世界が注目する「非認知能力」とは?
非認知能力は人生の質に大きく影響を与えます!
世界をリードするアメリカの超エリート校の教育法が紹介され、日本で大ヒットしている著書『世界最高の子育て』。その「世界最高の教育法」で最も重視されるのが、「非認知能力」を伸ばすことです。「非認知能力」とは、IQや学力テストの点数といった、分かりやすく数値化して測ることのできる「認知能力」以外の力や資質をいいます。
例えば、IQや学力テストの点数がたとえ高くても、失敗や困難にぶつかるとすぐに心が折れてしまうなど、「回復力」や「やり抜く力」が育っていないならば、その子が、何かを成し遂げることは難しいものです。こうした「回復力(レジリエンス)」や「やり抜く力(グリット)」といった、これまで見過ごされがちだった「非認知能力」を育むことの大切さが、昨今、アメリカをはじめ、世界中の教育現場で叫ばれ始めているのです。
そして日本でも、2017年3月に改訂された文部科学省による「学習指導要領」に、「非認知能力」の大切さが組み込まれています。(*1)日本の教育現場も、IQや偏差値といった「認知能力」のみ重視するといった従来の傾向から、徐々に変わろうとしています。
<目次>
すると、幼稚園に平日毎日通った子は、通わなかった子に比べ、幼稚園時代にIQが著しく伸びたものの、8歳になる頃には、その違いはほとんどみられなくなったといいます。ところが、その後の追跡調査では、ペリー幼稚園に通わせた子の方が、通わせなかった子に比べ、学歴や収入や持ち家率もより高くなり、良好な家族関係を築くなど生活の安定率も高く、全体的な生活の質がより充実していたといいます。研究チームは、その原因は、幼稚園時代の「非認知能力」を育む働きかけにあったと結論付けています。
つまり、IQや読み書き計算といった「認知能力」を伸ばす幼少期の働きかけは、小学校高学年になるころには、その効果がほとんどみられなくなるものの、「回復力」や「やり抜く力」といった「非認知能力」を育む働きかけは、その後もその子の人生の質に、大きく寄与するというわけです。「非認知能力」は、長い目でみた子どもの人生の質を左右する「鍵」ともいえるのですね。
こうした「非認知能力」とは、「認知能力」には含まれない心の性質を広く指していますから、具体的には、様々な力や資質があげられます。例えば、ヘックマン氏は、「やり抜く力」と「自制心」に着目しました。また、昨年の『国立教育政策研究所』による報告書では、年齢別に、実に60近くの非認知能力が提示されています。(*3)
これらを大まかにまとめるなら、「非認知能力」とは、自身の健やかな成長のため、そして、他者と良好な関係を築くために必要となる力や資質といえます。そしてそれぞれ、次のような、より具体的な「非認知能力」があげられます。
・自身の健やかな成長のために必要な力や資質
自己肯定感、やり抜く力、自制心、回復力、創造力etc.
・他者と良好な関係を築くために必要な力や資質
心の理論、共感力、協働力、葛藤解決力、表現力etc.
