新しい世界遺産は19件、総計1092件へ!

インドの世界遺産「ムンバイのヴィクトリア・ゴシック様式とアール・デコ様式の建造物群」ラジャバイ時計台

ロンドン・ウェストミンスター宮殿のビッグベンをモデルにしたといわれる高さ85mのラジャバイ時計台。インドの世界遺産「ムンバイのヴィクトリア・ゴシック様式とアール・デコ様式の建造物群」構成資産

毎年夏に開催されている世界遺産委員会。今年2018年もバーレーンのマナマで6月24日~7月4日の日程で開催され、新たな世界遺産が誕生した。新登録の世界遺産は文化遺産13件、自然遺産3件、複合遺産3件の計19件。これで世界遺産の総数は1092件となり、文化遺産845件、自然遺産209件、複合遺産38件となった。

世界遺産最多保有国について、2016年に中国が長年首位を独占してきたイタリアに1件差に詰め寄っていたが、今年両国は1件ずつを登録したため順位は変わらなかった。両国は来年2019年の世界遺産委員会にも2件ずつを推薦しており、首位争いが続きそうだ。

21件で12位だった日本は1件増やしたが、順位は変わらなかった。

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「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」
2度目の挑戦で登録に成功!

「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」大浦天主堂

豊臣秀吉の禁教令で処刑された26聖人に捧げられた大浦天主堂。1864年の建設で、翌年潜伏キリシタンらが神父に信仰を明かした「信徒発見」の地でもある

長崎県と熊本県に点在する12の資産をまとめた「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が日本の22件目の世界遺産、18件目の文化遺産となった。

この物件はもともと「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」という名称で2015年に推薦されていたが、文化遺産の調査・評価を行っているイコモス(ICOMOS。国際記念物遺跡会議)から「禁教・潜伏に重点を置くべき」という指摘を受け、登録が難しくなったことから翌年推薦を取り下げていた。

その後イコモスとアドバイザー契約を結んで助言を受け、テーマを禁教・潜伏に移すとともに構成資産の力点を教会から集落に変更し、隠された家々や墓地、マリア観音を祀った神社、解禁後に建てられた和洋折衷の教会堂など集落10件、城跡1件、教会堂1件の12件をまとめて2017年1月に再推薦を行い、今回の登録にこぎ着けた。

この新世界遺産の概要を文化庁の報道資料から抜粋しよう。なお、「潜伏キリシタン」とは江戸の禁教時代に離島などに潜伏して教えを守り抜いたキリスト教徒のことで、禁教前後にも仏教徒を装うなどして信仰を隠した「隠れキリシタン」と区別されている。

■資産の概要
  • 本資産は、16世紀にキリスト教が大航海時代を背景に極東の国日本へ伝来し、その後の江戸幕府による禁教政策の中で「潜伏キリシタン」が密かにキリスト教への信仰を継続し、長崎と天草地方の各地において厳しい生活条件の下に、既存の社会・宗教と共生しつつ、独特の文化的伝統を育んだことを物語る貴重な証拠である。
  • 潜伏キリシタンの文化的伝統が形成される契機となる出来事が考古学的に明らかにされている原城跡、潜伏キリシタンが密かに信仰を維持するために様々な形態で他の宗教と共生を行った集落(平戸の聖地と集落・天草の崎津集落・外海の出津集落・外海の大野集落)、信仰組織を維持するために移住を行った離島部の集落(黒島の集落・野崎島の集落跡・頭ヶ島の集落・久賀島の集落・奈留島の江上集落(江上天主堂とその周辺))、潜伏キリシタンの伝統が終焉を迎える契機となった出来事が起こり、各地の潜伏キリシタン集落と関わった大浦天主堂から構成される。
■「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」構成資産
  • 原城跡(長崎県南島原市)
  • 平戸の聖地と集落[春日集落と安満岳](長崎県平戸市)
  • 平戸の聖地と集落[中江ノ島](長崎県平戸市)
  • 天草の崎津集落(熊本県天草市)
  • 外海の出津集落(長崎県長崎市)
  • 外海の大野集落(長崎県長崎市)
  • 黒島の集落(長崎県佐世保市)
  • 野崎島の集落跡(長崎県北松浦郡小値賀町)
  • 頭ヶ島の集落(長崎県南松浦郡新上五島町)
  • 久賀島の集落(長崎県五島市)
  • 奈留島の江上集落[江上天主堂とその周辺](長崎県五島市)
  • 大浦天主堂(長崎県長崎市)
なお、同時に推薦されていた「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」は自然遺産の調査・評価を行っているIUCN(国際自然保護連合)から登録延期の勧告を受けたため、6月に推薦を取り下げている。また、2019年の世界遺産委員会には49基の古墳をまとめた「百舌鳥・古市古墳群」が推薦されている。

