ストレス

コロナで深まるカップルの愛情、心理学的考察

【公認心理師が解説】新型コロナ対策による外出自粛でデートもできず、距離をとらざるを得ないことにストレスを感じているカップルも多いのではないでしょうか。会えない、近づけないことが、時に疑心暗鬼や不安などのネガティブな感情を生んでしまうことがあります。逆に、こうした状況下でも相手を気遣い、前向きな会話を交わすことで、愛情を深めるカップルになることも可能です。心理師の立場から解説します。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

コロナ自粛でデートも中止……会えないストレスによる恋人同士の悩み

落ち込む女性

恋人と会えないストレス……ダメになるカップルときずなを深めるカップルの心理の違いとは?


新型コロナ拡大による外出自粛と流行地域での緊急事態宣言。誰もが日常生活に不便や不安を感じていると思いますが、特にカップルの間では「会えないストレス」「近づけないストレス」に悩んでいる方も多いことと思います。

お互いを感染から守るために、恋人間でもソーシャルディスタンスをとるべきだと分かっていても、それを実行するのは辛いもの。「外出自粛で全くデートができない」「触れ合いたくても、自分や相手が感染していたらと思うと不安」「マスク越しの会話では、何だか味気ない」……。そのため、会う時間も短くなり、デート代わりのビデオ通話を空しく感じ、会えないストレスで苦しくなってしまう……こうした悩みもあるかと思います。

しかし、会えない、近づけないストレスは、逆にお互いの心の距離を縮めるきっかけにもなり得ます。こうした非常時に破局してしまうカップルと、愛情を深めていくカップルの違いを、心理師の立場から考えてみたいと思います。
 

コロナ自粛で別れるカップルは? 注意すべき3つの心理傾向

恋人同士が会えない、近づけないストレスは、時にお互いをネガティブな感情に引きずり込んでしまいます。直接的な会話を十分できないことで意思の疎通が難しくなり、「LINEの返信がそっけないのは、私(僕)に興味がなくなったから?」など、相手に対する疑心暗鬼も募りがちです。

感染予防が大事だと分かっていても「今は会わない方がいい」と言われると、自分が否定されたような気持ちになってしまう方もいるでしょう。ソーシャルディスタンスをとらざるを得ず、性欲が満たされなくなることで、フラストレーションが強くなる方もいるでしょう。非常時のストレスに心がかき乱され、ささいなことでケンカになってしまうこともあるかもしれません。

コロナ自粛が長期化する中、次のようなネガティブな心理状態になっていないか、チェックしてみましょう。

■相手への思いやりを忘れていないか
自分の気持ちに余裕がなくなると、相手への思いやりを表せなくなってしまうことがあります。例えば、「この時期にデートなんかして(私が/僕が)感染したら、仕事に差し支える。家族にも申し訳が立たない」などの何気ない一言は、相手より自分のことを心配しているように受け取られてしまうかもしれません。このような発言は自分本位に聞こえやすく、愛情が一気に冷めてしまうことがあります。

■スキンシップ重視の考えになっていないか
交際する上で、スキンシップは大切なものです。でも「(キスもセックスもできないのなら)今会っても仕方がないのでは?」という考え方になっていないでしょうか? 体より心がつながっていることを実感できないと、「私(僕)に興味があったのは体だけ?」と相手に不信に思われてしまいます。

■会話がネガティブになっていないか
彼/彼女と話すときに、新型コロナに関するネガティブな話題ばかりを口にしていないでしょうか? 「これは当分収束しない。この先どんどん悪くなる」「コロナのせいであれもできない、これもできない」といった不満や愚痴ばかりでは、聞かされる方は気持ちが滅入ってしまいます。
 

会えなくてもきずなを深めるカップルになる3箇条

大変な時だからこそ、恋人同士でよい関係を保ち、きずなを深めていくことがとても大切です。そのためには、男性も女性も次の3箇条を意識することをお勧めしたいと思います。すると、会えない、近づけないからこそ、何を大切にするべきかが分かるでしょう。

1. 辛い時期でも、まず相手を思いやる気持ちを示すこと
「万が一でも、あなたを感染リスクにさらしたくない」…このように、自分の体や健康が大切にされていることを実感できると、恋人に対する愛情と信頼の気持ちが増すでしょう。

2. スキンシップが減っても、愛情は変わらないことを伝えること
こんな時期だからこそ、いつもより頻繁にメッセージを送り、電話やビデオ通話で話し合える時間を作っていきましょう。「会えなくても、近づけなくても話したい。心のつながりを感じたい」という気持ちがお互いにあれば、スキンシップをとれない状況が逆に愛情を深める契機になるでしょう。

3. 未来に希望を感じられるポジティブな会話をすること
「事態が収束したら、できなかったことをたくさん楽しもう」「この大変なときに、こんなに頑張っている人がいる。私たちにできることも考えよう」「未来はきっとよくなる。大丈夫」。このように、大変なときでも大好きな人と前向きな会話を交わせると、気持ちがパッと明るくなります。心理学に「予言の自己成就」という概念があるように、前向きな未来像を描けるカップルほど前向きな未来を実現しやすくなります。

「予言の自己成就」については「心理状態で差がつく?会えない時間で冷めるカップル・愛情を深めるカップル」記事をご参照ください。
 

恋人同士のきずなを深めるには、まず自分自身を振り返ること

「コロナ破局」といった言葉も生まれているように、このような有事はカップルにとっての試
練です。しかし同時に、お互いのきずなを深めるチャンスでもあります。不安の多い毎日ではありますが、まずは自分自身がストレスに振り回されないようにし、できるだけ前向きに考えるようにしましょう。

考え方、伝え方ひとつで、カップルの愛情と信頼には大きな差が出てしまいます。悲観的で自分本位な発想をしていれば、相手をつらくさせてしまいます。前向きで相手を気遣う発想をしていれば、相手の心も明るくなり、一緒に試練を乗り越えていく勇気が湧いてきます。

会えない、近づけないストレスの中で、大切な気づきを得ているカップルは多いのではないでしょうか。不安の多い毎日ですが、まずはご自身の考え方、伝え方を振り返りながら、ぜひ大好きな恋人を幸せにするアプローチを考えていきましょう。
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