「子どもが繊細過ぎて心配」……カウンセリング相談も多い親の悩み
子どもの性格が繊細過ぎて不安……「HSC」傾向の子どもの特性は、肯定的に理解することが大切です
「音やにおいにとても敏感。ガヤガヤした音やこもった異臭が気になると、人混みをとても嫌がる」
「皮膚感覚が過敏なようで、布地のチクチク感や縫い目のでこぼこを気にする。異質なものに触れたりすると、とても気持ち悪がる」
「人の気持ちが分かりすぎてしまう。親の私が少しでも不安を抱えていると、何も言わなくてもそれを察知して、体調を崩したりする」
「子どもたちの輪に入るのが苦手。周りの子の大きな声や反応にびくびくし、とても緊張しているようだ」
「一つのことにこだわりやすい。何かの考えにとらわれたりすると、そのことばかり考えすぎてしまうようだ」
このような特性をもつ子どもは、日常生活の中でたくさんのストレスを感じるため、とても疲れをためやすく、夕方になるとぐったりしてすぐに眠ってしまう、といった話もよく聞きます。人とのかかわりや集団生活など、「このままで大丈夫なの?」「どうかかわってあげたらよいの?」と、心配を抱えている親御さんが多いと感じます。
HSCとは……刺激に敏感で影響を受けやすい子どもの特性
外的な刺激にとても敏感で、その影響を強く受ける子どものことを「ハイリー・センシティブ・チャイルド」(略してHSC)といい、近年、その特性に関する事例の報告が増えています。医学的な診断名ではありませんが、5人に1人の子がこの特性を持っているといわれています。HSCは、病気ではなく「とても敏感」という個性です。敏感であるがゆえに、多くの子どもたちが気に留めないような刺激を強く受け止め、我慢できないほどの不快感を覚えたり、人の気持ちが分かりすぎて、とてもつらくなったりします。
そもそも子どもは、大人に比べて認知のコントロール(思考の捉え直しなど)が上手にできません。たとえば、不快な状況下でとっさに嫌な考えが頭に浮かんだ場合、その考えから距離をとったり、積極的に別のことを考えるような柔軟な対処が、まだうまくできないのです。そのため、大人が上手にそのコツを伝えながら、ストレス対処法を学習させる必要があります。
HSCの子どもとの接し方……寄り添うこと・ストレス対処法を教えること
では、大人はHSCの子どもにどのように接していけば良いのでしょう。まず大切なことは、子どものつらい気持ちに寄り添うことです。子どもは信頼している大人に気持ちを分かってもらえるだけでも、とても安心します。「つらかったね」「嫌だったね」と気持ちを受け止め、共感してあげると、「分かってもらえた」という安心感が高まります。その上で、次回同じような状況に直面したときに、ストレスに対処するコツを教えていきます。まず必要なのは、「つらい気持ちは“言葉”で伝えて相談できる」ことを教えることです。
たとえば、不快な刺激に持続的にさらされると、不安と苛立ちが募ってしまいます。すると、HSCの子どもの中には、抑えきれない感情をあらわにしたり、その場から逃げ出したり、耳をふさいで押し黙ったりすることで、ストレスから逃れようとする子もいます。しかし、こうした衝動的、回避的な行動ばかりを続けていても、ストレスに上手に対処できるようになりません。そこで、「自分の気持ちを言葉で伝えて相談する」という合理的な解決方法を実践できるように導きます。
このときに伝える言葉には、(1)どの刺激を(2)どう感じるから(3)どうしたい、という3つの要素を入れるように助言しましょう。たとえば「授業中のおしゃべり声が、我慢できないほどつらいから、やめるように言ってほしい」「食事のにおいが、とても気になるから、他の場所で休みたい」というように、(1)(2)(3)の要素を一文に入れて伝え、相談できるようになるのが理想です。
とはいえ最初からは無理でしょうから、(1)(2)(3)の足りない部分を大人が聞き出して一文にしてフィードバックし、本人にそれを復唱させてみてください。こうして、自分で一文で伝えて相談できるようになるよう、時間をかけて導いてあげるとよいでしょう。
とはいえ、幼児前期などの幼い子は、そもそも自分の気持ちに気づくこと自体が難しい年齢です。そのため、子どもがつらそうにしている様子を察知したら、その場から連れ出して不快な刺激から物理的に離してあげましょう。その上で、「こういう刺激につらいと感じるんだね」と自分の感覚を認知させ、成長と共に上記のような対処法を徐々にとれるように、気長に導いていくとよいでしょう。
HSCの子どもの特性……共感力・優しさなど素晴らしい特徴も
HSCであることは、大変なこと、困ったことばかりではありません。たとえば、人の気持ちに細やかに気づいて共感できるなどの素晴らしい特性を持つこともあります。HSCの子どもは人の気持ちをとても敏感に読み取れるため、上述したように、親がつらいと一緒につらくなり、体調を崩してしまう子もいます。そうした場合、その子の優しさに「ありがとう」と感謝を伝え、共感できることは人を労る心があるからであり、「とても優しい子でいてくれてうれしい」と肯定的な感情を伝えてあげましょう。
その上で、自分の気持ちや心身に生じた変化は、言葉で分かち合えることを教えてあげましょう。たとえば、親がつらそうにしているときに自分の体調が悪くなったなら、「お母さんがつらそうにしているから、私もお腹が痛くなってきたんだよ」というように、感じていることを言葉で伝えてほしいと伝えます。「言葉にすると自分の状態に気づけるし、抱えている思いを解き放てるから、楽になれるんだよ」と教えてあげましょう。