夫にイライラする原因は「夫に思いやりがない」から?
「なんで私だけ忙しいのに、気が利かないの?」夫に対するイライラには、どう対処していくべきでしょうか
不満や悩みの具体的な内容は様々ですが、数々のお悩みを伺っていると、モヤモヤやストレスの多くは、しばしば「夫が思いやりの気持ちや行動を示してくれない」という気持ちから発生しているようです。
「手を貸してほしいことがたくさんあるのに、気を利かせてくれない」
「私が疲れて横になっていても、ダラダラしているだけだと思われる」
「夫の方が私より体力があるんだから、もっと家事を負担できるはずなのに」
こうしたため息まじりの悩みは、いずれも妻が「夫の思いやり不足」を感じるところから来ていることが多いと感じられます。
夫婦のすれ違いの多くは「言葉の足りなさ」が原因
では、こういった悩みの種となる夫は、もともと思いやりのない人だからなのでしょうか? 実は、夫婦のすれ違いの最も大きい要因の一つに、「言葉の足りなさ」があります。付き合っていた頃には、相手を求める気持ち、労わり、感謝の気持ちを自然と伝えていたのに、結婚してからはあまり口にしなくなった。こうしたご夫婦は、珍しくありません。たとえば、付き合っていた当時は、素直に「会えなくて寂しい」「わざわざ来てくれてうれしい」「一緒に過ごせて楽しかった」という言葉を伝えていたのに、結婚してからはお互いにそう言うこともなくなった。こんな変化が生じていないでしょうか?
結婚後、パートナーへの言葉がけが減ってしまうのは、お互いの性格が冷たくなったからではないでしょう。相談を伺っていると、多くのケースで似たような背景が感じ取れます。特に共通しやすいのは、次の3つです。
■ お互いを「役割」として見てしまうため、感謝の気持ちを感じにくい
たとえば、夫は「主として家庭のために働く役割」、妻は「主として家族の世話をする役割」。このように、夫婦には相手が毎日取り組んでいることを、「役割」による行動だと端的に捉えてしまう傾向があります。すると、相手がやっている仕事や家事を「できるのが当然」「やってくれないと困る」と感じがちです。逆に、できなかったり休んでいたりすると、「努力が足りない」「怠けている」と批判されがちです。したがって、パートナーが毎日、仕事や家事を頑張っていても、「あたり前のことをやっているだけ」と捉え、感謝や労いの感情が浮かんでこない。このような状態にある夫婦は、少なくないようです。
■ 相手を失うリスクが低いため、関係を保つ努力を怠っている
付き合っていた頃に比べ、結婚後はよほどのことがない限り、別れ話にはなりません。したがって、お互いを失うリスクを低く感じるため、関係を保つ努力を怠りがちになります。そのため、結婚前は「愛している」「ステキだよ」というように、パートナーが喜ぶ言葉をよくかけて、相手を失わないように努力していたのに、結婚してからはそういう言葉をかけてまで、相手との絆を保とうとしなくなる。こうしたことが、夫婦関係の中では生じやすいようです。
■ 毎日一緒にいることで新鮮さが薄れ、トキメキがなくなる
熱愛の末に結婚したパートナーでも、何年、何十年と毎日一緒に生活をしていると、お互いに新鮮味を感じられなくなってしまうものです。したがって、以前は「ステキ」と感じていた相手の部分にトキメキを感じにくくなるのです。たとえば、結婚当初は「男らしい」と魅力的に思えていた部分も、毎日接していれば、それを魅力と捉えにくくなることがあります。すると、「男らしく感じてたけど、実は粗野なだけだったのね」「男らしさばかり強調して、繊細さに欠ける人」というように、同じ特性をマイナス面から捉えてしまうこともあります。
結婚生活のよい面……思い出したい精神的なメリットも
とはいえ、結婚にはたくさんのメリットがあります。■ 生活が安定するため、安心感が得られる
一人で家計を切り盛りするより、二人で協力した方が生活が安定しやすくなります。精神的な面でも、一人暮らしよりパートナーと暮らした方が安心だと感じる人は多いです。
■ 家庭を運営できる
二人で生活すると「家庭」ができます。すると、安心・安全に暮らせる自分の居場所で、家庭を運営していく楽しみや充実感を持つことができます。
■ 有事の時に支えになるのはやはりパートナー
病気やけが、仕事や経済的なトラブルなどでピンチに見舞われた時、やはりいちばん頼りになるのはパートナーです。自分のために収入を支えたり、病院に連れて行ってくれたりしてくれる、貴重な存在です。
しかし、結婚生活を続けていると、このようなメリットを享受できているありがたさに、なかなか気づけなくなるものです。しかし、たとえ離婚した後に誰かと再婚したとしても、夫婦になるとまた同じような不満を覚えてしまうケースも見られます。
それなら、まずは今のパートナーとの関係を少しでもよりよいものにしていきませんか? そして、夫婦でいることが「楽しい」と感じられる状態を作っていきませんか? そのために、まずは夫婦関係の中での「変えられること」に、小さな変化を起こしてみましょう。なかでも取り組みやすいのが「言葉かけ」です。
夫の心に響く声かけの効果と具体例
冒頭に挙げた通り、既婚女性の方のお悩みで目立つのが「夫の思いやり不足」です。その気持ちは誰にでもあるものですが、そもそも、思いやりは「こだま」のようなものです。一方が思いやりを向けることで、相手からも思いやりが返ってくるのです。夫がやさしくないと悩む方の場合、「よく考えてみると、自分自身も夫にやさしくできていなかった」ということが、よく聞かれます。たとえば、些細なことへの「ありがとう」の一言が出なくなっていたり、相手の呼びかけへのそっけない返事が増えていたり、相手の話を受け止める前に自分の言いたいことを主張していたり……。そうしたことはないでしょうか?
「だって、相手がやさしくしてくれないから」という感情を覚えるかもしれません。たしかに、ひどい裏切りを受けたり、暴言や暴力を浴びせられたりした場合、やさしさを向ける努力をする価値はないかもしれません。しかし、ひどく傷つけられているわけではなく、なんとなく関係が冷めてきたように感じるレベルなら、夫婦のどちらかがまず思いやりを向けていくことで、その関係は再び温かくなっていきます。
思いやりの言葉かけは、できることからで十分です。「毎日何回」などのノルマを課す必要もありません。大切なのは「視点」です。ぜひ、日々「できて当たり前」「やるのが当然」と感じる相手の行動に、思いやりの言葉をかけていきましょう。
たとえば、寒い中、自分よりも遅く夫が帰ってきたら、「寒いのはお互いさま」と思わず、「おかえりなさい。寒かったでしょう」と言ってあげる。夫が疲れてゴロンと横になっていたら、「休日なのにダラダラしてばかり」と思わず、「だいぶ疲れてるようね」と言ってひざ掛けをかけてあげる。こうしたちょっとしたことを、普段の何気ないやりとりの中にプラスしていきましょう。すると、相手の心はジーンと温かくなり、思いやりを返したくなってくるでしょう。
思いやりの言葉と行動で、夫婦関係に「正のスパイラル」を
「私だって働いている」「私の方が家事の負担が多くて疲れてる」などと思うこともあるかもしれません。しかし、「自分がされていないから」という理由で、相手からの思いやり行動を待ってしまうと、その思いやりはいつまでたっても得られません。やさしさを感じたいなら、まず自分ができることで、相手に思いやりを与えていくこと。すると、いずれは相手からも思いやりが返ってきます。気がついた時だけでもいいので、まずは小さな思いやりの気持ちを、言葉や行動で伝えていきませんか?