お金に対する過剰な不安が続く「貧困妄想」とは
貯金しても将来のお金のことが不安でたまらない。それは「貧困妄想」かもしれません
無理なく生活していける経済状況でも、お金に対して過剰な不安に駆られてしまうことがあります。「お金がない。どうしよう」「このままでは生活が立ちゆかなくなる」「破産してしまう」「収入がなくなるかもしれない」。このように「お金がない」「お金がなくなる」という不安に極端にとらわれてしまうことを「貧困妄想」といいます。
生活に困らないだけの貯金や収入がある人でも、貧困妄想にとらわれてしまうことがあるのはなぜでしょうか? 心理的な対処法を含めて詳しく解説します。
<目次>
- 貧困妄想とは、うつ病の三大妄想のひとつ
- 十分に貯金があっても「お金がない」「お金がなくなる」と考えすぎてしまう
- お金の不安にとらわれたときには、結論を急がないこと
- お金に関する不安な情報から距離を置くこと
- まずは心の健康を回復させ、多角的な視点を取り戻す
貧困妄想とは、うつ病の三大妄想のひとつ
貧困妄想は、「罪業妄想」(「すべて私が悪い」といったとらわれ)や「心気妄想」(「重大な病気にかかっている」という思い込み)と並ぶ、「うつ病の三大妄想」です。ストレスなどの影響で強い憂うつが続くと認知にゆがみが生じ、深刻な考えにとらわれてしまうことがあるのです。そのひとつが「貧困妄想」です。どんな人でも、お金のことが心配になることはありますが、お金の専門家に相談したり信頼できる情報を集めたり、ゆっくり休んだり気分転換をしたりすることによって、お金への過剰な不安は解消され、現実的な対策を考えることができます。しかし貧困妄想に陥ると、合理的に考えられなくなり、お金の不安にとりつかれたままになってしまいます。
十分に貯金があっても「お金がない」「お金がなくなる」と考えすぎてしまう
貧困妄想にとらわれると柔軟な考え方を見失い、深刻な方向に考え込んでしまいます。生活に困らないだけの貯金があるのに、「このお金はあっという間に底をつく」などと考えてため息をつき、「すぐに家を売った方いいのでは」「子どもの学校をやめさせなくては」などと極端な思考に陥ってしまうこともあります。人から「十分に貯金があるんだから大丈夫」「収入もあるんだから心配ない」などと助言されても、「お金がない」「お金がなくなる」という一定の方向しか考えられなくなってしまうのです。
お金の不安にとらわれたときには、結論を急がないこと
貧困妄想が強くなっているなら、心の専門医や心理カウンセラーに相談することで、自分をとらわれから解き放つことが必要です。冷静さを取り戻せば、現実的に物事を考えられるようになります。間違っても貧困妄想に左右されて、結論を急がないこと。重大な決断は先延ばしにしましょう。たとえば「この状況では家を売るしかない」「子どもの学校をやめさせるしかない」といった焦りから、早急に家の売却や引っ越し、退学の手続きなどに着手しないようにしましょう。信頼できるお金の専門家に相談することで、現実的な解決方法が見つかるかもしれません。金融機関や学校に相談すれば、ローン返済方法の見直しや奨学金の利用などの方法の提案も受けられるでしょう。
ただしこうした相談も、できるかぎり家族やパートナーと共に受けることが望ましいです。状況を多角的な方向から検討するためにも、一人だけで考えないことが大切です。
お金に関する不安な情報から距離を置くこと
また、お金にまつわる深刻な情報ばかり集めないようにすることも大切です。スマホやパソコンを見続けていると、お金に関するネガティブな情報を繰り返し検索し、絶望的な気分に陥ってしまうことが多いのです。「自己破産」や「ローン破綻」といったキーワード検索がやめられなくなり、貧困妄想を強めている方も少なくありません。したがって、家に一人でいるときには、できるだけスマホやパソコンを遠ざけておきましょう。誰かと話し、外に出て気分を変えることで、気持ちを楽にすることが必要です。
まずは心の健康を回復させ、多角的な視点を取り戻す
繰り返しますが、貧困妄想にとらわれているときには「お金がない」「お金がなくなる」という一定の方向しか考えられなくなっています。しかし、それは一時的に認知にゆがみが生じているためであり、心の健康が回復すれば、多様な方向からお金のことを考えられるようになります。したがって、まずは自分自身の心を労り、疲れを取り除いていきましょう。そのためにも、心の専門医やカウンセラーに相談すること。そして、まずはぐっすりと眠り、おいしく食事をとれる健康状態をつくることで、冷静に考えられる心身の土壌を整えることを目指していきましょう。