緩やかに低下中? 日本人の幸福度は156か国中62位

幸せとは?幸福感の高めるために日常からできること

日本の幸福感は年々低くなっている?

日本の子どもの幸福度と幸福感の高め方』で詳しくご紹介しましたが、2020年のユニセフの報告によると、日本の子どもの精神的幸福度は「38か国中ワースト2位」という結果でした。

それでは、子どもに限定せずに日本全体で見ると、国際的に比較した日本人の幸福度はどのような状況なのでしょう? 世界の156か国が対象となり毎年発表されている『世界幸福度報告』(ワールド・ハピネス・レポート)によると、2020年の日本人の幸福度は156か国中62位。一昨年2018年の54位、昨年2019年の58位に続き、さらに順位を落としている状況です。
 
この報告では、一人あたりの国民総生産(GDP)、社会的支援、健康寿命、人生の選択の自由度、他者への寛容さ、腐敗の認識、の6つで幸福度を説明しています。そして、「他者への寛容さ」の低さが、日本人の総合的な幸福感を押し下げているという結果になりました。
 
日本のGDPや健康寿命は世界トップクラスですし、経済的豊かさや体の健康は世界的に見ると恵まれているといえます。それにも関わらず総合的な幸福度があまり高くないのは、日本人の「心の幸福感」に問題があることがわかります。同報告における「他者への寛容さ」の低さに示されるように、日本人には他者とのかかわりの中での幸せを高めにくい、心の障壁があるのかもしれません。
 

利他行動とは……お互いの幸福感を生み出すために

日本人がより幸せになるための課題である「他者への寛容さ」は、寄付などをはじめとする「利他行動」であると考えられます。「利他行動」とは自分の損失を顧みず、純粋に他者のためになることをすることです。他人を押しのけてでも自分の利益を優先する「利己的な行動」とは、正反対の概念です。

日本には「情けは人の為ならず」ということわざがあります。つまり他者のためになることをすれば、めぐりめぐって自分に良い報いが返ってくるという意味です。ここでいう「情け」とは、見返りを期待しない純粋な親切のことです。

同じく日本には「おもてなし」という文化がありますが、これは一見「利他」に見えるものの、実は「自利」の要素が強い行為です。一般的にはお客様や知人のように、見返りが期待できる相手をもてなす接待のことを表す言葉だからです。

ひょっとすると、日本には「おもてなし」的な見返りを期待した親切が多いわりには、「情けは人の為ならず」的な純粋な親切が少ないのかもしれません。そこには、純粋に親切にすると自分が損をしてしまうのではないかという、怖れが影響していそうです。「損どころか幸せになれるのだ」ということが実感としてわかれば、利他行動はもっと増えていくように思います。
 

「ヘルパーセラピーの原則」に学ぶ幸福感の高め方

では、なぜ利他行動が幸福感につながるのでしょう? 人間の心には「人を幸せにすることで幸せを感じられる」という、「幸せの好循環」の構造があるからだと考えられます。

その謎を解くヒントに、「ヘルパーセラピーの原則」という言葉があります。「他者を助ける人が最も助けられる」というソーシャルワークの考え方です。ソーシャルワークは、労働条件的に見ると低収入で危険や負担も多く、分の悪い仕事です。しかし、支援した相手が希望を見出し、幸せに向かって歩み始めた時に、ワーカー自身が幸せを感じるという「幸せの好循環」を味わうことができる仕事です。
 
このように、利他行動による幸福感は物理的な見返りは少なくても、他者の幸せが自分の幸せにつながるという「幸せの好循環」を体感することあるのかもしれません。
 

幸福感を高めるために日常からできる利他行動のポイント

利他行動は、日々の何気ない暮らしの中でも、たくさん体験することができます。たとえば、次のようなことをやってみて、心にどんな思いが生じるのか味わってみましょう。
  • いつでも誰かを助けられるように、時間に余裕をもって行動してみる
  • 困っている人がいたら、思い切って(見知らぬ人でも)援助の声をかけてみる
  • かかわりの少ない人でも、いつもより元気がないと感じたら、声をかけて様子を尋ねてみる
  • 「あの人が心配だな」と思ったら、遠くにいてもためらわずに連絡をしてみる
  • 一日に何か一つ、小さなことでも人のためになることをしてみる
このように、できる範囲で何か一つでも利他行動をしてみると、「幸せの好循環」を感じることができるかもしれません。
 

利他行動には「時間と心の余裕」も必要! 忙しさによる幸福感は一過性

利他行動による「幸せの好循環」を感じるには、「余裕」が必要です。時間とやるべきことに追われて心に余裕がない人は、いつも自分や家族のために行動するだけで精一杯です。こうした場合、いくらその人に思いやりがあっても、利他行動に自分のリソースを割く余裕をもつことができないものです。
 
そして、忙しくて余裕がない状態では、自分すら「幸せ」にしにくいものです。 忙しいと交感神経が刺激されて心身が興奮しがちになり、その興奮を幸福感だと錯覚している方は多いでしょう。しかし、その興奮は暇になると消えてしまう一過性のものでしかありません。そして、人は急に興奮から解放されると、急に不安の波に襲われてしまうものです。
 

思いがけない「暇な時間」は幸福感を高めるチャンス

新型コロナウイルスの影響で、「忙しくて余裕のない日常」から「暇を持て余すゆとりの日常」へと急に放り出された人も多いことでしょう。そのことにより、「興奮」から「不安」に突き落とされたと感じている方も多いかもしれません。

こうして思いがけずいただいた暇な時間は、自分よりも困っている人の存在に気づくチャンスなのかもしれません。暇な時間を使って、できる範囲で困った人の力になることができれば、利他行動による「幸せの好循環」を自然に体験することができるのではないでしょうか。
 
幸せは、意外に身近なところにあるものです。そして、幸せは日々の暮らしの中で背伸びをせずに体験し、しみじみと味わえるものだと思います。私たちも、そんな利他行動による「幸せの好循環」を味わいながら、他者に寛容になれる幸せを実感して生きていきたいものですね。
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