」は、「精算の必要があるか、ないか」というのがポイントになります。しかし、精算して会社に請求するといっても、リモートワークする人が在宅勤務によって超過する通信費や電気料金等をどのように計算するのでしょうか? 経費精算して請求する場合はこちらもポイントになってくるでしょう。
たとえば、電話の通話料やインターネット接続にかかる通信料の業務のために使用した部分を計算する方式として以下のような算式が国税庁から発表されています。
- 従業員が負担した1カ月の通信料等×その従業員の1カ月の在宅勤務日数/該当月の日数×1/2
- 従業員が負担した1カ月の基本料金や電気使用料×業務のために使用した部屋の床面積/自宅の床面積×その従業員の1カ月の在宅勤務日数/該当月の日数×1/2
このような方法で算出した在宅勤務に関して超過した自宅の通信費や電気代等を勤め先に報告した上で精算すれば、ここで生じた金銭は「企業が営業活動に必要な合理的な経費」となるため、サラリーマンの年収には含めなくていいのです。
パソコンを経費精算で購入した場合、返却しないと会社員の給与扱いに
企業が在宅勤務に通常必要な費用を精算したといっても「通信費や光熱費を精算した」というケースと、「会社用のパソコンを購入した」というケースでは対応が異なると考えられます。前者は経費の精算なので、従業員個々人の観点からみると何も残らないのに対し、「パソコンを購入した」というケースでは、在宅勤務が完了したあと、その従業員が企業に返却しなかった場合には「パソコンという物品が残る」ことになるからです。企業が実費精算したとしても、あるいは「支給」という形で配付したとしても、その後、そのパソコン等を従業員が自由に処分できず、業務に使用しなくなったときは返却を要することを義務づけていれば、「企業が営業活動に必要な合理的な経費」となります。
一方で、業務に使用しなくなったとしても、そのまま勤め先に返却せず、所有権が従業員個々人に移転するということになれば「金銭ではないけれど、パソコンという現物で給与支給を受けた」と判断されて課税されることになるので注意が必要です。
レンタルオフィスでリモートワークをする場合の経費の扱いについて
自宅に在宅勤務をするスペースがない場合、自宅近くのレンタルオフィス等でリモートワークをしている方というのも一定数いるようです。この場合もレンタルオフィスの使用料を給与に加算して支払うという方法では、その個人の年収に加算されます。従業員が在宅勤務に通常必要な費用としてレンタルオフィス代等を立て替えて支払いし、その後、業務のために利用したものとして領収書等を企業に提出してその代金を精算するという方法を取れば、年収にカウントされることはありません。
経理方法は仮払い後、後で精算でもOK
在宅勤務に関して超過した自宅の通信費や電気代等のケースでも、レンタルオフィス代等を立て替え払いしたケースでも、はたまた、パソコン等に代表される事務用消耗品を実費精算したケースでも、ここでは従業員が立て替え払いを行い、後日、精算という方法をとりましたが、前もって仮払いを行い、後日、不足額があれば追加支給、超過額があれば企業に返金、という方法でも当然認められます。コロナ禍においてにわかに脚光を浴びた感のあるリモートワークですが、自分の年収計算をする上でも経費の扱いは重要になりますので注意してみてください。
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