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危機遺産リストは1増1減で54件の現状維持

世界遺産「ベリーズのバリアリーフ保護区」のグレート・ブルー・ホール

世界遺産「ベリーズのバリアリーフ保護区」のグレート・ブルー・ホール。直径318メートル、深さ124メートルを誇り、世界でもっとも偉大なダイビング・ポイントのひとつとされている

価値を失う危機に直面している世界遺産を登録している「危機遺産リスト」。これまで54件が記載されていたが、今回1件が無事解除された一方、1件が追加されて総数は変わらなかった。

特に注目されたのは、世界遺産リストからの抹消が審議されたウズベキスタンの「シャフリサブス歴史地区」だ。歴史地区に新しい庭園や道路を造るなど過度な観光開発のため2016年に危機遺産リスト入りし、以降も歴史的な住宅の一部を破壊して公園を整備するなど価値の喪失が進んでいた。世界遺産委員会は保全のためのワーキンググループを設置し、新たなロードマップを作成するということで世界遺産の維持を決定した。

<危機遺産リストから解除された物件>

■ベリーズのバリアリーフ保護区
ベリーズ、1996年、自然遺産(vii)(ix)(x)
世界で2番目、大西洋・北半球では最大を誇るサンゴ礁。多彩なサンゴ礁が種々の魚類を育むだけでなく、沿岸部のマングローブ林が独自の生態系を築いており、アメリカマナティー等の貴重な動植物の生息域となっている。2009年にマングローブ林の伐採とそれに伴う生態系の破壊、石油採掘計画と油の流出問題などから危機遺産リスト入りしていたが、政府は石油開発の停止を決め、保護林の規制強化や開発許可の厳格化等々の海洋管理計画を打ち出して解除を勝ち取った。

<危機遺産リスト入りした物件>

■トゥルカナ湖国立公園群
ケニア、1997年、2001年範囲変更、自然遺産(viii)(x)
砂漠に位置する世界最大の湖で、南北249キロメートル、東西44キロメートルを誇る。オモ川をはじめ複数の川が流入するが、流出河川は存在しない。この物件には石油・観光開発や密漁・放牧等の問題が挙げられていたが、最大の懸念材料はオモ川上流・エチオピア側に建設されたギベIIIダムで、稼働をはじめた2015年以降、水位の低下が報告され、季節による水位変動がなくなるなどの影響が表面化している。さらに灌漑プロジェクトも進行中で、農薬の流入など生態系の破壊を懸念してリスト掲載が決まった。

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2018年新登録の世界遺産全リスト

イタリアの世界遺産「イヴレーア、20世紀の産業都市」

イタリア初のタイプライター工場であり、イタリア初の本格的鉄筋コンクリート工場でもあるマットーニ・ロッシ(赤レンガ工場)。世界遺産「イヴレーア、20世紀の産業都市」構成資産

それでは2018年に新たに登録された世界遺産の全リストと、重要な範囲変更が行われた世界遺産、計20件の概要を紹介しよう。

リストは文化遺産→自然遺産→複合遺産の順番で、各遺産内はヨーロッパ→アジア→オセアニア→北アメリカ→南アメリカ→アフリカ、さらに国名五十音順で記載した。世界遺産の日本語名はガイドによる適当な訳で、正式名称は英語名となる。また、世界遺産の内容は勧告時のもので、その後の審議で若干変更されている可能性がある。