では、これらの非認知能力を育むために、親として何ができるでしょう。
非認知能力を培う基盤となるのが、子どもが世話をしてくれる人との間に築く愛着関係です。愛着とは、特定の人物との間に築かれる情緒的な結びつき。乳児期から、泣けば抱っこしてあやし、お腹がすけば授乳しと、赤ちゃんのニーズに繰り返しこたえることで、築かれていきます。
とはいえ、幼児となり自我が芽生えてくれば、子どもが「したい」と思うことと、親が「してほしい」と思うことの間に葛藤も生じます。その1つ1つの葛藤に、例えば、「お店には楽しそうな玩具がたくさんあるから欲しくなっちゃうね」と子どもの気持ちに寄り添いながらも、「今日は買うと決めてこなかったから今度にしようね」と、親としてブレない方針を示していくこと。そうした繰り返しが、健やかな愛着関係を築きます。
また、「教えなければ」といった気持ちを少し横におき、ただ、子どもの話を聞いてあげたり、一緒に楽しむひとときを持つようにすること。そして、たとえ、その日にどんなことがあったとしても、寝る前には、「大好きよ」とギュッと抱きしめてあげること。こうした心がけも「愛着」を促進し、「自分は大切」といった「自己肯定感」を育みます。
2.目先の「結果」より「取り組む姿勢」を励ます
「こんな問題できるなんて賢い!」と結果にフォーカスするより「難しい問題だったのに最後まであきらめずえらかったね」、また、「算数のテスト90点だったのね!えらい!」より「ゲームの時間を減らして勉強したのえらかったね。90点おめでとう!」と、「やり抜く力」や「自制心」を発揮した過程の姿勢を喜んであげましょう。
そして、「回復力」を育むには、まずは失敗すること、そして失敗から立ち上がる体験を重ねることが一番です。先回りして子どもの失敗を防ぎ「よりよい結果」を出そうとするよりも、失敗から立ち上がる過程を励ましてあげましょう。
また、例えば、歴史の本を夢中で読む子に、「いくつ年号を覚えた?」といった成果ばかりを気にするよりも、本の内容を一緒に楽しんだり、歴史博物館を訪ねたり、歴史的な建築物の模型を作ってみたりと、好奇心や「創造力」を存分に発揮するサポートをしてあげます。
親として、ついつい、結果や成果に目がいってしまうものです。それでも、過程の頑張りを励ますことこそ、長い目で見て、より全体的に高い成果へとつながることを思い出しましょう。
3.乳幼児期から、思いや感情をもった1人の人として扱う
「心の理論」や「共感力」といった他者の思いや気持ちを推測する力は、乳幼児期から、その子が、思いや気持ちをもった1人の人として扱われることで培われます。会話の成り立たない赤ちゃんであっても、オムツを替える際など、無表情に用事を済ますといった様子ではなく、「おむつがきれいになって、気持ちいいね~」と表情豊かに話しかけてあげましょう。
また、年齢が上になるほど、「~しなさい」と、親の意向でのみ導くよりも、「どちらがいい?」「どう思う?」と尋ねるなど、その子の意向を尊重する工夫をしてあげましょう。そうすることで、「協働力」を支える「相手に思いや気持ちを表現する力」も磨かれます。そして、親の意向で詰まったスケジュールよりも、その子自身が興味を持つ活動に没頭できる環境を整えてあげたり、子どもと一緒にスケジュールを組むのも方法です。
子どもが、力を発揮し社会で活躍するための土台となる「非認知能力」。是非、親として、できることをしてあげたいですね。
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「非認知能力」はどうして子供にとって大切?
昨今、こうして世界中が「非認知能力」に注目するきっかけとなったのが、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者ジェームス・ヘックマン氏率いる研究です。(*2)ヘックマン氏率いる研究チームは、ミシガン州の『ペリー幼稚園』の卒業生を50年近く追跡調査したといいます。すると、幼稚園に平日毎日通った子は、通わなかった子に比べ、幼稚園時代にIQが著しく伸びたものの、8歳になる頃には、その違いはほとんどみられなくなったといいます。ところが、その後の追跡調査では、ペリー幼稚園に通わせた子の方が、通わせなかった子に比べ、学歴や収入や持ち家率もより高くなり、良好な家族関係を築くなど生活の安定率も高く、全体的な生活の質がより充実していたといいます。研究チームは、その原因は、幼稚園時代の「非認知能力」を育む働きかけにあったと結論付けています。
つまり、IQや読み書き計算といった「認知能力」を伸ばす幼少期の働きかけは、小学校高学年になるころには、その効果がほとんどみられなくなるものの、「回復力」や「やり抜く力」といった「非認知能力」を育む働きかけは、その後もその子の人生の質に、大きく寄与するというわけです。「非認知能力」は、長い目でみた子どもの人生の質を左右する「鍵」ともいえるのですね。
「非認知能力」とは具体的にどんな力?
「非認知能力」とは自身の成長を促し他者と良好な関係を築く力
こうした「非認知能力」とは、「認知能力」には含まれない心の性質を広く指していますから、具体的には、様々な力や資質があげられます。例えば、ヘックマン氏は、「やり抜く力」と「自制心」に着目しました。また、昨年の『国立教育政策研究所』による報告書では、年齢別に、実に60近くの非認知能力が提示されています。(*3)
これらを大まかにまとめるなら、「非認知能力」とは、自身の健やかな成長のため、そして、他者と良好な関係を築くために必要となる力や資質といえます。そしてそれぞれ、次のような、より具体的な「非認知能力」があげられます。
・自身の健やかな成長のために必要な力や資質
自己肯定感、やり抜く力、自制心、回復力、創造力etc.
