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介護で離職しないために使える制度は?

介護と仕事の両立がしやすくなるよう、国や企業も少しずつ対策を進めていますが、介護のために退職しようと考えたことがある人はまだまだ多いようです。介護をしながら仕事を続けるために、利用できる介護休業制度等について解説します。

平野 直子

執筆者:平野 直子

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介護離職を考えたことがある管理職は、47.5%!

介護をしながら働く男性も増えている

介護をしながら働く男性も増えている

以前、コラム「介護家系図でわが家の介護離職ゼロを目指そう!」の中で、「介護のために仕事を辞める人は、年間10万人」ということを書きました。これは平成24年の調査報告によるもので、その後、介護離職を防ぐ支援が広まっていますが、高齢者の人口も増えているので、介護に直面している人はさらに増えているだろうと思われます。

アデコ株式会社が、介護に携わったことがある管理職に対して行った「仕事と介護の両立アンケート調査」によると、「介護を理由に退職を考えたことがある管理職は、47.5%」と、半数近くになるそうです。さらに、「すでに介護のために会社を休むことがある」という人は、57.2%の方が「介護離職を考えた」と回答していました。

退職を考えた理由(複数回答)としては、
「体力・精神的な負担や不安」:20.7%
「要介護度の変化・介護を優先したい」:18.2%
「仕事・職場への影響」:16.8%
「介護と仕事の両立が困難」:16.1%
「時間がない」:11.5%
が挙げられていました。(同調査より)
何日も連続で、出勤前や帰宅後にも介護に携わることは、体力的に大変厳しいです。また、職場では、残業をせずに退社したり、休みを取ることで部下や同僚に迷惑をかけてしまうのでは、という気兼ねもあり、精神的な負担も大きいと思います。「いつまで続くか分からない介護と仕事を両立することは難しい……」と、退職を考えてしまうのだろう、と思います。

介護の専門家や周囲のサポートは心強い

介護の専門家や周囲のサポートは心強い


一方、同調査では、「退職を考えなかった」という人も52.5%と、半数以上いらっしゃいました。
退職を考えなかった理由(複数回答)は、
「収入面での不安」:26.0%
「家族のサポートがあった」:14.6%
「職場の理解や支援・制度の充実」:10.2%
「介護の負担が少なかった」:9.5%
「外部サービスの利用」:6.7%
となっていました。

やはり何といっても、辞めてしまったら収入面が心配、という方が多いです。この調査の対象者は、「介護に携わったことがある管理職」なので、年齢は40~50代が多いと思います。職場でも責任のある仕事を担う一方、家庭でも教育費や住宅ローンの返済など、支出も多い時期だと思います。

介護度や要介護者の住まいの距離にもよりますが、「介護の負担が少なかった」という方は1割未満なので、介護が大変という方でも退職を考えなかった、とも言えるでしょう。家族のサポートや職場の理解、支援制度や外部サービスを活用することが、仕事を続ける上で大切だと感じました。

介護に関する支援制度、2017年に改正された内容は?

介護離職をなくすために、国が定める介護休業制度も少しずつ改良されていて、2017年1月からは、介護休業が通算93日を3回に分けて取得できるように改正されました。また、介護休暇は、半日単位でも取れるようになりました。2017年12月現在の介護休業制度の主な内容は、以下のとおりです。
厚生労働省リーフレットをもとにガイド平野が図表作成(クリックすると拡大表示されます。)

厚生労働省リーフレットをもとにガイド平野が図表作成(クリックすると拡大表示されます。)


このほか、【時間外労働の制限】、【深夜業の制限】などが設けられ、介護中の労働者が請求した場合は、事業主に義務付けられています。ただし、入社まもない方や1週間の所定労働日数が2日以下の労働者など、対象とならない方もいらっしゃいます。育児休業等と同様、パートや派遣社員、契約社員など、いわゆる有期契約で働いている方でも、一定の範囲の方は、介護休業を取ることができますので、勤務先の人事部等にご確認ください。

*なお、介護休業は、育児休業と異なり、労働者本人が介護を行うことを目的としていません。介護認定申請手続きや介護施設の検討、職場の両立支援制度の確認や利用申請など、仕事と介護の両立ができるための準備期間という位置づけです。

【平成29年10月1日施行対応】育児・介護休業法のあらまし(厚生労働省HP)

介護に関する支援制度、実際使っている人はどれくらい?