<文化遺産13件>

■イヴレーア、20世紀の産業都市
Ivrea, industrial city of the 20th century
イタリア、文化遺産(iv)
ピエモンテ州のイヴレーアはドーラ・バルテア川を挟んだ新旧ふたつの市街よりなり、旧市街にはローマ時代~近世の街並みが残る一方、新市街には工場を中心とした産業都市が広がっている。産業都市成立のきっかけは1908年に設立されたオリベッティ社で、戦前のイタリアの産業を支え、戦後の復興の中心を担った。構成資産の多くは1930~60年代に築かれたタイプライター・電卓・PC工場と研究所・社宅・文化施設・庭園等々で、20世紀を代表する工業都市モデルとして評価された。
スペインの世界遺産「ザフラー旧市街のカリフの都」

941年に建設された「花の都」ザフラー旧市街のモスク、アルジャーマ。ザフラーは「開花」を意味する。スペインの世界遺産「ザフラー旧市街のカリフの都」構成資産

■ザフラー旧市街のカリフの都
Caliphate City of Medina Azahara
スペイン、文化遺産(iii)(iv)
コルドバ郊外に広がるザフラーのメディナ(旧市街)は、後ウマイヤ朝でカリフ(イスラム教創始者ムハンマドの後継者でスンニ派の最高指導者)を名乗ったアブド・アッラフマーン3世が10世紀に築いた城郭都市。1500×750mの市壁に囲まれた城内にはザフラー宮殿が築かれ、王の離宮として使用された。1010年前後の内戦によって荒廃したのち放棄され、20世紀はじめに発見されるまで長らく眠りに就いていた。キリスト教徒による国土回復運動=レコンキスタ以前のイスラム都市を伝える貴重な遺跡として評価された。

■アシヴィスイット-ニピサット、氷と海の間に広がるイヌイットの狩猟場
Aasivissuit – Nipisat. Inuit Hunting Ground between Ice and Sea
デンマーク、文化遺産(v)
西グリーンランド・ケカッタに位置する地域で、全長40キロメートルに及ぶ広大な氷床が展開し、氷河に削られたダイナミックなフィヨルドが海に落ち込んでいる。北極圏に含まれる厳しい自然環境にもかかわらず紀元前2500年頃にはじまるサカク文化からドーセット文化、チューレ文化、18世紀のデンマーク=ノルウェーによる植民地時代まで4200年にわたる美しい文化的景観を伝えている。構成資産にはイヌイットの狩猟場アシヴィスイットやイヌイットの拠点ニピサット島など7地域が含まれる。

■ヘーゼビューとダーネヴィアケの考古学的国境遺産群
Archaeological Border complex of Hedeby and the Danevirke
ドイツ、文化遺産(iii)(iv)
ヘーゼビューはバイキング(北方ゲルマン系民族)の要衝として発達し、9世紀にデンマーク王ゴドフレドによってユトランド半島最大の拠点として整備された。ゴドフレドは、ヘーゼビューを取り囲むようにダーネヴィアケと呼ばれる高さ3~6メートルほどの土塁を建造し、これを延長して半島をヨーロッパ本土と分ける全長約33キロメートルの長城へと拡張した。このラインが長らくデンマーク王国とフランク王国の国境となり、ユトランド半島が北欧文化圏に留まる一因となった。

■ナウムブルク大聖堂
Naumburg Cathedral
ドイツ、文化遺産(i)(ii)
第39回世界遺産委員会で登録延期、第41回で情報照会を決議された物件。イコモスは当時からその価値や証明を認めておらず、今回も同様だったが、以前の世界遺産委員会が価値を認めていたため判断不能の不勧告としていた。ナウムブルク大聖堂は1028年に建設がはじまり、13~14世紀にロマネスク様式や初期ゴシック様式で大幅に改修・増築された。特に「ナウムブルク・マスター」と呼ばれる謎の彫刻家による聖堂創設者を描いた12の石像群は傑作として名高い。イコモスは同時代の大聖堂と比べて傑出した価値の証明がなされていないとしたが、世界遺産委員会は逆転登録を決議した。
トルコの世界遺産「ギョベクリ・テペ」