・他者と良好な関係を築くために必要な力や資質
心の理論、共感力、協働力、葛藤解決力、表現力etc.
では、これらの非認知能力を育むために、親として何ができるでしょう。
非認知能力を育むための3つのヒント
1.愛着関係を築く:非認知能力の基盤非認知能力を培う基盤となるのが、子どもが世話をしてくれる人との間に築く愛着関係です。愛着とは、特定の人物との間に築かれる情緒的な結びつき。乳児期から、泣けば抱っこしてあやし、お腹がすけば授乳しと、赤ちゃんのニーズに繰り返しこたえることで、築かれていきます。
とはいえ、幼児となり自我が芽生えてくれば、子どもが「したい」と思うことと、親が「してほしい」と思うことの間に葛藤も生じます。その1つ1つの葛藤に、例えば、「お店には楽しそうな玩具がたくさんあるから欲しくなっちゃうね」と子どもの気持ちに寄り添いながらも、「今日は買うと決めてこなかったから今度にしようね」と、親としてブレない方針を示していくこと。そうした繰り返しが、健やかな愛着関係を築きます。
また、「教えなければ」といった気持ちを少し横におき、ただ、子どもの話を聞いてあげたり、一緒に楽しむひとときを持つようにすること。そして、たとえ、その日にどんなことがあったとしても、寝る前には、「大好きよ」とギュッと抱きしめてあげること。こうした心がけも「愛着」を促進し、「自分は大切」といった「自己肯定感」を育みます。
「大好きよ」と抱きしめることは子どもの内に「自分は大切」という気持ちを育みます
2.目先の「結果」より「取り組む姿勢」を励ます
「こんな問題できるなんて賢い!」と結果にフォーカスするより「難しい問題だったのに最後まであきらめずえらかったね」、また、「算数のテスト90点だったのね!えらい!」より「ゲームの時間を減らして勉強したのえらかったね。90点おめでとう!」と、「やり抜く力」や「自制心」を発揮した過程の姿勢を喜んであげましょう。
そして、「回復力」を育むには、まずは失敗すること、そして失敗から立ち上がる体験を重ねることが一番です。先回りして子どもの失敗を防ぎ「よりよい結果」を出そうとするよりも、失敗から立ち上がる過程を励ましてあげましょう。
また、例えば、歴史の本を夢中で読む子に、「いくつ年号を覚えた?」といった成果ばかりを気にするよりも、本の内容を一緒に楽しんだり、歴史博物館を訪ねたり、歴史的な建築物の模型を作ってみたりと、好奇心や「創造力」を存分に発揮するサポートをしてあげます。
親として、ついつい、結果や成果に目がいってしまうものです。それでも、過程の頑張りを励ますことこそ、長い目で見て、より全体的に高い成果へとつながることを思い出しましょう。
3.乳幼児期から、思いや感情をもった1人の人として扱う
「心の理論」や「共感力」といった他者の思いや気持ちを推測する力は、乳幼児期から、その子が、思いや気持ちをもった1人の人として扱われることで培われます。会話の成り立たない赤ちゃんであっても、オムツを替える際など、無表情に用事を済ますといった様子ではなく、「おむつがきれいになって、気持ちいいね~」と表情豊かに話しかけてあげましょう。
また、年齢が上になるほど、「~しなさい」と、親の意向でのみ導くよりも、「どちらがいい?」「どう思う?」と尋ねるなど、その子の意向を尊重する工夫をしてあげましょう。そうすることで、「協働力」を支える「相手に思いや気持ちを表現する力」も磨かれます。そして、親の意向で詰まったスケジュールよりも、その子自身が興味を持つ活動に没頭できる環境を整えてあげたり、子どもと一緒にスケジュールを組むのも方法です。
子どもが、力を発揮し社会で活躍するための土台となる「非認知能力」。是非、親として、できることをしてあげたいですね。
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