「新しい日常」でストレスは増えるのか、減るのか?
新しい生活様式が求められる時代の始まり……「新しい日常」におけるマインドセットのポイントは?
緊急事態宣言が全国で解除となり、日常生活再開に向けて歩き始めていくこととなりました。とはいえ、新型コロナ感染症流行の第2波、第3波を防ぐためには、引き続きソーシャル・ディスタンスをとりながら活動しなければなりません。つまり、治療法が確立するまで当面の間は政府が提示する「新しい生活様式」を取り入れ、新しい日常を送る時代となりました。
働き方においては、テレワークやローテーション勤務、時差通勤、会議や名刺交換はオンライン、対面での打ち合わせでは換気とマスク着用など。私生活においては、引き続き「3密」(密集、密接、密閉)の回避、帰省や旅行を控えめにすること、会食においても大人数、大皿料理を避けること、おしゃべりを控えめにすることなどが求められています。
こうした新しい日常を窮屈に感じる人もいれば、逆に「ストレスが軽減する」と歓迎する声もあります。
「新しい日常」への思いは賛否両論? これからのメリット・デメリット
筆者の身近な人たちの間では、新しい日常は意外にも歓迎ムードです。「満員電車はもう無理。混雑率180%以上なんてもう考えられない」「パソコンとスマホさえあれば、そもそも毎日出勤・登校しなくていいはず」「オンライン会議は短時間で済むから合理的」「苦手な人が目の前にいないのは、本当に楽」といった声がよく聞こえてきます。在宅勤務・在宅学習に慣れてしまうと、満員電車のストレスや形式的なだけのやりとり、気の合わない人と長時間過ごすことの苦痛さに改めて気づかされます。そして、出勤・登校しなくても仕事や学習は進む、むしろ効率的なことも多いということを発見できたりするのでしょう。
とはいえ、新しい日常が続くことへの不安や不満もやはり多いもの。「オンラインのやりとりは疲れる、疑心暗鬼になる」「入学、入社、異動後の孤独感はいつまで続くのか」「会食や飲み会を企画しにくい」「レジャーに出かけても100%楽しめない」といった声も少なくありません。
こうした声の背景には、在宅では気分が変わりにくい、指導者や経験者に細かいことを質問しにくい、オンラインでは相手の真意をつかみにくい、仲間がそばにいないと孤独感が募る、感染不安と隣り合わせでは緊張感が解けない、といった理由があるようです。
「新しい日常」におけるマインドセット! 押さえるべき2つのポイント
このように新しい日常については多様な思いがありますが、しかしこの変化は、新しい時代にシフトするための重要なステップ(お試し期間)と言えそうです。そして、私たちはこの体験を通じて、自分自身の認知や思考にも変革を加えていく必要がありそうです。そこで今回は、私がおすすめしたい「新しい日常」におけるマインドセットのポイントを2つお伝えしたいと思います。1. 脳は「新奇性とチャレンジ」を好む! 新しい日常から生まれる物事を楽しもう
災害からの復興、経済危機からの脱却など、人間は突如到来するピンチに直面した時に大きな変革と成長を遂げます。そして私たちの脳は、新奇性に富む課題に直面し、困難を乗り越えてチャレンジするときに非常に活性化します。新奇性とチャレンジは、快感を生み出す脳内神経伝達物質ドーパミンの放出を促すからです。
ドーパミン神経は報酬系回路であるため、刺激するとさらに新しいもの、チャレンジングなものを貪欲に追い求めます。この機能のおかげで、人類は知的好奇心を伸ばし、新たな知見や技術を生み出し、現代まで発展してきたのです。そして、いま私たちが直面している「新しい日常」こそ、現代人にとってのいちばん新しい挑戦です。この体験を「不安」ではなく「チャンス」と捉えて、ドーパミン神経を活用しながら試行錯誤を楽しんでいきましょう。
2. 「本当に必要なもの」だけが残る! 時代の変化を前向きに捉えよう
自粛生活、ソーシャル・ディスタンスによって、私たちはあたりまえに享受してきた日常や常識が奪われてしまいました。しかし、これらの「あたりまえ」は本当に必要なものだったのか、これからも必要なのか、自粛生活を通じて皆が考えるようになりました。
「新しい日常」の体験を通じて、不要なもの、代替可能なものは淘汰されていくでしょう。そして、アフターコロナには「本当に必要もの」だけが残っていくようになるでしょう。つまり、私たちが今直面していることは、これまでのしがらみにとらわれず、自分や人々が幸せになれる社会を実現するための模索。そう捉えて、自分自身もこの時代の流れに乗っていきましょう。
「新しい日常」は時代の要請? 迷うより楽しもう!
今回の新型コロナの問題に限らず、私たちが生きる21世紀社会の特性は「VUCA」(ブーカ)と呼ばれています。つまり、変動(Volatility)、不確実(Uncertainty)、複雑(Complexity)、曖昧(Ambiguity)を特徴とする予測不能な社会だということ。未知の感染症、災害、技術革新、5G以降の社会変革など、今後も予測もつかない出来事に直面するでしょう。そうした時代に必要なマインドセットの基本は、「プランド・ハプスタンス」(計画された偶発性)です。つまり、飛び込んだ道で遭遇する偶然の出会いや気づきから、建設的な解につながる何かを発見していくということ。そして、このプランド・ハプスタンスを発揮するには、クランボルツ博士の言う4つの意識(好奇心を持つこと、粘り強く取り組むこと、楽観的に考えること、柔軟に考えること)が必要なのです。
ぜひ、私たちが直面する「新しい日常」もVUCA時代の一課題と捉え、プランド・ハプスタンスを発揮しながら、様々なことを感じ、考えつつ取り組んでいきましょう。
「VUCA」について詳しく知りたい方は「VUCA時代、活気ある後半生を目指す50代の3課題」「プランド・ハプスタンス」について詳しく知りたい方は「「自分探し」で迷子になったオトナへの処方箋」をご参照ください。