丁字型のメンヒルがサークル状に連なったトルコの世界遺産「ギョベクリ・テペ」のエンクロージャー群 (C) Teomancimit

■ギョベクリ・テペ
Göbekli Tepe
トルコ、文化遺産(i)(ii)(iv)
「太鼓腹の丘」を意味するギョベクリ・テペはティグリス川とユーフラテス川の上流域に位置し(さらに上流で両河川は合流する)、この辺りで世界最古の農業共同体が誕生し、メソポタミア文明に発達したと考えられている。ギョベクリ・テペのテル(遺丘)では新石器時代の紀元前9600~前8200年までさかのぼるメガリス(巨石記念物)が発見されている。特徴的なのはエンクロージャーと呼ばれるストーンサークルで、動物が描かれた丁字型のメンヒル(立石)が直径10~30メートルほどのサークル状に並べられている。

■ファールス地方のササン朝の考古学的景観
Sassanid Archaeological Landscape of Fars Region
イラン、文化遺産(ii)(iii)(v)
224~658年にかけてペルシアの地で栄えたササン朝の最初期を支えた考古遺跡をまとめたシリアルノミネーション・サイトで、構成資産はフィルザバードのカレー・ドフタル、アルダシール1世の任官のレリーフ、勝利のレリーフ、アルダシール・クレフ、アルダシール宮殿、ビシャプールのカレー・ペサール、シャプールの洞窟、サルベスターンのサルベスターン記念碑(ササン宮殿)の8か所。アケメネス朝やパルティアの文化を受け継ぐこれらの遺跡はやがてウマイヤ朝やアッバース朝といったイスラム王朝に引き継がれ、中東文化の中心を担っていく。

■ムンバイのヴィクトリア・ゴシック様式とアール・デコ様式の建造物群
Victorian Gothic and Art Deco Ensembles of Mumbai
インド、文化遺産(ii)(iv)
19世紀、「太陽の沈まぬ帝国(第二帝国)」を完成させたヴィクトリア女王の時代、イギリスは1857~59年のインド大反乱を鎮圧してインド支配を強め、イギリス領インド帝国として植民地化を進めた。港湾都市ムンバイ(ボンベイ)はスエズ運河が開通したこともあってインド西部の玄関口として発展し、ゴシックやバロックなど中世の建築様式を採り入れたヴィクトリア様式の豪奢な建物を建設して都市を彩った。20世紀になるとアール・デコ様式やインド・サラセニア様式なども流行し、建築都市として隆盛を迎えた。
オマーンの世界遺産「古代都市カルハット」ビビ・マリアム廟

ホルムズ王アヤズが妻ビビ・マリアムに贈ったと伝えられるビビ・マリアム廟。オマーンの世界遺産「古代都市カルハット」構成資産 (C) Alfred Weidinger

■古代都市カルハット
Ancient City of Qalhat
オマーン、文化遺産(ii)(iii)
紀元前500年までさかのぼる歴史を持つカルハットは、特にホルムズ王国の主要都市として11~15世紀に繁栄し、ペルシア湾に面した海岸沿いの断崖に城壁を巡らせて難攻不落の城郭都市を築き上げた。アラブ、ペルシア、インド、中国、東アフリカを結ぶインド洋交易で発展し、建築様式や出土する遺物からはそれぞれの文化の影響を見ることができる。16世紀はじめにポルトガルの攻撃を受けると町は徹底的に破壊され、17世紀には完全に放棄されて廃墟となった。

