ダブルケアを経験したことがある人は約3割!
皆さんは、ダブルケアという言葉をご存知ですか? ダブルケアとは、「子育てと親・義親の介護(世話・見守り含む)を同時に行う」という意味です。結婚年齢や出産年齢が上がり、子育て期間と介護の期間が重なる人が増えています。年の差婚で、夫が40代以上という方は、妻が20代~30代でもダブルケアになる可能性があります。
ソニー生命「ダブルケアに関する調査2018」で、「全国の大学生以下の子どもを持つ30歳~55歳の男女17,049名」に、ダブルケアについて自身の状況を聞いたところ、「過去にダブルケアを経験したことがある」人は、12.8%、「現在ダブルケアに直面中」の人は、12.3%、「現在直面中で過去にも経験がある」人は、4.0%と、ダブルケアを経験したことがある人は29.1%(約3割)いることが分かりました。
また、「数年先にダブルケアに直面する」と回答した人も7.5%いるそうです。年代が上がるにつれて、ダブルケアの経験者が増えるそうですが、30代でも約25%(4人に1人)はダブルケアの経験者とのこと。想像以上に多いと感じました。
ダブルケアの実態は?
前出の調査で、「ダブルケアを経験したことがある男女1,000名」を対象に、「親や義親の世話・見守り・介護にどう関わっている(いた)か」を聞いたところ、主なものは「必要に応じて手伝っている(いた)」:47.9%
「愚痴を聞くなど精神的なケアをしている(いた)」:34.9%
「定期的に手伝っている(いた)」:22.9%
「中心となって世話・見守り・介護をしている(していた)」:20.5%
などでした。なお、親(義親)と同居している人(123名)は、同居をしていない人よりも、
「中心となって世話・見守り・介護をしている(していた)」:41.5%
「定期的に手伝っている(いた)」:31.7%
「経済的援助をしている(いた)」:27.6%
といった内容で、高い傾向がありました。同居はしていないけれども、比較的近くに住んでいる(近居)場合は、同居の傾向に近くなるかもしれません。
ダブルケアに関する毎月の負担は約7万5千円!
ダブルケアの経験がある人が不安に思っている(いた)ことの第1位は、「家計・経済状況」(41.0%)、次いで「子どもへの影響」(39.1%)、「自身の健康状況」(31.4%)でした。最も不安とされた経済状況について、現在ダブルケアに直面している人に毎月の負担額を聞いたところ、平均額は以下のようになりました。「その他」費用の内訳は不明ですが、子どもと親(義親)のケアをしながら自分たちも暮らしていくために、便利な家電を買ったり、外食やお惣菜の利用が増えたり、中にはベビーシッターや家事代行を利用する人もいるかもしれません。このほか、半数近くの人が、「想定外の支出がある」とのことでした。子どもの年齢や親(義親)の状況によって、かかる費用は様々ですが、子どもがまだ小さい方は、将来の大学費用などを準備する必要があります。また、子どもがある程度成長した方でも、自分たち自身の老後資金を準備する必要もあるので、家計が不安と思われるのも当然のことと思います。
10人に1人がダブルケアで退職!
家計を維持するためには、仕事を続けることが大切ですが、仕事と育児・介護との両立は、大変なことです。実際、ダブルケアを理由に仕事を辞めたことがある人は、全体で10.0%(男性:8.4%、女性:11.6%)とのことです。年代と性別の違いは、下のグラフをご覧ください。ダブルケアで退職するのは、なんとなく40代以降が多いのかと思っていたのですが、意外にも30代が最も多く、女性で14.5%、男性も12.0%いることが分かりました。主な退職理由は、「子どもが保育園に入れず両立できない」「職場が両立しにくい環境」「親(義親)が介護施設に入れず両立できない」です。両立しやすい環境の職場に転職できれば良いのですが、「パートなどの非正規雇用に転向して、収入が下がってしまった」「当面はダブルケアに専念するので収入がない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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ダブルケアと仕事を両立するために
ダブルケアをしながら現在仕事をしている人も、ダブルケアと仕事の両立には、大変苦労されているようです。特に「中心となって世話・見守り・介護をしている(していた)」人は、「介護サービス利用と仕事の両立がしにくい」「子どもが保育園に入れず両立できない」を挙げた方が、それぞれ約20%あったようです(同調査より)。介護サービスは、要介護者本人のための支援なので、例えば、他の家族も使う水回りや居室の掃除はしてくれません。保育園も介護中ということで入園しやすくなるわけではないので、育児も介護も家事もしながらの仕事は、心身ともにかなり負担が大きいと思います。ダブルケアと仕事の両立のために、職場に必要なこととして、「子育て・介護のための休暇が取りやすい」「柔軟に出社時間を変えられる」「残業を減らす」「短時間勤務を認める」「ダブルケアに対する経済的支援」「在宅ワークを可能にする」といったことが挙げられていました。今、日本では少しずつ「働き方改革」が進み始めたところですが、皆さんのお勤め先で、どのような両立支援制度がある(進められている)か、ご存知ない、という方も多いので、今一度確認してみることをお勧めします。
ダブルケアを夫婦でどう備える?
同調査では、「ダブルケアの備えを特になにもしていなかった」という方は、全回答者(1,000名)中、約4割だったそうです。逆に何かしらの備えをしていた方は、6割近くいらっしゃるということです。実際、「ダブルケアに対する備えとして行っている(行っていた)こと」は、以下のとおりです。年代別に見ると、30代は、「親族(両親や兄弟姉妹など)とダブルケアが起こった場合の負担・分担について話し合う」:29.2%、「誰がいつ要介護になるリスクがあるのか整理する」:24.7%、「子育て・介護に関する経済的な準備をする(貯蓄・保険など)」:18.7%、「子育て・介護に関する地域の支援制度を調べる」:22.0%など、全体平均より高くなっていました。また、40代も「親が元気なうちに介護について話し合う」:23.4%は全体平均より高くなっています。
意外なことに、50代が全体平均よりも低い項目が多く、「介護に関する基礎知識(介護時のカラダの使い方など)を身につける」:12.9%が全体平均より高いものの、「特になにもしていない」が46.7%と最も高くなっていました。自身が介護をするための知識は、大切ではありますが、自分たちだけでできることには限りがあります。家族と状況を整理して、利用できる制度を調べて活用することが、これからの高齢社会では必須といえるでしょう。
ガイド平野は、企業で「仕事と介護の両立セミナー」を行う機会もあるのですが、「介護はまだ先」という方や、30~40代の若い方も多く参加くださっています。自由参加としている企業も多いので、お勤め先でこうしたセミナーが開催されていたら、ぜひ参加なさってみてください。
介護は、突然起こり、いつまで続くかわかりません。夫婦でライフプランを立てて、介護が必要になった場合も教育費や夫婦の老後費用を賄えるかどうか、シミュレーションをしてみましょう。お盆やお彼岸、年末年始など、親族で集まる機会には、ぜひ、ダブルケア(介護)が必要になった場合の備えについて、話し合ってみることをお勧めします。
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