子どもからの八つ当たりに悩む親は少なくない
ストレスを溜めた子どもは、親に八つ当たりしがち
小さな子では、親に向かって金切り声を上げたり、地団駄を踏んで暴れたり、おもちゃを投げつけたり、「お母さんなんて大嫌い!」などと言ったりすることもあります。思春期頃の子では、自分がとるべき責任を「お父さんが余計なことを言ったから」などと親のせいにしてなじったり、自分の努力や運命の問題を「親がもっと頭がよければよかったのに」「もっと美人に生んでくれたらよかったのに」などと、親のせいだと決めつける子もいます。
こうした子どもの八つ当たりに、親はどう対処していけばよいのでしょうか?
八つ当たりしてくる子どもに、親がしてはいけない対処法
そもそも、イライラやストレスに対処するには、物事を合理的に考え、対処するだけの力が必要です。しかし、幼い頃にはこうした力がまだ育っていませんし、思春期ごろの子もまだ発達途上です。合理的な思考や行動は、大人であれば容易にできます。したがって、子どもを感情的に叱ったり、暴力で威圧するようなことはしないようにしましょう。思考力や腕力が勝る大人にやり込められたら、子どもは勝てるはずがありません。大人に負けて悔しい思いをすると、自分より幼い者をやり込めるようになってしまいます。
そもそも、一方的に感情をぶつけたり、暴力的な言動で人をやり込めること、そして八つ当たりによってストレスを解消することは、間違ったストレス対処法です。子どもがストレスをうまく処理できず、親に八つ当たりしてしまう心情をまずは理解し、その上で合理的にストレスに対処する方法を伝えてあげましょう。
子どものイライラを解消する3つのステップ
子どもに八つ当たりされたら、次の3つのステップで対処しましょう。1. どんな言動も受け止める(ただし、迷惑行為や暴力は制止する)
親に向かってどんなにひどいことを言っても、まずは受け止めましょう。受け止めてもらうと、いったん気持ちが落ち着きます。「そんな言葉を使うな!」などと初めから否定すると、子どもはムキになってさらに親に攻撃を向けるでしょう。
物に当たることもあるでしょうが、危険が少なく、損傷や隣家への迷惑が生じない程度(クッションを殴るなど)なら、気が済むまでやらせてみるのもいいでしょう。ただし、迷惑行為、自他への暴力などの危険な行為は必ず止め、危険のない言動(親に向かって怒りをぶつける、枕に顔をうずめて大声を出すなど)への代用を促します。
2. 抱えている思いを言葉で理解させる
上の対応で気持ちが落ち着いたら、次に合理的な対処法を促します。そもそも、子どもはボキャブラリーが少なく、自分のイライラやその原因を言葉で十分に理解できていないから、八つ当たりに走るのです。
そこで、親の導きで言語化を促します。「イライラしてるようだけど、何かあったの?」などと声をかけ、子どもが自分の言葉で語れるように導きます。子ども自身からぴったりした言葉が出ないようなら、親がいくつか言葉を提示しましょう。「それはたとえば“悔しい”って気持ち?」というように伝えて確認するとよいでしょう。
ただし、「それは悔しさなんだよね」などと決めつけないようにしましょう。似ているけど、違う感情なのかもしれません。質問の形で提示すれば、フィットする言葉には「そうそう!」といった表情をするでしょうし、違っていれば首をひねったりするでしょう。
このように、感情をフィットする言葉に当てはめることを「ラベリング」といいます。ラベリングによってボキャブラリーを豊かにし、自分の感情を言葉で理解できるようになると、イライラの発生は減ります。怒りと共に湧く感情を理解し、早めに怒りを収めることもできます。
3. 合理的な予防法と対処法を一緒に考える
次回も同じような場面に遭遇してストレスがたまり、八つ当たりが生じないようにするために、予防法や対処法を親子で一緒に考えましょう。
予防法としては、イライラさせる刺激に近づかない、聞く耳を持たないようにする、家に帰るまで我慢して親に不快な気持ちを聞いてもらう、などの方法があります。イライラした後の対処法としては、その場から離れる、水を飲む、他のことを考える、などの方法があります。
子どもの八つ当たりは親への期待の裏返し……親は自分のメンタル管理も
子どもが親に八つ当たりをするのは、「親なら、自分の気持ちを受け止めてくれるだろう」という期待があるからです。ぜひ、子どもに八つ当たりをされたときには、真っ向から受け止め、感情のラベリングや合理的な対処法を伝えながら、子どもが自分の感情と上手につきあえるように、導いていきましょう。また、親自身に精神的なゆとりがないと、子どもの八つ当たりに合理的に対処することができません。たまには家族から離れ、好きなように過ごしてみる。友達とのおしゃべりや趣味を楽しむ。親はこうしたことで、心のエネルギーを満タンにしておくことも大切です。