■山寺[サンサ]、韓国の仏教山岳僧院
Sansa, Buddhist Mountain Monasteries in Korea
韓国、文化遺産(iii)
通度寺(Tongdosa)、浮石寺(Buseoksa)、法住寺(Beopjusa)、大興寺(Daeheungsa)、鳳停寺(Bongjeongsa)、麻谷寺(Magoksa)、仙岩寺(Seonamsa)の7つの大乗仏教の寺院をまとめたシリアルノミネーション・サイト。それぞれの寺院は金堂・塔・講堂・僧院を中心とした伽藍構成で、中央にはマダンと呼ばれる庭園が配されている。創建はそれぞれ7~9世紀にさかのぼるが、多くの寺院は朝鮮王朝(李氏朝鮮)時代に改修を受けて現在の形になった。

■アハサー・オアシス、進化する文化的景観
Al-Ahsa Oasis, an evolving Cultural Landscape
サウジアラビア、文化遺産(iii)(iv)(v)
ペルシア湾とアラビア半島の砂漠地帯に囲まれた、250万本のヤシが生育する世界最大のオアシス。新石器時代から現在まで長らく人々の暮らしを支え、アル・ホフーフ遺跡からは6000年前の陶磁器が出土している。古くから灌漑設備や運河を整備し、自然と調和した歴史的資産を活用しながらも発展を続ける「進化する文化的景観」を特徴とする。イコモスは、オアシスの多くは過去50年の都市設計で歴史的資産と分断されており、連続性は見られないと価値を否定し、不登録を勧告していた。

■長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産
Hidden Christian Sites in the Nagasaki Region
日本、文化遺産(iii)
記事上部「『長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産』2度目の挑戦で登録に成功!」参照。

■ティムリカ・オヒンガ考古遺跡
Thimlich Ohinga Archaeological Site
ケニア、文化遺産(iii)(iv)(v)
ヴィクトリア湖周辺には集落をサークル状に取り囲む「オヒンガ」と呼ばれる石壁が点在している。最大規模を誇るのがティムリカのオヒンガ群で、石壁の高さは1.5~4.5メートル、厚さは1.0メートル前後で、直径140メートルに及ぶものもある。オヒンガの建設をはじめたのはバントゥー系民族といわれ、16世紀頃から20世紀に至るまでオヒンガで生活を行った。鉄の精錬所や陶器の焼き場を備えるものもあり、狩猟採取生活から農業・牧畜・商工業を生業とした定住生活へと移行する様子をうかがうことができる。
フランスの世界遺産「シェヌ・デ・ピュイ-リマーニュ盆地の地殻変動地帯」

フランス中央山塊にそびえる標高1464メートルの溶岩ドーム、ピュイ・ド・ドーム。「シェヌ・デ・ピュイ-リマーニュ盆地の地殻変動地帯」構成資産 (C) Alain Rigail

<自然遺産3件+重大な範囲変更1件>

■シェヌ・デ・ピュイ-リマーニュ盆地の地殻変動地帯
Chaine des Puys - Limagne fault tectonic arena
フランス、自然遺産(viii)
フランス南部の中央山塊(中央高地)に属し、10万~8千年前まで続いた長さ32キロメートル、幅4キロメートルにわたるリマーニュ断層の造山活動によって誕生した。80以上の火山群を中心に溶岩地形やカルスト台地など多彩な景観が広がっており、ローマ時代からその美しい景観で人々を魅了してきた。ナチュラルミネラルウォーター・ブランド、ボルヴィックに代表される清涼な地下水でも知られる。第38・40回世界遺産委員会に続き3度目の挑戦となる今回、悲願の登録を勝ち取った。

■ビキン川渓谷 ※範囲変更
Bikin River Valley
ロシア、自然遺産(x)
2001年に登録された世界遺産「中央シホテ・アリン」の範囲拡大。約40万ヘクタールだった資産に約116万ヘクタールを加えるもので、大幅な拡大が実現した。海抜0~1900メートルに温帯広葉樹林から亜寒帯針葉樹林まで多彩な植生が展開しており、亜熱帯に生息するアムールトラやツキノワグマと亜寒帯の動物であるトナカイやヒグマが共存する希有な生態系が成立している。IUCNレッドリストで絶滅危惧種の指定を受けているアムールトラやシマフクロウなど貴重な動植物も少なくない。