年々、介護に関する支援制度も認知度が上がってきましたが、アデコ株式会社の調査によると、「介護を理由に会社を休んだことがある管理職」は、88%の方が「有給休暇」を使ったとのこと。「介護休暇」を使った人は15.9%、「介護休業制度」を使った人は、2.7%と、まだまだ利用者は少ないことが分かりました。一方、会社にある支援制度と、利用したかどうかをたずねたところ、以下のような結果になりました。

アデコ株式会社「仕事と介護の両立」アンケート調査をもとにガイド平野がグラフ作成(クリックすると拡大表示されます。)

アデコ株式会社「仕事と介護の両立」アンケート調査をもとにガイド平野がグラフ作成(クリックすると拡大表示されます。)


もっとも多く利用されたのは、「半日単位、時間単位の休暇制度」で、63.5%でした。次いで「遅刻、早退または中抜けなどの柔軟に出退勤できる制度」が29.2%、「フレックスタイム勤務制度」が19.7%でした。「ケアマネージャーさんとの面談など、丸1日休む必要はなく、数時間調整できればいい」という声もよく耳にします。時間単位で休むことができれば、職場の方や仕事への影響も抑えられるので、利用しやすいのだと思います。

一方、「残業・休日勤務の免除」や「短時間勤務制度」「時差出勤制度」については、「制度があり、利用した」人よりも、「制度はあるが、利用しなかった」という人の方が多く、「制度がない」という回答も70%以上ありました。

現行の介護休業制度では、「残業の免除」など、対象家族を介護している労働者が請求をすれば利用できます。また、介護休業等の申し出や取得をした労働者に対して、不利益な取り扱いをすることは禁止されているのですが、「職場内で周知されていない」「制度があっても、利用しにくい」という背景もあるのかもしれません。

けれども、なかには、制度があることをご存じなかった、という方もいらっしゃいます。会社によっては、国の介護支援制度以上に充実した制度がある場合もありますので、勤務先の介護支援制度を確認してみることをお勧めします。

介護はプロに任せて!

介護はプロに任せて!
 

介護休業制度を活用して、キャリアを継続!

「介護休業を開始した日前2年間に雇用保険の被保険者期間が12か月(*4)以上ある」など、一定の要件を満たす労働者が、介護休業を取得した場合、最長3か月間、雇用保険から「介護休業給付金」が支給されます。1日あたりの支給額は、「賃金日額(*5)×67%」となっています。

およそ7割弱の収入になりますが、たとえその期間収入が減ったとしても、退職や転職をするより、家計を支えることができます。また、介護が一段落した時には、これまで積み上げてきたキャリアを継続することもできるでしょう。

*4 1か月とは、「介護休業開始日の前日から1か月ごとに区切った期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日ある月」
*5介護休業する直前6か月分の賃金÷180
Q&A~介護休業給付~(厚生労働省HP)

利用できるサービス等を活用して、自宅でも「働き方改革」を!

介護休業制度など、せっかく制度があっても、使いにくい雰囲気ではもったいない、ということで、「制度を利用しやすい職場風土の醸成」「働き方改革」などに力を入れている企業が増えてきました。家庭の中でも、仕事(家事・介護)の効率化を進める必要があると思います。前出の調査で「退職を考えなかった人」の理由として、「外部サービスの利用」が挙げられていました。介護は、介護のプロに任せると、より良質な介護を受けられる可能性があります。便利家電や家事代行サービスなどは、家事の負担を軽くすることができます。

介護が必要になった場合に備えて、介護休業制度や利用できる介護サービス、地域・民間のサービスはどのようなものがあるか、ご家族で情報収集してみてはいかがでしょうか。

【関連リンク】
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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