「毒親」とは……虐待行為はもちろん、プレッシャーや不要なストレスも
大事に育ててもらったはずなのに、大人になっても親が苦手……。ストレスのたまらない親子関係の築き方とは?
「毒親」という言葉に明確な定義はありませんが、一般的に「毒親」とは、子どもを支配したり傷つけたりすることによって、子どもにとって「毒」になる親のことを意味します。そもそもは、スーザン・フォワードの著書『毒になる親 一生苦しむ子供』(講談社刊、玉置悟訳)が話題となり、この本をきっかけに生まれた俗語だとされています。
子どもに何らかのプレッシャーを与えるような言動から、ひどい虐待行為まで、「毒」とされる親の行動の範囲はさまざまです。
たとえば、子どもに暴力を振るったり、愛情を注がず罵倒したり、無視したり、養育を放棄したり、子どもに必要な教育を与えなかったり、性的虐待をするような人は、誰の目にも明らかな、ひどいレベルの毒親でしょう。
また、それらのひどい虐待行為は見られなくても、子どもの個性を認めず、子どもの気持ちや考えを軽視したり、夫婦ゲンカの多い親なども、子ども自身が「毒親」だと感じていれば毒親だ、と考える方もいるでしょう。
毒親未満でも親子関係がストレス……子の重荷になりがちな親の言動
上のようなレベルではないものの、会話の端々で子どもが傷つくことを言ったり、悪気なく子どものためにならないことや精神的な負担になることをしてしまったりするような場合、「毒親未満」とはいえ、親による迷惑行為と捉えてもよいのではないではないでしょうか。30代、40代の子に対する「毒親未満」の親の迷惑行為には、たとえば次のようなものが挙げられます。・「高い学費をかけて育ててきたのに、この状態じゃあね……」「顔が悪いから、結婚に高望みしたってまず無理」など、無神経なことをズバズバ言う
・経済的に自立している子にたびたび小遣いを与え、お金を介して子どもの心を親に引きつけておこうとする
・子育てのサポートはしてくれるが、頼んでいないことにまで介入したり、合理性のない独自の育児方法を押しつけたりする
・愚痴や悪口などの長話を頻繁にする。「そういう話はやめて」と何度言っても、一向にやめてくれない
・子どもの気持ちを無視して頻繁に物を送りつける。処分に困るような大きなものや高価なものを送ってくることもあり、親切の押し売りをする
いずれも細かいことばかりですが、このような親の行為を継続的に受けると、子のストレスは深刻なものになってしまいます
親に感謝できないのは親不孝? 自分の性格を責める子どもの心
こうしたストレスを受け続けていると、子の心には親をうとましく思う気持ちが募り、そう思う自分を責めてしまいがちになります。「親に感謝できないのは、私の性格が悪いせい?」「親切にしてくれる親にイライラしたら、罰が当たるかも」などと悩み続けると、さらにストレスが増してしまうでしょう。しかし、親子といえども、生まれ育った年代や慣れ親しんだ生活環境や文化、個性や価値観はそれぞれに異なるのですから、親の意向に沿えなくても不思議ではありません。ライフスタイルや価値観の合わない親に対して、子どもが一方的にがまんしてしまうと、心の負担は非常に大きなものになってしまいます。
親のことをうとましく思うのは、冷たい性格だからではありません。適度な距離を保ちながら、お互いの意思やライフスタイルを尊重して付き合っていれば、自然とストレスは減りますし、適度な距離を保っているからこそ、お互いの存在を大切に思えるものです。
30代から整えたい、親とのストレスにならない関係の築き方
大人として、親との関係にストレスを感じずに適度な距離で付き合っていくためには、「4つの境界線」を意識することがとても大切です。これらの境界線は人間関係すべてにおいて大切なものですが、特に互いの距離が近すぎる親子関係においては、常に意識していきたい考え方です。1. 責任の境界線
親が自力でできそうなことに、不用意に力を貸さないようにしましょう。たとえば、「友達のいない親の友達代わりを担うのが子の務めだ」などと考えるのではなく、親自身が自分で友達を探せるように促してみる。「親の夫婦関係が悪いから、私がそれぞれの悪口を聞いてあげなければ」というように考えるのではなく、まず親が自分たちで夫婦関係を修復するように促してみる。親は「子を当てにできない」と思えば、まず自力でなんとかしてみようと思うものです。
2. 感情の境界線
「親がつらそうにしているのに、私ばかり自分の人生を楽しんではいけない」というように思う必要はありません。「自分の気持ちは自分のもの」です。かけがえのない自分を大切にし、自分の感情を豊かなものにしていきましょう。いつも頑張っている自分にゆとりのある時間を与えると、感情が明るく、豊かになっていきます。すると親のつらい気持ちにも、余裕をもって耳を傾けることができるようになります。
3. 時間の境界線
話の長い親と会話をする場合には、あらかじめ時間の枠を設けておくとよいでしょう。たとえば、親が頻繁に愚痴の電話をかけてくるような場合には、「今日は〇時〇分まで話を聞くね」というように、時間の制限枠をあらかじめ伝えましょう。すると、相手は「限られた時間を有効に使わなければ」と考えるようになるため、同じような愚痴を何度も繰り返すより、解決のヒントを探るための会話をしようと思うようになります。
4. 空間の境界線
同居、近居の人は、特に「個の空間」を意識しましょう。家の中には、狭くても個人のスペースを作ることが大切です。たとえば、部屋の片隅に自分だけの鏡台やデスクを持つこと、時には一人で出かけてドライブの車中やカフェなどでゆっくり過ごすことも、「個の空間」の確保になるでしょう。「個の空間」を大切にすると「他者の空間」も大切にすることができます。
以上のように、4つの境界線を意識して親子間の適度な距離を上手に保ちながら、親子がお互いを大切に思い合える関係を築いていきましょう。
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