■梵浄山
Fanjingshan
中国、自然遺産(x)
武陵山脈にたたずむ名山で、最高峰の鳳凰金頂は標高2570メートルを誇る。豊富な降水量と高い湿度が豊かな森林を育んでおり、低地の亜熱帯林から常緑-落葉樹林、広葉-針葉樹林、高山の低木帯まで植物の垂直分布が顕著に見られる。20本もの河川が流れ出す中国随一の水源でもあり、川が山地を浸食して渓谷や滝・湿地など美しい景観を生み出している。IUCNレッドリストで絶滅寸前種に指定されているチュウゴクオオサンショウウオや絶滅危惧種のコビトジャコウジカなど希少種も数多い。

■バーバートン=マコンジュワ山脈
Barberton Makhonjwa Mountains
南アフリカ、自然遺産(viii)
地表に露出した地層としては世界最古級のもので、46億年前に地球が誕生し、その10億年ほどのちに形成されたバーバートン・グリーンストーン・ベルトと呼ばれる古代地殻で構成されており、巨大隕石の衝突が相次いだ時代(後期重爆撃期)を終え、地表の形成がはじまる36~32.5億年前の貴重な地層を伝えている。地球上に水が大量に形成されて生命が拡散し、シアノバクテリアによって酸素が生み出されて大気組成が大きく組み変わった時期でもあり、地球と生命の謎解明に大きく貢献している。
コロンビアの世界遺産「チリビケテ国立公園-ジャガーの生息地」

コロンビアの「チリビケテ国立公園-ジャガーの生息地」に突き出す雄大なテプイ(テーブルマウンテン)。ベネズエラの世界遺産「カナイマ国立公園」のテプイと同種のものだ

<複合遺産3件>

■ピマチオウィン・アキ
Pimachiowin Aki
カナダ、文化遺産(iii)(vi)、自然遺産(ix)
第37・40回世界遺産委員会に続き、3度目の推薦で世界遺産登録を実現した。バーナーズ、ブラッドヴェイン、ピジョン、ポプラーの4河川の水源地で、美しい川や湿地・湖沼・森林を狩猟採取民アニシナアベ族が先祖代々7000年にわたって守り続けている。創造神からの贈り物として自然を畏敬して暮らすアニシナアベ族の遺跡や住居・祭祀場等が文化遺産として評価されただけでなく、アメリカグマ、クズリ、アカギツネ、イイズナ等々、絶滅危惧種や固有種を含む豊かな生態系がその価値を認められた。

■テワカン=クイカトラン渓谷:メソアメリカの固有生息地
Tehuacán-Cuicatlán Valley: originary habitat of Mesoamerica
メキシコ、文化遺産(iv)、自然遺産 (x)
渓谷は熱帯常緑樹林から温帯落葉樹林・針葉混交林・針葉樹林・草原・河岸植生など多様な植生を誇り、一部には砂漠が展開して低木林やサボテン林も見られる。世界的な生物多様性ホットスポットとして知られ、特にサボテン科の多彩性は顕著で、単位面積あたりのサボテンの密集度は他に例がない。また、この地からは紀元前12000年ほどまでさかのぼる住居跡が出土しており、トウモロコシや豆類、アボカド、トウガラシなどの栽培を開始し、定住生活を勝ち取っていく様子が示されている。

■チリビケテ国立公園-ジャガーの生息地
Chiribiquete National Park - “The Maloca of the Jaguar”
コロンビア、文化遺産(iii)、自然遺産(ix)(x)
アマゾン川、オリノコ川、アンデス山脈、ギアナ高地といった特異な自然環境が収束するコロンビア南部に展開し、多彩な生物多様性を有することから同国最大の国立公園として保護されている。ツニア川、アパポリス川、ルイーサ川といった河川が広大な森林地帯を形成し、森林からは高さ1000メートルを超える「テプイ」と呼ばれるテーブルマウンテンが突き出している。テプイには狩猟・戦争・舞踊・儀式などを描いた75,000点に及ぶ岩絵が残されており、ジャガー信仰をはじめ古代民族の文化をいまに伝えている。


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