更年期のイライラ……体調の変化から心の状態も不安定に
更年期に入ると、体と心の状態が不安定になりやすくなります
熟睡感を得にくくなることで疲れを翌日に持ち越しやすくなる方や、冷えやほてりを感じやすくなり、風邪などの感染症にもかかりやすくなったと感じる方も多いようです。まして現在のウィズ・コロナ時代には、感染リスクが常に気になり、物事を楽しめないという悩みも伺います。
また、更年期には肌の弾力性や粘膜の潤いが失われることで、女性としての自信を喪失してしまう方も少なくありません。鏡を見るたびにしわやシミが気になり、化粧品を変えたり、エステや美容医療に解決を求めたりしても、老化自体を止めることはできないため、無力感を覚えやすい年代でもあります。
加えて、加齢によって体力も低下するため、若い頃のような無理はきかなくなってきます。少し動くだけで疲れ、運動をすると体力の回復に時間がかかるなど、若い頃のようにスムーズに動かない自分の体に対しても、イライラが生じやすくなってしまいます。
更年期のイライラは周りにも……夫や子ども、義理の親に苛立つのはなぜ?
そして更年期は、妻として母として、職業人としてなど「役割」の多い年齢でもあります。たとえば、まだ子どもに手がかかり、家事も仕事もやるべきことがたくさんあるのに、体がついていかないというジレンマ。このように、役割を果たす上での意欲と現実とのギャップが、イライラの大きな火種になります。そんな折に、家族や職場の人などから「カチン」とくる一言を言われると、怒りに火がついてしまいます。一例として、以下のような言葉や悩みをよく伺います。
■夫の何気ない批評にイライラ
「ダラダラしてないで、少し動いた方がいいんじゃない?」などと思ったことをズバズバ言われる。「部屋が片付いてないよね」「最近、化粧もしてないね」などと一方的に批評をされる。こうした思いやりのない言葉に、イライラを募らせるケースは少なくありません。また、何かと「更年期障害なんじゃない?」「更年期でも、はつらつとしてる人もいるよ」などと言われるのも、突き放されたような冷たさを感じて、怒りにつながってしまうようです。
■子どもの無遠慮な言葉にイライラ
子どもは親に対して無遠慮なことを言いがちですが、わかっていても不意に言われると、傷ついてしまうものです。たとえば、体がきつくてソファで横になっている姿を子どもに見られて、「うわぁ、トドみたい!」と吐き捨てたように言われ、取っ組み合いのけんかになったという方もいます。「まだ子どもだから」と頭で納得しようとしても、心無い言葉をかけられれば、怒りが湧いてしまうものです。
■義母からのチクリとした一言にイライラ
義母との距離が近い場合も、つらいようです。「大変だと思うけど、家族にもう少し気をつかってあげて」「昔は、更年期なんて言ってられなかったわ」などと言われると、「結局、息子や孫が一番大事で、嫁の体のことなんて気遣ってもくれないんだな」という思いが湧き、義母に対するイライラが募ってしまうこともあります。
■職場で疲れがたまると、小さなことにイライラ
体調不良で仕事に穴を空けたくないし、職場の人に「更年期だからつらいのかな?」などと心配はされたくないもの。実際には体がしんどくても、仕事中は気を張って頑張っている方が多いようです。しかし、疲れがたまってくると気持ちの余裕がなくなってしまい、仲間の態度や言葉じり一つにもイライラを感じてしまうものです。
更年期に大切な感情のケア……イライラをぶつける前に相手にも説明を
更年期のイライラに役立つのは、「アンガーマネジメント」の考え方です。感情のままに怒りを放出させると、後になって「何であんなことを言ってしまったんだろう」と後悔してしまいます。そうならないためにも、上手に感情のケアをしていきましょう。そもそも、不快な状況に直面したときにイライラするのは、自然なことです。しかし、そのままイライラにさらされていると、怒りが募っていき、感情を周りにぶつけたくなってしまうものです。
だからこそ、イライラしたときには、できるだけその場から離れましょう。移動して外の空気を吸う、お茶を飲む、こうしたことで気持ちは切り替わります。場を離れられなければ、目をつぶって深呼吸をするだけでも、イライラの原因から意識を切り離すことができます。
こうして気持ちが落ち着いた後、相手と話をしやすいタイミングを見計らって、どんな言葉や態度に傷ついたのか、自分がどういう体調、状態なのか、周りに求める配慮は何かを、冷静に伝えるとよいでしょう。
更年期のつらさは、経験した人でないとわからないものです。ぜひ、自分の心身をいたわりながら、上手にイライラをコントロールし、周囲にも理解を求めていきましょう。